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九. そういうことじゃない
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──俺は何を見せられているのだろうな。
奴は、俺の部屋の白いカーテンを開けた。
大きな窓にそこに映る外──そこには透明度の高い湖が見えている。
鏡面のように周りに生える樹々を、そして空をも映しこみ、陽を受けてきらめいている様は美しいと思えた。
勿論、窓の外にそんな湖はない。
確か、初めて窓に映った景色は氷海だったかな?
満面の笑みを浮かべる奴に、お試しでこんなかんじに出来ましたと言われ、見せられた窓に映る風景は、凍てつく冷えた海上に青い氷河が浮かぶ静謐で美しい光景だった。
あまりのあまりさに俺は呆然と窓を見つめ、言葉を失ったものだ。
よもやそこに氷河をこしらえていないよな? と窓を開いて確認までした。
その様子を見た奴は、それ欲しいですか? と軽く問うから、思い切りよく断った。なんでそう思う?
やりかねない。でたらめな奴だからな。
勘違いしないように断らないとと苦心した。
そうでなければ凍てつく氷海が俺の縄張り扱いの場所に増えてしまいかねない。
結界の中、屋敷と森とそして氷河の浮かぶ凍りつく海。
どんな世界だ。そして海でもなんでもしつらえかねないと確信なんかしたくないというにも関わらずしてしまう。
海はないだろうと思っても奴ならと思わせる。
どんな広さだ。しかも凍てついているんだしな。気候だって変わってしまうわ。
俺の部屋とされた窓に映る外の景色。いまや無作為に変わる風景。
側には、趣向を凝らしましたと褒めて欲しそうに俺を見る青紫の瞳。元凶が俺を見つめている。
しばらくすると、ふっと景色は切り替わり風紋の美しい広大な砂海が広がった。
確かに美しい光景だと思う。
これは俺が見たかった外とは違う。断じて違う。
「これで外界の美しいと思えるのではないかと思われる風景を見ることが出来ますよ。色々な場所をこの窓に映し、見ることが出来るようにしておきました」
「綺麗じゃないとは言わないが、俺の言う外はそういう外じゃない」
ただ外というだけで何故こうなるのだろうか。
「結界の外が見たいだけだ」
「これは結界の外ですよ?」
確かに外だろう。
「綺麗だろうものをと思いましたが、また趣向をこらさねば」
「こらさなくていい!」
これ以上おかしなことをされたくはない。
「結界の外に出たいんだ。広さじゃない、この外に出たいのだ」
「そんなに外に出たいのですか?」
「出て行ってしまいたいに決まっているだろうが」
こんな場所で飼い殺しにされていたくはない。
いけ好かない奴に捕まったまま、記憶もなくただ飼われていたいとは思わない。この幼い弱い体は使い勝手は悪くとも、それでもただ無為に飼われていたくはない。
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