よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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いない

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あの子の気配のない世界
そっと抱き抱えるように
腕を胸において

そばにいない空白に
いつか慣れるのだろうか

あたたかな陽気
冷えた心

あの子と感じたかった

涙がにじむ視界の先
おいていかれた私

今もそばにいるようで
いないことが信じられず
立ち止まったまま
わかりたくない

言葉をはけば
還ってくるだろうか
涙を流せば
還ってくるだろうか

どこにもいない

隠れていないか
探してみる

名前を呼んでみても
姿はない

いないないいない
あの子はいない

どうしていないのか
あの子はもういない


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