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番外 わたしの光
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――私は出来損ない。
まともに獣化も出来ないから。それが一番の理由みたいだった。
小さな群れの中での異物。
生まれてしばらくして、まともに獣化出来ないことがわかると、他の幼体とは違い、ほぼ放棄された。
人型と獣化両方の姿を持つはずの種族。それに生まれていながら、完全な獣になることも出来ないとはということらしい。
異質であるが故の区別だと――必要であるものを持たないものだから。
望まれる姿にはなれない自分。
群れの中の異物。それは忌むべきもの。
当たり前のことすら出来ないわたしだから、どうされても仕方ないということなのか。
常にそうであるが故に、自分にとってそれが普通だ。他の幼体に対する対応が違うことも、当たり前で……。嫌がらせを受けることも、詰られることも、殴られたり蹴られたりすることも――
そして、気づけば出来損ないと呼ばれていた。初めはそれが自分の呼び名かと思っていた。
群れは移動した。わたしを捨てて。
わたしは排除された。
いらないものをそこに含む余裕があり続ける訳もなかったのか。
――いらないものだったのだろう。初めから。
死んでもいいように、むしろ早く死んで欲しかったのかもしれない。
紫紺の夜。
闇の中、気づけば半ばうつぶせたまま横たわっていた。
小汚く、痩せっぽちで小さなか弱い生き物。そんなわたしだ。
――痛い……。
ぼろぼろの布と髪がかろうじて身に纏わりついている。ぱさぱさでところどころ毛の抜けた黒い煤汚れた尻尾。体が重い。指一本ももう動かすことも出来る気がしない。冷えていく体。
――寒い……。
そのまま死を待つだけだろう。
生存本能も薄れたまま、力なくごつごつした地面に同化していた。
このまま大地に還っていくのだろうか。それとも、他の肉食獣に食べられるのか。
――今よりも痛いのだろうか。でもそれもひととき。終わればおしまいだろう。きっと――
――ひかり…………?
雲間から月が顔を覗かせたのか、ほのかに青白く地を染める。
ふと、耳が物音を察知した。意識が、そちらに向く。
――食べられるのかな。
仕方ないなら、一息に終わらせて欲しいな。
§
月明かりの中、近づいてきた光。すごく綺麗なものが目に見えた。
白銀の長い髪、白い衣が目に眩しい。
それがリルフィムだった。初め、幻かと思った。
緑色の優しい瞳がわたしを覗き込む。見たこともない綺麗なひと。
「捨てられたのか? 黒に空色の瞳。この種にしては珍しい。冷えてしまっているね。私のもとにおいで」
優しい声色に乗せられた言葉がおくられる。
――わたしに?
うす汚れたわたしを気にせず抱き上げてくれた。
「軽いな、小さすぎるし軽すぎる」
あたたかいぬくもり。心地よい匂い。わたしを殴る訳でもなくそっと撫でる優しい手。
――あたたかい。
痛むはずの体が不思議と次第に和らぐ気がした。
「そのまま目を閉じて、眠りなさい」
降ってくる優しい声。とろとろと瞼が落ちていく。
いい匂い。気持ちがいい手の感触。
――綺麗な光。眩い、それでいて優しい光。わたしの光。
その灯火はわたしを掬い上げて、わたしを包み込んで体の傷を癒してくれた。
救いの光。
わたしが離したくないリルフィムという名の輝き――。
end
後書き
気づけばこんなかんじになりました。
多分、リルフィムはさらっとやる気なら群れごと殲滅してそうだなとか思わなくもないです。影でやらかすか、関わることがありそうならさくっと殲滅しそうと思います。書きながら思いました。
リルフィム長命族の設定でしたが、まぁいいかとなりました。多分色々出来ます。
獣人に書いている間になったレイチェ、ふさふさの尻尾とかいいですよね。いかしきれなかった。
お気に入りありがとうございますの番外がこれでいいのかですが、まぁそういうかんじです。
お気に入りいただいた方ありがとうございます。稚拙なお話ですが、読んでくださった方ありがとうございます。
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