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過去編 番外
外野の呟き
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◆
「リヴィアス、足が下ろせないわ」
──あーあ、またやってるよ。
空色の瞳、白茶色の髪のフルフトーリエ、いや、フルフ様が、役柄を演じている時にはない綺麗だが鋭い声を緋色の髪と瞳のリヴィアスにたたきつけている。
残念なことにこれはよくあるいつもの光景だ。
大抵リヴィアスは、横暴なフルフ様か恐ろしいフェザントに絡まれている。
哀れなことだ。
役としてのフルフトーリエは、似合わない女装をさせたり果てしなく女友達扱いをするがリヴィアスの初恋の女性で、フェザントは何でも出来る有能だが、ついてまといすぎてリヴィアスをある意味ノイローゼに叩き込んでいる困った側近役だ。
役から抜けた後のフルフ様は美しいが高飛車なお嬢様、フェザントは容姿端麗な悪魔だ。どちらも何されるかわかりゃしない。
──リヴィアス、今日はフルフ様に絡まれるパターンかな。
そっと憐みの眼差しで、見つめてしまう。
「俺、付き人じゃないのだけれど」
リヴィアスがフルフ様を見ながら、当然の不平を言う。頭ひとつくらい背丈の差はあるのだが、そんな彼を見据え、フルフ様は胸を張って身振り手振りつきで朗々と答えた。
「リヴィアス、スターの私のための道を作る栄誉をあなたに与えているのよ。そのことを光栄に思いなさい」
声はいいのだが、内容は壊滅したことを言っている。姿も綺麗でいながら可愛くて、見た目は本当悪くないのにな。
自分で自分のことをスターと言いながら、フルフ様はよくリヴィアスに絡む。
「いや、だからなんで俺なの? 俺がすることなの?」
そう言いながらも、渋々しゃがんでリヴィアスは付き人から渡された赤い絨毯をフルフ様の足元にひいてやっている。
「これは栄誉です」
「俺じゃなくせめて付き人にお願いしてくれ」
付き人はリヴィアスに必死で手を合わせている。お願いされても困るだろうし、おかしいだろうと思うのだが、ぼやきながらもリヴィアスは頭を下げられて諦めの表情だ。
「これでいいか?」
溜息をつきながら、リヴィアスはフルフ様を見上げた。
フルフ様は嬉しそうだが、リヴィアスは気付いていないだろうな。あんなにあからさまなのに。
「あなたに生涯この栄誉を授けます。これからずっと私のために道を作りなさい」
「だから、なんで俺が」
「あなたにはすぎた栄誉だからと言って、辞退しようとしなくてもいいのよ」
「だから、なんで! 俺は付き人じゃない」
──フルフ様、アプローチの仕方完全に間違えているよな。
フルフ様なりのプロポーズなのかもしれないけれど。
でも、リヴィアスも強くは断らない。それどころか結局折れて、はいはいと諦めてひいてやる。なんだけど……生涯はないよな。ひくわ。
本当、フルフ様。
そんなんじゃいつまでも気づかないよ。リヴィアスは。
好意にすら気づいていないよ。むしろ悪くとられるよ。外見は好きだったみたいなこと聞いたことあるけれど、今のこの状態で好意とか粉々じゃないかな? 別にリヴィアスだって暇じゃないのに、付き合っているってことは、そういう性癖……ごほんごほん。まぁ色々な人がいるからな。わからないな。うん、わからない。
でもうんざりしている素振りもみえなくもないから違うかな。リヴィアス、訳わからないくらい人がいいしな。そうでなきゃこんなことになっていないだろうし。
ま、フルフ様に忠告出来る訳もないし、リヴィアスに絡みに行くとフェザントがどう動くかわからないし、怖いし、そのままにしておくけどな。
気付かないものだね。全く。
「リヴィアス、足が下ろせないわ」
──あーあ、またやってるよ。
空色の瞳、白茶色の髪のフルフトーリエ、いや、フルフ様が、役柄を演じている時にはない綺麗だが鋭い声を緋色の髪と瞳のリヴィアスにたたきつけている。
残念なことにこれはよくあるいつもの光景だ。
大抵リヴィアスは、横暴なフルフ様か恐ろしいフェザントに絡まれている。
哀れなことだ。
役としてのフルフトーリエは、似合わない女装をさせたり果てしなく女友達扱いをするがリヴィアスの初恋の女性で、フェザントは何でも出来る有能だが、ついてまといすぎてリヴィアスをある意味ノイローゼに叩き込んでいる困った側近役だ。
役から抜けた後のフルフ様は美しいが高飛車なお嬢様、フェザントは容姿端麗な悪魔だ。どちらも何されるかわかりゃしない。
──リヴィアス、今日はフルフ様に絡まれるパターンかな。
そっと憐みの眼差しで、見つめてしまう。
「俺、付き人じゃないのだけれど」
リヴィアスがフルフ様を見ながら、当然の不平を言う。頭ひとつくらい背丈の差はあるのだが、そんな彼を見据え、フルフ様は胸を張って身振り手振りつきで朗々と答えた。
「リヴィアス、スターの私のための道を作る栄誉をあなたに与えているのよ。そのことを光栄に思いなさい」
声はいいのだが、内容は壊滅したことを言っている。姿も綺麗でいながら可愛くて、見た目は本当悪くないのにな。
自分で自分のことをスターと言いながら、フルフ様はよくリヴィアスに絡む。
「いや、だからなんで俺なの? 俺がすることなの?」
そう言いながらも、渋々しゃがんでリヴィアスは付き人から渡された赤い絨毯をフルフ様の足元にひいてやっている。
「これは栄誉です」
「俺じゃなくせめて付き人にお願いしてくれ」
付き人はリヴィアスに必死で手を合わせている。お願いされても困るだろうし、おかしいだろうと思うのだが、ぼやきながらもリヴィアスは頭を下げられて諦めの表情だ。
「これでいいか?」
溜息をつきながら、リヴィアスはフルフ様を見上げた。
フルフ様は嬉しそうだが、リヴィアスは気付いていないだろうな。あんなにあからさまなのに。
「あなたに生涯この栄誉を授けます。これからずっと私のために道を作りなさい」
「だから、なんで俺が」
「あなたにはすぎた栄誉だからと言って、辞退しようとしなくてもいいのよ」
「だから、なんで! 俺は付き人じゃない」
──フルフ様、アプローチの仕方完全に間違えているよな。
フルフ様なりのプロポーズなのかもしれないけれど。
でも、リヴィアスも強くは断らない。それどころか結局折れて、はいはいと諦めてひいてやる。なんだけど……生涯はないよな。ひくわ。
本当、フルフ様。
そんなんじゃいつまでも気づかないよ。リヴィアスは。
好意にすら気づいていないよ。むしろ悪くとられるよ。外見は好きだったみたいなこと聞いたことあるけれど、今のこの状態で好意とか粉々じゃないかな? 別にリヴィアスだって暇じゃないのに、付き合っているってことは、そういう性癖……ごほんごほん。まぁ色々な人がいるからな。わからないな。うん、わからない。
でもうんざりしている素振りもみえなくもないから違うかな。リヴィアス、訳わからないくらい人がいいしな。そうでなきゃこんなことになっていないだろうし。
ま、フルフ様に忠告出来る訳もないし、リヴィアスに絡みに行くとフェザントがどう動くかわからないし、怖いし、そのままにしておくけどな。
気付かないものだね。全く。
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