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番外編「温かな居場所」
二)
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その襖を開けた先は、大きな卓袱台が置かれた和室だった。
その卓袱台を囲んでいるのは、見た目からもはっきりとあやかしと分かるものばかりだ。
「ちょっ、ちょっと百瀬さんっ!ここ、あやかしばっかりじゃない!」
「うん。二階はね、あやかしだけなの」
あっけらかんと答えると、優香は何事もない様に「ただいまー」と声を掛けて部屋へと入って行く。そして、その優香に対してあやかし達も口々に『おかえり』と声を掛けている。
何だか奇妙な光景だな、と凪咲は思った。
『おや、優香の友達かい』
不意に、着物姿の老婆に声を掛けられて凪咲は肩をびくりと震わせる。
あやかしに話し掛けられるというのは、なかなか馴れる事ではない。
「え、えっと…」
「転校生の八雲 凪咲ちゃんだよ。あやかしが見えるんだって」
『ふーん。ほら、アンタ達こっちいらっしゃいよ』
骸骨に骨だらけの手で手招きされて、凪咲は恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。
『梢も、お帰り』
先程の老婆が、梢にも穏やかに声を掛ける。
『ただいまぁ』
卓袱台に、梢と並んで座った凪咲はまだどこか落ち着かずにそわそわしていた。
「おやつ貰って来るね!」
「え?!ちょっ…」
勢い良く部屋を出て行く優香を見送りながら、凪咲は少しだけ心細さを感じた。
あやかしの中に一人きりだ。
『八雲さん、大丈夫だよ』
そんな凪咲の不安に気が付いたのか、梢が横から優しく声を掛けてくる。
「うん、ありがとう。ねぇ、七塚さんは、百瀬さんとずっと仲が良いの?」
『うん、赤ちゃんの頃から日中はここに預けられててね。優香ちゃんとは、ずっと一緒に過ごしてるよ』
「だから、仲が良いんだね」
『ふふっ。私の本当の姿を知ってても傍に居てくれる人間は優香ちゃんだけなの。私の大切な友達なんだ』
あやかしの口から、まさか"大切な友達"という言葉が聞かれるとは思わず、凪咲は一瞬どきりとした。
優香が言うように、あやかしの中にも梢みたいに感情を持っているものもいるのかもしれない。
(あやかしは、祓わなきゃいけないのに)
目の前の梢を、凪咲は少しずつ好きになり始めていた。友達になれたら良いな、と密かに思っていた。
(きっと、父さん達には怒られる…)
両親から「使えない子だ」「いらない子だ」と言われる事が、凪咲はとても怖かった。
大事な場面で術を失敗して、そう言われた事も何十回とあるが、その度に凪咲の胸はひどく痛んで、一人でこっそり涙を流した。
あやかしに対して、祓わなければいけないという思いと、仲良くなりたいという相反する想いを抱いて、苦しくなった凪咲はぎゅっと自分の手を握った。
その卓袱台を囲んでいるのは、見た目からもはっきりとあやかしと分かるものばかりだ。
「ちょっ、ちょっと百瀬さんっ!ここ、あやかしばっかりじゃない!」
「うん。二階はね、あやかしだけなの」
あっけらかんと答えると、優香は何事もない様に「ただいまー」と声を掛けて部屋へと入って行く。そして、その優香に対してあやかし達も口々に『おかえり』と声を掛けている。
何だか奇妙な光景だな、と凪咲は思った。
『おや、優香の友達かい』
不意に、着物姿の老婆に声を掛けられて凪咲は肩をびくりと震わせる。
あやかしに話し掛けられるというのは、なかなか馴れる事ではない。
「え、えっと…」
「転校生の八雲 凪咲ちゃんだよ。あやかしが見えるんだって」
『ふーん。ほら、アンタ達こっちいらっしゃいよ』
骸骨に骨だらけの手で手招きされて、凪咲は恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。
『梢も、お帰り』
先程の老婆が、梢にも穏やかに声を掛ける。
『ただいまぁ』
卓袱台に、梢と並んで座った凪咲はまだどこか落ち着かずにそわそわしていた。
「おやつ貰って来るね!」
「え?!ちょっ…」
勢い良く部屋を出て行く優香を見送りながら、凪咲は少しだけ心細さを感じた。
あやかしの中に一人きりだ。
『八雲さん、大丈夫だよ』
そんな凪咲の不安に気が付いたのか、梢が横から優しく声を掛けてくる。
「うん、ありがとう。ねぇ、七塚さんは、百瀬さんとずっと仲が良いの?」
『うん、赤ちゃんの頃から日中はここに預けられててね。優香ちゃんとは、ずっと一緒に過ごしてるよ』
「だから、仲が良いんだね」
『ふふっ。私の本当の姿を知ってても傍に居てくれる人間は優香ちゃんだけなの。私の大切な友達なんだ』
あやかしの口から、まさか"大切な友達"という言葉が聞かれるとは思わず、凪咲は一瞬どきりとした。
優香が言うように、あやかしの中にも梢みたいに感情を持っているものもいるのかもしれない。
(あやかしは、祓わなきゃいけないのに)
目の前の梢を、凪咲は少しずつ好きになり始めていた。友達になれたら良いな、と密かに思っていた。
(きっと、父さん達には怒られる…)
両親から「使えない子だ」「いらない子だ」と言われる事が、凪咲はとても怖かった。
大事な場面で術を失敗して、そう言われた事も何十回とあるが、その度に凪咲の胸はひどく痛んで、一人でこっそり涙を流した。
あやかしに対して、祓わなければいけないという思いと、仲良くなりたいという相反する想いを抱いて、苦しくなった凪咲はぎゅっと自分の手を握った。
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