1 / 7
一 早く目が覚めないかな……
しおりを挟む
◇
──これは夢か?
夢だろう。これは──こんなのありえなさすぎる。
目に映るのは重厚な装飾が施された空間。シャンデリアの灯りと、楽器の奏でる音が優雅に流れる煌びやかな舞踏会。
そして目に留まったのはあり得ない髪の色と、古めかしくも精巧なレースやフリルの多い、襞をたっぷりとった裾の長い、見るからに高価だろうドレスの貴婦人達や豪奢な夜会服を纏う貴公子達。
髪も金銀赤とかなら外国の方かな? なかんじだろうけど、でもね、水色とか紫とか緑とかないよね?
何にせよ、美形美形美形。どこを向いても男女ともども衣装もドレスアップされている美形だらけだ。
でもなんだろう? なんだか見たことがある気がする? そんな光景──
私は苦しさに、ふぅとひとつ息をついた。
──きついなこれ。
腰とか胸とかかな? 締め付けが苦しい。ぎゅうぎゅう体を締められているかんじがする。
着ている服がまた重い。なんだ、この重さは。
存在感のある首飾りかな? が首元に鎮座している感触がする。それがまたずっしり重い。重さで首がもげそう。
少し俯くと髪にも耳にも飾りがついているのか爽やかな金属音が聞こえた。全体的に重い。
そのまま着ている服を見ると、光沢のある淡い青の綺麗で素晴らしい布地。シルクとかかな? 周りの皆と同じで裾は床につくくらい長く、襞も多くてそれは重くもなるよねという気がするそんなドレスを着ていた。
まずありえない。
こんなの着たことなんてない、怖い。汚しそう。
でも何故か見たことのある気がする衣装。
これ、いいのかな? 引きずっている?
女性見ている限り私だけじゃないし、歩くとこれだと綺麗な飴色の板張りの床を、掃除している気がする。
こんな衣装着ている段階で、やっぱり夢だよね? と思うのだけど……本当すごい締め付け。あまり知識ないのだけれど、これがコルセットによるものなのかな? どうなっているかわからないし、よく知らないのだけれど。
苦しい。重い。真面目に苦しい。それにしてもリアルな夢だ。
こんな苦しいリアルさいらないかな。夢にあれこれ求めるのもかもだけれど。
「疲れたのかい、ラーリア」
どこからか低く甘やかな美声。何故か聞き覚えのある男性の声がラーリアと呼ぶ声が聞こえる。
その名前にも記憶があった。
しばらく前にやっていた乙女ゲームのヒロインの名前。
そうだ。
今いるその場所がゲームのスチルで見た光景そっくりなのだ。
内心笑いがこみあげた。
夢だろう──これは。普通に夢なのだろう。
こんなくっきりはっきりした夢、見たことない気がするけれどね。まぁ覚えていないだけかもしれないだけかな。
◇
昏き星に導かれし小夜曲というマイナーなのか、私は聞いたことがなかった乙女ゲームをしばらく前にはじめてみていた。
ついポピュラーなものではなく、少しはずしたところで、ちょっとはずれた時期に何気なくはまるのはよくある自分だ。
今回は店頭で通り過ぎようとして、それでも視線は棚に向いて、ついタイトルを追いながら歩いていた時、ふと目に止まった。
──乙女ゲームか。
迷ったけれど、気になったしで購入してやり始めた。
昔、気まぐれに一回した後、乙女ゲームというジャンルのものはずっとしていなかった。出来る気がしなかったからもある。
ものはためしと、何も考えずに初めて乙女ゲームをした時、攻略対象達から告白さえ受けず、ゲームが終了してしまったのは苦い思い出だ。
誰を攻略しようとか思ってなかったのも悪かったのかもしれない。
恋愛からかけ離れたことを何故かしているみたいなのよね。
最早ゲームですら恋愛に向かないくらいの恋愛音痴だ。
もちろん現実に恋人なんて夢また夢。さっぱりだった。関わり方もわからないし、取り扱い謎だし、男性苦手なのかもだし、もういいかな無理な気がするしと、思いすらしていた。
ゲームですらフラグとかへし折っているのかもしれないのだから、現実でなんてそりゃどうしようもないよね。
折るつもりがなくても折っているみたいだしね、フラグ。
そんなフラグクラッシャーでも、初めてのエンドから、ちゃんと攻略対象と恋仲というものにこのゲームはしてくれた。
凄いな。思うままで恋愛エンドになるよ、この私が。
ある意味感動した。多分感動の仕方が違うのだろう。
初めて乙女ゲームで恋愛エンドに。
だけどこれ考えるまでもなく閉じ込められているし、監禁エンドな気がする。バッドエンドじゃないかな?
いや、ちゃんとヒロインとくっついているし、ハッピーエンドなのかな? まぁ当人達がいいならいいのだろうけど──私はやっぱりちょっとせめて初めはノーマルなスカッとハッピーな雰囲気が良かったかな?
