熱砂の王は白き舞姫に傅く

小鳥遊

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11.仕込み(1)※

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「いえ、何だろうと思っただけです」

絶対に失礼がないようにとマハールに厳しく言い付けられたせいか、単なる質問の返事をするだけでも緊張してしまう。
アズハルの言葉を聞くと客人は喉を鳴らして笑う。
何か自分は面白いことを言っただろうかと考えていると客人がこちらへ歩み寄り、そのガラスの筒を手にとって言った。

「これで仕込みをするのだ。お前のナカに挿れて広げる」

最初は何のことだかピンとこなかったアズハルだったが、とある話を思い出した途端サアッと顔を青ざめさせた。
そう言えば聞いたことがある。
ハーレムに入り伽を申しつけられた際に慣れていない者、特に男は痛がるばかりで主人の興を削いでしまうことがあるというのだ。
だからハーレムに入る前に男は主人の手を煩わせることのないよう処置を施すのだという。
それが『仕込み』だというものだとは聞かなかったが、まさしく今から己がそれをされるのではないか。
なるほど、これでシュリの反応の理由が分かった。
では先ほど自分はそんな器具を何も知らなかったとはいえ手にしていたということか。
その考えに行きついた途端アズハルの顔が火を噴いたかのように熱くなった。

「お前は青くなったり赤くなったりと忙しいな。まぁいい、とりあえず衣服は邪魔になる。全て脱いで寝台に上がれ」

脱いで寝台に上がれと言われるも、はいそうですかと服を脱ぐ気には全くなれない。
湯浴みをする際に体を洗われることには漸く慣れてきたが、これからされることを考えると戸惑いの方が強くなかなか動き出せずにいる。
そもそも他者の前で裸になることに強い羞恥心を感じる。

「何をしている」

アズハルの戸惑いを余所に客人は抑揚のない声色でそう叱咤してきた。
人を従わせることに慣れているのだろうか、拒否することすら許されないようなそんな威圧感がアズハルを襲い、気がつけば自らの体がその命令に従おうと動き出していた。
パサリと布が床に落ちる音がやけに大きく聞こえる。
ノロノロと身につけていた衣服を全て脱ぎ落とし、その衣服を畳んだ方が良いのかそれともこのままにしておいた方が良いのか悩んでいると客人に二の腕を掴まれて寝台の上に引き倒された。

「……ッ」
「遅い」

苛立ちは含まれていないが叱咤するような声が降ってきてアズハルはびくりと身を竦ませて眉を下げる。
いい加減覚悟を決めたい思いはあるのだが生まれてこのかた25年、まさか自分が抱かれる側になるとは思ってもいなかったので思考がついていけないのだ。
人に身体を見られる羞恥心とこれからどうなるのかわからない不安に挟まれて身をこわばらせていると急に身体を裏返されて腰を強く引き上げられた。
まるで尻を突き出して何かを強請っているかのような獣の体勢にアズハルは思わず身を起こそうとするが、客人に動くなと叱咤されてしまう。

「ぃた……ッ」

不意に尻たぶを開かれて露わになった後孔に冷たい何かが触れたと思うと、次の瞬間にはそれがグイグイと体内へと押し入ってこようとした。
恐らくは先ほどのガラス製の筒だ。

「やはりいきなりは入らぬようだな」

(やはり……って……)

入らないと分かっていてこの客人は無体を働いたのだろうか。
細いものを使われているのだろうが筒を突き立てられたソコは引き攣るような痛みを感じ、更に凄まじい異物感に苛まれる。

(気持ち……わるい……)

そもそも排泄する器官から入り込もうというのが無茶なのだ。
本当にハーレムにいる男はそんなところを行為に使うのだろうかとアズハルは思う。
シーツを握りしめるとそこに顔を埋めて苦痛と不快感に耐えようとするが、その苦痛もいつまでもは続かなかった。
ズッ……と筒が引き抜かれ痛みが消える。
終わったとは到底思えなかったが、痛みと不快感が引いて安堵の息を漏らした。
一度冷静になってしまうと今度は自分の置かれている状況と客人の動向が気になって仕方がない。
尻を高く上げたままの格好は羞恥を増幅させていくばかりだし、起き上がりたい衝動がこみ上げてくる。

(もう起き上がっていいのか……?)

一向に何かをする様子のない客人の様子を伺おうと顔を上げた。

「誰が動いて良いと言った」

顔を上げた途端に乾いた音と共に尻に軽い衝撃を感じる。
衝撃を感じた皮膚がじわりと熱くなり、尻を叩かれたのだと分かるまでにそう時間はかからなかった。
反抗期もなく、大人しい性格だったアズハルは悪戯をして尻を叩かれるという経験をしたことがない。
それなのにこんな大人になってから尻を叩かれることになろうとは。
何とも言えない感情に苛まれてカッと顔を熱くさせたアズハルとは対照的に客人は涼しげな声色で動くなと告げた。

「これで少しは入りやすくなるだろう」

何がなんて聞かなくても分かっている。
先ほどの筒のことだろう。
アズハルは再びあの痛みと不快感が訪れることに怯え、身を固くした。

(あんなもの入るわけが……)

入るわけがない、アズハルがそう思った時だった。

「ッぁ……」

アズハルの口から苦痛ではない声が零れた。
ぬる、と先ほどの苦痛が嘘だったかのように筒がナカへと侵入してきたのだ。
全く不快感がないわけではないが、それでも驚くほど楽に入ってきてアズハルは思わずそれを締め付けてしまった。

「香油を塗った。これなら痛くないだろう?」

指一本ほどの太さのあるその筒を前後に抜き差しさせながら客人がそれに答えている余裕などない。
初めての感覚にどうしていいのかもわからず、アズハルは眉を寄せると熱く火照る頬をシーツに押し当てた。
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