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1. 夢にしても
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私は物語を読むことが好きだ。
ゲームとかもストーリー性のあるものが好きだった。まぁアクションゲームとかがまともに出来ないという理由もない訳じゃないけど。そういうゲームって、気づけばすぐに残機なしになる程度の技能の持ち主だからね。出来る人から見れば、何故そうなる? だろうけれど。
それはとにかく、私は本にしろ、シミュレーションゲームにしろ文字を、語られる物語を読むことは好きだった。
そこに紡がれた物語を読んでいる間は別世界にいることが出来る気がして、ついついのめり込んでしまう。
色々な人になった気持ちになって右往左往したり、喜んだり、悲しんだり。
そんなふうに自分ではない他の誰かに感情移入したり、俯瞰的に見たり。物語りで語られることのなかったことを終わった後を想像したり、そこに登場した人物や事象について考察したり。
おかげでちょっと自分も書いてみたくなった。
書いてみたけれど――凄いご都合になりすぎて、途中でだめだわと思って止まった。
やっぱり物語書いている人達すごいなと思う。私が綿密に設定とか考えることが苦手なのかもしれないけれど。
やっぱり書き手より、読み手がいいかな。
でも好きなように好きに書くのもそれはそれで楽しい気もする。
言葉って難しい。頭の中で想像したことをいざ書こうと思っても、思うようにはいかなくて。
表現することが難しい。もどかしくて仕方がなくなったりもするけれど、書きたいところだけたまに書き散らしては、だめだなって投げてを繰り返していた。
気軽なのはやはり読み手だったり、ゲームだったりかな。そりゃそうだよね。
そうね、まぁ確かに物語に入り浸るように、読み耽っていたと思う。
思うけど……――。
何故今私は、目の前で金髪碧眼、美貌の貴公子に糾弾されているの?!
気がつけば、修羅場の真っ只中にいましたはないわ。
◇
私はいつ寝落ちたのだろう? ここはいつもの自分の自室ではない。夢だろう、これは。
何故か煌びやかな白を基調とした建物の中にいる。
普通にないよね? そんなドレスとかを身にまとう貴婦人みたいな人達が目に見える。貴公子みたいな人達も。
足を踏み入れたことはないが、コスプレ会場か? にしては、なんだか凄く重厚感がある。お高そうというか、オートクチュール感があるというか、よくわからないけれどそんな感じというか。
そもそも私が何故か滅茶苦茶高そうな足首もすっぽり隠れるひだの多いドレスを着ている。なんだろう? 首がやけに重い。手をやるとずっしり重い。
なんか凄い綺麗な紅の宝玉が嵌め込まれた首飾りがじゃらりと音をたてた。重いわ、これは。
自分が動くと衣擦れの音がする。ドレスか。高そうだけれどなんだろう、赤と黒で派手。悪目立ちするよね? くらい派手。私の好みではない。
いや、綺麗だよ、綺麗だとは思うのだけれど、悪のなんとかとかが着ていそうというか、全体像はよく見えないけれどそんな感じというか。なんだか覚えがあるような? なんだろうこの既視感。夢だからか?
私、物語は物語として自分は関係のないところで読むのは好きだよ。でもね、当事者になりたいかと聞かれたら、どうしてもどうしても、どうしても仕方ないとしてもモブだ。背景でいい。ヒロインとか柄じゃない。主人公サブその辺りはダメだ。
しかし――ぐるりと見渡す。これ、なんか覚えがある気がする。こんな経験ないはずなのに。
周りの貴婦人みたいな人達は、扇で顔を隠しつつも私達をちらりちらりと見ているみたい。そりゃこんな場所で修羅場が展開されたら、気になるよね。貴公子みたいな人達の視線も感じる。
逆に遠ざかっていく人も見えなくないけど。潮が引いていくようだ。
潮干狩り出来そうかな。
そちらも気持ちはわかるよ。巻き込まれたら大変だものね。私も一緒にそっとこの場から退場したいのだけれど、対峙している彼が逃してくれそうにない。
ターゲットオン――私。
勘弁して欲しいな。泣けてきそう。
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