初めてから監禁エンド。重いね。ゲームだけど。
ノーマルなスカッとハッピーってそれも人それぞれだろうけど。好みは好き好きだしね。監禁もありなのかな? よくわからないけれど。
まぁむしろ一人でも攻略出来ているしな。この私が。上出来かもしれないけどね。
でも気をつけて色々変えているつもりだけど、なんで同じルートに乗っているのかな?
まぁハッピーエンドのその先がハッピーかはわからないし、監禁エンドのその先にハッピー……あるのかな?
監禁ハッピーラッキーって思う洗脳が先に待つとか? そんなことを考えていると、声がもっと近づいてくる。
見上げると攻略対象達が目の前。私を見ている。
「ラーリア」
と、口々に呼びかけ、笑顔で私だけを見つめる美貌の主達。
──なんてことなの?
夢だとしても、ヒロインが私とかないわ。
──これは夢か?
夢だろう。これは──こんなのありえなさすぎる。
目に映るのは重厚な装飾が施された空間。シャンデリアの灯りと、楽器の奏でる音が優雅に流れる煌びやかな舞踏会。
そして目に留まったのはあり得ない髪の色と、古めかしくも精巧なレースやフリルの多い、襞をたっぷりとった裾の長い、見るからに高価だろうドレスの貴婦人達や豪奢な夜会服を纏う貴公子達。
髪も金銀赤とかなら外国の方かな? なかんじだろうけど、でもね、水色とか紫とか緑とかないよね?
何にせよ、美形美形美形。どこを向いても男女ともども衣装もドレスアップされている美形だらけだ。
でもなんだろう? なんだか見たことがある気がする? そんな光景──
私は苦しさに、ふぅとひとつ息をついた。
──きついなこれ。
腰とか胸とかかな? 締め付けが苦しい。ぎゅうぎゅう体を締められているかんじがする。
着ている服がまた重い。なんだ、この重さは。
存在感のある首飾りかな? が首元に鎮座している感触がする。それがまたずっしり重い。重さで首がもげそう。
少し俯くと髪にも耳にも飾りがついているのか爽やかな金属音が聞こえた。全体的に重い。
そのまま着ている服を見ると、光沢のある淡い青の綺麗で素晴らしい布地。シルクとかかな? 周りの皆と同じで裾は床につくくらい長く、襞も多くてそれは重くもなるよねという気がするそんなドレスを着ていた。
まずありえない。
こんなの着たことなんてない、怖い。汚しそう。
でも何故か見たことのある気がする衣装。
これ、いいのかな? 引きずっている?
女性見ている限り私だけじゃないし、歩くとこれだと綺麗な飴色の板張りの床を、掃除している気がする。
こんな衣装着ている段階で、やっぱり夢だよね? と思うのだけど……本当すごい締め付け。あまり知識ないのだけれど、これがコルセットによるものなのかな? どうなっているかわからないし、よく知らないのだけれど。
苦しい。重い。真面目に苦しい。それにしてもリアルな夢だ。
こんな苦しいリアルさいらないかな。夢にあれこれ求めるのもかもだけれど。
「疲れたのかい、ラーリア」
どこからか低く甘やかな美声。何故か聞き覚えのある男性の声がラーリアと呼ぶ声が聞こえる。
その名前にも記憶があった。
しばらく前にやっていた乙女ゲームのヒロインの名前。
そうだ。
今いるその場所がゲームのスチルで見た光景そっくりなのだ。
内心笑いがこみあげた。
夢だろう──これは。普通に夢なのだろう。
こんなくっきりはっきりした夢、見たことない気がするけれどね。まぁ覚えていないだけかもしれないだけかな。
◇
昏き星に導かれし小夜曲というマイナーなのか、私は聞いたことがなかった乙女ゲームをしばらく前にはじめてみていた。
ついポピュラーなものではなく、少しはずしたところで、ちょっとはずれた時期に何気なくはまるのはよくある自分だ。
今回は店頭で通り過ぎようとして、それでも視線は棚に向いて、ついタイトルを追いながら歩いていた時、ふと目に止まった。
──乙女ゲームか。
迷ったけれど、気になったしで購入してやり始めた。
昔、気まぐれに一回した後、乙女ゲームというジャンルのものはずっとしていなかった。出来る気がしなかったからもある。
ものはためしと、何も考えずに初めて乙女ゲームをした時、攻略対象達から告白さえ受けず、ゲームが終了してしまったのは苦い思い出だ。
誰を攻略しようとか思ってなかったのも悪かったのかもしれない。
恋愛からかけ離れたことを何故かしているみたいなのよね。
最早ゲームですら恋愛に向かないくらいの恋愛音痴だ。
もちろん現実に恋人なんて夢また夢。さっぱりだった。関わり方もわからないし、取り扱い謎だし、男性苦手なのかもだし、もういいかな無理な気がするしと、思いすらしていた。
ゲームですらフラグとかへし折っているのかもしれないのだから、現実でなんてそりゃどうしようもないよね。
折るつもりがなくても折っているみたいだしね、フラグ。
そんなフラグクラッシャーでも、初めてのエンドから、ちゃんと攻略対象と恋仲というものにこのゲームはしてくれた。
凄いな。思うままで恋愛エンドになるよ、この私が。
ある意味感動した。多分感動の仕方が違うのだろう。
初めて乙女ゲームで恋愛エンドに。
だけどこれ考えるまでもなく閉じ込められているし、監禁エンドな気がする。バッドエンドじゃないかな?
