よせあつめ ─詩集─

夢の傷跡

幼い頃の宝物のような記憶

それは長く私の心の中
闇の内に生まれたほのかな光のように
そっと輝き

それを想えばぬくもりに胸あたたまり
凍え荒れ果てる心へ染み通る

ただ思い出を心に想いながら
その光に救いを見いだし
心の中で繰り返し
そっと癒される日々


その時より
会うこともなく
言葉を交わすこともなく
時を過ごして


遠く想いのみを重ね
心を寄せて


巡り来る未来
想いを裏切られることを
予想することもなくそれに縋りつき
ささやかな思い出をすりきれそうになるほど
繰り返し思い返して


それは美化されたひとときの夢


いつしか夢は覚めてしまう
そんなことも思わず

人は変わる
時は変えていく

そんなことも気づかず

ただ盲目に
心が優しい夢に縋りついただけなのか
思い込み作りあげた幻に心を寄せたのか

ただただ美しい宝物にした記憶に縋った
他に縋るものも見つけられず
ただただしがみついた

そして再び出会い
幻想はあなたによって打ち砕かれる

あなたは気づかない

あなたに魅せられて
果てにあなたに壊されたもの


それは私のもの
私だけのもの
私だけが見ていたもの
私がひとり見ていた儚い幻だったのか


それもいまや壊れ果てた夢
もう見ることすら傷みの伴う夢


夢の傷跡