よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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あなたは望まない

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暮れてゆく空の下
冴え冴えと紅い世界の内

黒いあなたの後ろ姿
長い影が伸びて

振り返ることのないあなたの背中が
遠ざかる

私は夕陽に濡れたまま
あなたを見つめ動けない


どうすればよかったのか

手を伸ばして
捕まえてしまえば
よかったのか
わからないまま

握りしめたこの手

もう私の手を望まないあなたを
捕まえることは出来ない

崩れ落ちるまま
今までの世界が黒く滲んで

闇が降りてくる

あなたの姿が遠く歪んで揺れて消えた







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