いや、ちゃんとヒロインとくっついているし、ハッピーエンドなのかな? まぁ当人達がいいならいいのだろうけど──私はやっぱりちょっとせめて初めはノーマルなスカッとハッピーな雰囲気が良かったかな?
初めてから監禁エンド。重いね。ゲームだけど。
ノーマルなスカッとハッピーってそれも人それぞれだろうけど。好みは好き好きだしね。監禁もありなのかな? よくわからないけれど。
まぁむしろ一人でも攻略出来ているしな。この私が。上出来かもしれないけどね。
でも気をつけて色々変えているつもりだけど、なんで同じルートに乗っているのかな?
まぁハッピーエンドのその先がハッピーかはわからないし、監禁エンドのその先にハッピー……あるのかな?
監禁ハッピーラッキーって思う洗脳が先に待つとか? そんなことを考えていると、声がもっと近づいてくる。
見上げると攻略対象達が目の前。私を見ている。
「ラーリア」
と、口々に呼びかけ、笑顔で私だけを見つめる美貌の主達。
──なんてことなの?
夢だとしても、ヒロインが私とかないわ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
流れる水の記憶 (完結済)
井中エルカ
恋愛
董星(とうせい)は父王とその後妻から疎まれ、山中の離宮で王子の身分を隠して暮らす。
ある日森で倒れたところを央華(おうか)という少女に助けられ、女として女人だけの神殿に連れていかれる。間もなく董星は男であることが知れ、董星と央華はお互いに淡い恋心を抱いたまま別れる。
成長して二人は再会するが、その時央華は董星の義兄の結婚相手として王宮に迎えられていた。結婚式を目前に義兄は愛人と共に姿を消し、菫星は探索に乗り出すのだが……。
※全29話(一話が短め)完結済み。 ※小説家になろうにも掲載。
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
婚約も結婚も計画的に。
cyaru
恋愛
長年の婚約者だったルカシュとの関係が学園に入学してからおかしくなった。
忙しい、時間がないと学園に入って5年間はゆっくりと時間を取ることも出来なくなっていた。
原因はスピカという一人の女学生。
少し早めに貰った誕生日のプレゼントの髪留めのお礼を言おうと思ったのだが…。
「あ、もういい。無理だわ」
ベルルカ伯爵家のエステル17歳は空から落ちてきた鳩の糞に気持ちが切り替わった。
ついでに運命も切り替わった‥‥はずなのだが…。
ルカシュは婚約破棄になると知るや「アレは言葉のあやだ」「心を入れ替える」「愛しているのはエステルだけだ」と言い出し、「会ってくれるまで通い続ける」と屋敷にやって来る。
「こんなに足繁く来られるのにこの5年はなんだったの?!」エステルはルカシュの行動に更にキレる。
もうルカシュには気持ちもなく、どちらかと居言えば気持ち悪いとすら思うようになったエステルは父親に新しい婚約者を選んでくれと急かすがなかなか話が進まない。
そんな中「うちの息子、どうでしょう?」と声がかかった。
ルカシュと早く離れたいエステルはその話に飛びついた。
しかし…学園を退学してまで婚約した男性は隣国でも問題視されている自己肯定感が地を這う引き籠り侯爵子息だった。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★8月22日投稿開始、完結は8月25日です。初日2話、2日目以降2時間おき公開(10:10~)
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
憧れていた王子が一瞬でカエル化した!
さこの
恋愛
憧れていた王子が一瞬でカエル化した!
「キャサリン嬢の髪の毛は個性的ですぐにキャサリン嬢だと分かって良いね」って褒め言葉だと思っていたのに馬鹿にされていた!
だから婚約者候補を降りました。みんな王子に抱いていた気持ちがある場面を見て魔法が解けたように気持ちが冷めた!
その後着飾るのをやめたら、逆に王子から言い寄られる事になった。え、気持ち悪いんですけど……
王子に誤解されたくなくて距離をとっていた義兄との仲が深まりその後義兄から告白される事に!ずっと私が好きだったの?
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
"義理"の兄弟に迫られてます?!
黄昏の鳥。
恋愛
家族/逆ハー/義兄/義弟
兄弟と、っていうのもありなんじゃない?
好きになってしまったんだもの。
強烈な個性の揃った家族、頼れる親友、毎日幸せな生活を送ってます!
義理の兄弟に迫られたりも…?!
ちょっと甘々な生活、覗いてみませんか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる