50 / 106
44話 心配
しおりを挟む
鬼塚社長は平気だと言っていたが、あのミワが何か失礼極まりないことをしていないか不安で仕方ない。
私の事を小娘と呼んだ様に、小僧とでも呼んだりしていそうな気がして恐怖さえ感じる。
思わず溜息を吐くと同時、エレベーターの扉が開き、降りようとするとそこには自販機を眺める七海の姿があった。
「あ、おかえりー」
「ただいま」
こちらを振り返りながら自販機のボタンを押した七海はポケットから硬貨を取り出す。
「社長婦人には飲み物奢らないとね?」
「婦人じゃないけど奢ってくれるなら甘える」
この会話を社長に聞かれていたら一発でクビを言い渡されそうだが、奢って貰えるのであれば甘える外無い。
そんな下衆な事を考えながら今日はお茶では無く、それより十円高いジュースを選ぶと、七海は少し予想外だった様子でぐぬぬと唸る。
たった十円、されど十円。この精神はどうやら七海にもあったらしい。
「いつも安いお茶にするのに……」
「奢って貰えるからこそジュースにするんだよ。社長婦人は賢いからね」
「ちゃちい婦人だなぁ……」
呆れたようにそんな事をぼやきながらも買ってくれた七海に礼を言って受け取り、彼女と共に自席の方へ向かう。
すると今日はそんなに忙しい日では無かったらしく、少し暇そうにしている皆の姿があり、私は少しホッとしながら席に着いた。
というのも、この会社ではゴールデンウィーク前などの忙しい日を除いて、基本的に残業などが禁止されている。
それは言い換えれば今日出された仕事は時間内に終わらせなければならず、その日までに終わらせなければならなくなってしまうのである。
大村のように大量の仕事を押し付けて来るなんてことがないおかげで苦にはなっていないから問題無いが、間に合わなかった時の事を考えると少し不安だったりする。
「お、戻ったか。暇だったから深川の分もある程度やっといたから安心してな」
「本当ですか?! ありがとうございます」
想定外の猫田さんの言葉に思わず大きな声を出してしまった。
少し恥ずかしく思いながらスリープモードになっているパソコンを動かし、本当にほとんど終わっている事実に改めて驚く。
「それにしても、まさかあんなに可愛い子どもがいるなんてなあ。いつ結婚したんだ?」
「お前、次そんなこと言ったら顎砕くからな」
木綿谷先輩の揶揄い口調に猫田さんは顔を赤く染めながら言い返し、何だかその姿が可愛らしく見えながら仕事を始める。
……ミワが社長に対して失礼な事をしていないと良いのだが。
私の事を小娘と呼んだ様に、小僧とでも呼んだりしていそうな気がして恐怖さえ感じる。
思わず溜息を吐くと同時、エレベーターの扉が開き、降りようとするとそこには自販機を眺める七海の姿があった。
「あ、おかえりー」
「ただいま」
こちらを振り返りながら自販機のボタンを押した七海はポケットから硬貨を取り出す。
「社長婦人には飲み物奢らないとね?」
「婦人じゃないけど奢ってくれるなら甘える」
この会話を社長に聞かれていたら一発でクビを言い渡されそうだが、奢って貰えるのであれば甘える外無い。
そんな下衆な事を考えながら今日はお茶では無く、それより十円高いジュースを選ぶと、七海は少し予想外だった様子でぐぬぬと唸る。
たった十円、されど十円。この精神はどうやら七海にもあったらしい。
「いつも安いお茶にするのに……」
「奢って貰えるからこそジュースにするんだよ。社長婦人は賢いからね」
「ちゃちい婦人だなぁ……」
呆れたようにそんな事をぼやきながらも買ってくれた七海に礼を言って受け取り、彼女と共に自席の方へ向かう。
すると今日はそんなに忙しい日では無かったらしく、少し暇そうにしている皆の姿があり、私は少しホッとしながら席に着いた。
というのも、この会社ではゴールデンウィーク前などの忙しい日を除いて、基本的に残業などが禁止されている。
それは言い換えれば今日出された仕事は時間内に終わらせなければならず、その日までに終わらせなければならなくなってしまうのである。
大村のように大量の仕事を押し付けて来るなんてことがないおかげで苦にはなっていないから問題無いが、間に合わなかった時の事を考えると少し不安だったりする。
「お、戻ったか。暇だったから深川の分もある程度やっといたから安心してな」
「本当ですか?! ありがとうございます」
想定外の猫田さんの言葉に思わず大きな声を出してしまった。
少し恥ずかしく思いながらスリープモードになっているパソコンを動かし、本当にほとんど終わっている事実に改めて驚く。
「それにしても、まさかあんなに可愛い子どもがいるなんてなあ。いつ結婚したんだ?」
「お前、次そんなこと言ったら顎砕くからな」
木綿谷先輩の揶揄い口調に猫田さんは顔を赤く染めながら言い返し、何だかその姿が可愛らしく見えながら仕事を始める。
……ミワが社長に対して失礼な事をしていないと良いのだが。
15
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが
別に気にも留めていなかった。
元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。
リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。
最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。
確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。
タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる