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逆賊討伐

4 決意と迷想 2

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「副長、入り口の作業は終わったぞ」
「悪いな急がせて。とりあえずこれで一段落だ」
 坑夫の前歴を持つ山賊に声をかけられたバックマンは、彼らとは出自の異なる武闘派の者たちを数人引き連れていた。全員が腰や背中に思い思いの得物を携え、その一団は物々しい空気を発している。
「おいおい、もう近衛兵が来るのか?」
「いや、まだ大丈夫だ。こいつも下準備の一環だ」
 バックマンを先頭とした武闘派の山賊たちは、拠点の中で最も新しくできた一室を目指していた。そこには珍しい客人が宿泊している。

 他の部屋よりも真新しい扉をノックすると、バックマンは返事も待たずに扉を開けた。
「悪いな、入るぞ」
 バックマンたちが部屋に入ると、クリスティアン・カールソンは上半身裸で、汗だくで腕立て伏せをしていた。その熱気で部屋は戸外よりむし暑く感じる。
「何だあ? 武器なんか持って。戦争か」
「ああ。その予定だ。その前に、お前にちょっと聞きたいことがあってな」
 カールソンは小さな目の間にしわを寄せ、怪訝けげんな顔をしている。
「お前の兄貴とやらは、いったい誰に担がれてうちに仕事頼みに来た?」
「……どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だよ」
「法外な金まで積み上げて、うちの頭領カシラをおびき出そうって魂胆だったんじゃねえのか、って聞いてんだ」
 眼帯をした山賊ヨンソンの言葉にカールソンの眉間のしわはいっそう深まり、顔の構成パーツが疑問符の形を取りそうなほど返答にきゅうしている。見かねてバックマンが質問を噛み砕いた。
「……あー、つまりだな、お前の兄貴は誰かに命令されて、うちの頭領をここから誘い出したんじゃねえのか、と俺らは疑ってんだ」
「誘い出す? 何のためだ?」
「……俺らを潰すためだ。お前、本当に知らねえのか?」
「知らねえよ! おれは兄貴についてきただけだって」
 バックマンは山賊たちに向き直り、自分の頭を人差し指で差してくるくる回しながら首を横に振った。
「仮にエイデシュテットか誰かの差し金だったとして、こいつはどうせ何も知らねえ。俺が保証する」
 カールソンに聞こえないよう声をひそめ、バックマンは後ろに控えていた隻眼せきがんのヨンソンに耳打ちした。彼も呆れたような顔で頷く。
 カールソンはあぐらをかいて座り、腕組みをして渋い顔をしている。
「兄貴は……何考えてるか、おれもよく分かんねえところがあるけどよ……まあでも自分で考えて来たと思うぜ」
「そうか、じゃああいつは、ひと仕事終えたら満足して、ここに帰ってくるんだな?」
「もちろんだ。兄貴がおれを置いていくわけがねえ」
「よし、ならお前にやってもらう仕事がある。この前のごついプレートアーマーはあるな?」
「もちろんだ」
「兄貴が帰ってくる場所は守らなきゃな。そうだろ?」
「……どういう意味だ?」
「戦争をするんだよ」
「勝ったらあのメシを好きなだけ食わしてやる。どうだ、やるか?」
「もちろんだ!」
 バックマンの防衛計画から、これで準備段階の不確定要素は消えた。
 あとは林道を見張る監視員からの報告を待つばかりとなった。
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