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怖いけど
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◇
守屋海さん?!
まさかの聞いたことのある名前だった。同級生にそんな名前の人がいる。
──まさかね?
話しかけて聞いてみたい。同姓同名かもしれないけれど、でも、もしかして……。
聞きたくて仕方がない。
でも怖い。彼だとしても、私はただ名前と顔知っているだけだし。勿論話したこともないし、男性だし。すごく気になるけど──
「なんなんだここは?!」
花が咲いていて、西洋風の学院っぽい場所の庭園みたいなところ。まぁ見慣れないよねって感じの場所だ。
恋愛シミュレーションゲーム転生とか思わないよね? そもそもこのゲームとか知っているのかな。
「カイラス落ち着け」
エクセラント様が肩に手をおいて話しかけるが、その手を振り払う。
──うわぁ、振り払ってしまってるよ。
見ていてかなりはらはらする。
「だからカイラスとかいうヤツじゃないって、え? 外人さん?」
眉を顰めて、エクセラント様を見据える。
──エクセラント様、侯爵令息なのですけれど……。
逃げ倒す失礼している私が言うのもなんだけれど凄くはらはらする。
「とりあえず暴れるな。君はカイラスじゃないんだな?」
「そうだ。あんたは誰だ」
カイラス様ではあり得ない様子に、溜息まじりにエクセラント様は話しかける。
「エクセラント、レクスタス侯爵第二子だ」
そばにいたセレクシヤ様も声をかける。
「私はセレクシヤ。ライセン侯爵第三子です」
「えっ?!」
びっくりするよね。しない訳ないよね。こんな表情のカイラス様みたことないをちらりちらりと見ながら、私は固唾をのんでいる。
「あなたはカイラス・アクシレ伯爵令息であるはずなのですが、違うというのですね?」
セレクシヤ様の問いかけに、
「そうだ、いえ、そうです。申し訳ないです。あの、俺、いや、私、混乱していて大変失礼なことを……」
顔を青くしているカイラス様の中の人。
侯爵令息とか、それをあんた呼ばわりしたら、無礼打ちかなとか、色々思ってしまうよね。
──気になる。だけど……。
彼はちらりともこちらを見ないし、名乗りに行くのもなんだかだし。話しかけるにもそういうスキルは全く持ち合わせていない。
カイラス様が女性だったらよかったのに。せめて女性なら気後れしても頑張れたと思うのに。
どう話しかけていいかわからない。でも気になるとても気になる。
「エメラ、エメラ・マレシ男爵令嬢。カイラスの様子がおかしいので失礼する」
結局、面倒見のいいエクセラント様が回収して行くみたいだけれど、攻略対象者の転生者もご都合なのかな?
元の世界の話とかするのかもしれない。聞きたいけれど、怖い。
凄く気になるから、様子を見たいけれど、話しかけたり出来る訳もなく、あっという間にいなくなった。
──気になるから混ぜて欲しい。本当に知った同級生なら……でも、名前知っているだけで話したことがある訳でもなんでもない。
日本と言ってたし、同郷の人よね? こんなことになってしまってから、向こうの話に飢えていたりする。
話せないけど、話したい。
無理だ。話しかけられるのもドギマギするけれど、男性に話しかけることなんて、出来る気すらしない。
後ろ姿を見送っていると、
「カイラスのことが気になりますか?」
セレクシヤ様の声に、ついこくりと頷いてしまう。
「やけてしまいますね、あなたにそんな顔をさせるなんて」
ふと目を上げてしまってちらりと見てしまったお顔。ただ漏れの色気垂れ流しが凄く怖い。
──ごめんなさい。無理…………
やっぱり怖い。苦手すぎてどうしていいかわからない。曖昧に微笑んでおく。どうしていいかわからない。どうすれば正解かわからない。
「しかし、カイラス、一体どうしてしまったのか……」
ふたりが去っていった方向を見つめ溜息をつくセレクシヤ様。
私もカイラス様の中の人のことは気になる。
怖いけど、聞いたり出来ないかな?
