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 気付けば授業終了のチャイムが鳴っていた。
 いつもなら板書や講師の話していた内容で大半が埋まるノートも殆ど真白なままで、授業内容も全く記憶に無い。
 ……昼食の時間だし、いつもの待ち合わせ場所に向かおう。

 再びぼーっとしそうになる自分にそう言い聞かせ、席から立ち上がって教室を出る。
 完全にあの人に対しての気持ちは萎え切っているものなのだと思っていたが、どうやら心の底では違うらしい。
 思わず溜息を吐きながら、いつも待ち合わせ場所として利用している裏庭へ続く人の通りが少ない廊下を歩いていると、後ろから掛けて来る足音が聞こえた。
 何となく誰なのか察しながら振り返ると、案の定小走りで向かって来るエルケとクラーラの姿があった。

「顔色悪いけどどうしたの?」

「え?」

 エルケが何かを感じ取ったかのように、心配するような声色でそんな事を言って、私は思わず変な声を出した。
 するとクラーラも察した様子で私の隣に来て手を握ると。

「何かあったんですか?」

「な、なにも……」

「隠し事下手だねえ」

 エルケは若干揶揄うような口調でそう言って笑うと、私の手を取って裏庭の方へ歩き出し、何とも言えない気恥ずかしさと微かな嬉しさを覚えながらその後に続く。
 顔には出ていないと思っていたが、この様子だとバッチリ顔に出ていたらしい。公爵令嬢なのに隠し事すら出来ないとは恥ずかしいものだ。

 そんな事を考えている間に裏庭に到着すると、エルケは私をベンチに座らせ、二人は私を挟むようにして両側に座る。
 何から話そうか考えているとエルケがニコリと笑みを浮かべて。

「さあさあ、この大親友に話してみなさい。私の天才的頭脳が全てを解決するんだから」

「すっかすかのおつむが何を解決するんですか?」

「なっ……」

 クラーラの毒舌に血を吐きそうな顔をするエルケを見て、私は笑わせられながらも何があったのか全て話す事に決めた。
 今までも殿下の事で相談した時は何だかんだで参考になる答えをくれたのだから、きっと私と彼の関係を良くするような助言をくれるはずだ。
 私は一度深呼吸をして、殿下と男友達が話していた内容を、二人に打ち明けた。
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