よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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かけら

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薄曇りの空
薄暗い海
白い波飛沫

砂浜でサンダルを片手に
裸足で人のいない海辺をゆっくり歩く

いつかあの人と歩いた潮騒の響く海──

砂浜に足跡をひとつ残しながら
海へ近づく

暗い波は打ち寄せては返す

いつか来たあの人のかけらも
波に揺られて白い泡を広げて
打ち寄せるだろうか
一緒にいた私のかけらとともに
白い泡になり……
様々な想いのかけらは
打ち寄せては返す波に揺られる
そんな気がして

時折足先に冷たい水の感触
あの人に触れたくてしゃがみこみ
サンダルをおいて手を伸ばす

白い泡の弾ける薄暗い波打ち際で──

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