私の交流スキルじゃ出来そうにないか。
end
守屋海さん?!
まさかの聞いたことのある名前だった。同級生にそんな名前の人がいる。
──まさかね?
話しかけて聞いてみたい。同姓同名かもしれないけれど、でも、もしかして……。
聞きたくて仕方がない。
でも怖い。彼だとしても、私はただ名前と顔知っているだけだし。勿論話したこともないし、男性だし。すごく気になるけど──
「なんなんだここは?!」
花が咲いていて、西洋風の学院っぽい場所の庭園みたいなところ。まぁ見慣れないよねって感じの場所だ。
恋愛シミュレーションゲーム転生とか思わないよね? そもそもこのゲームとか知っているのかな。
「カイラス落ち着け」
エクセラント様が肩に手をおいて話しかけるが、その手を振り払う。
──うわぁ、振り払ってしまってるよ。
見ていてかなりはらはらする。
「だからカイラスとかいうヤツじゃないって、え? 外人さん?」
眉を顰めて、エクセラント様を見据える。
──エクセラント様、侯爵令息なのですけれど……。
逃げ倒す失礼している私が言うのもなんだけれど凄くはらはらする。
「とりあえず暴れるな。君はカイラスじゃないんだな?」
「そうだ。あんたは誰だ」
カイラス様ではあり得ない様子に、溜息まじりにエクセラント様は話しかける。
「エクセラント、レクスタス侯爵第二子だ」
そばにいたセレクシヤ様も声をかける。
「私はセレクシヤ。ライセン侯爵第三子です」
「えっ?!」
びっくりするよね。しない訳ないよね。こんな表情のカイラス様みたことないをちらりちらりと見ながら、私は固唾をのんでいる。
「あなたはカイラス・アクシレ伯爵令息であるはずなのですが、違うというのですね?」
セレクシヤ様の問いかけに、
「そうだ、いえ、そうです。申し訳ないです。あの、俺、いや、私、混乱していて大変失礼なことを……」
顔を青くしているカイラス様の中の人。
侯爵令息とか、それをあんた呼ばわりしたら、無礼打ちかなとか、色々思ってしまうよね。
──気になる。だけど……。
彼はちらりともこちらを見ないし、名乗りに行くのもなんだかだし。話しかけるにもそういうスキルは全く持ち合わせていない。
カイラス様が女性だったらよかったのに。せめて女性なら気後れしても頑張れたと思うのに。
どう話しかけていいかわからない。でも気になるとても気になる。
「エメラ、エメラ・マレシ男爵令嬢。カイラスの様子がおかしいので失礼する」
結局、面倒見のいいエクセラント様が回収して行くみたいだけれど、攻略対象者の転生者もご都合なのかな?
元の世界の話とかするのかもしれない。聞きたいけれど、怖い。
凄く気になるから、様子を見たいけれど、話しかけたり出来る訳もなく、あっという間にいなくなった。
──気になるから混ぜて欲しい。本当に知った同級生なら……でも、名前知っているだけで話したことがある訳でもなんでもない。
日本と言ってたし、同郷の人よね? こんなことになってしまってから、向こうの話に飢えていたりする。
話せないけど、話したい。
無理だ。話しかけられるのもドギマギするけれど、男性に話しかけることなんて、出来る気すらしない。
後ろ姿を見送っていると、
「カイラスのことが気になりますか?」
セレクシヤ様の声に、ついこくりと頷いてしまう。
「やけてしまいますね、あなたにそんな顔をさせるなんて」
ふと目を上げてしまってちらりと見てしまったお顔。ただ漏れの色気垂れ流しが凄く怖い。
──ごめんなさい。無理…………
やっぱり怖い。苦手すぎてどうしていいかわからない。曖昧に微笑んでおく。どうしていいかわからない。どうすれば正解かわからない。
「しかし、カイラス、一体どうしてしまったのか……」
ふたりが去っていった方向を見つめ溜息をつくセレクシヤ様。
私もカイラス様の中の人のことは気になる。
怖いけど、聞いたり出来ないかな?
私の交流スキルじゃ出来そうにないか。
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