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今更、惚れたとか手遅れな気がする❶
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「ディグノ・トレイル…お前、それ本気で言ってんのか…?」
口から肉団子が転げるのにも構わずに【火蜥蜴】と呼ばれる炎熱の術剣士は呆然として尋ねた。
「…当たり前だ。こんな事を思ったり言ったりしたのは生まれて初めてだからな。嘘なんかつくか」
確かにグレンの前で熱心に水鏡を覗き込む端整な顔に嘘偽りは一切無さそうだった。
「だって、お前…あの仕業は恋する男のするこっちゃねえだろうが」
「確かに訓練にしては少々乱暴だった事は認める」
「いやいやイヤイヤ、《乱暴》ていうか結構な鬼畜だったぞ?お前。しーかーも、そんなでも奇跡的にあんなに慕ってくれてた御方の前でお前、平気で女とイチャイチャしてたよな?」
「イチャイチャ?ああ、あのB級の乳女?具合が良かったから偶に相手をしていたが」
「レイチェルだよ…。くそ、名前も覚えてやしねぇ。アイツ、気位が高くて滅多な男じゃ相手しねぇんだぞ⁉︎それを…ああムツキ様もお気の毒に、こんな品性ドクズに」
本気で悔しがるマッチョはダンダンとその場で地団駄を踏む。
「失礼だな、お前。レイチェルだかなんだか知らないが、ムツキはその百倍良かったぞ?」
「⁉︎──────お、畏れ多くも勇者様を、お前、襲ったのか⁉︎」
「?──────ちゃんと役目が終わった後だ。問題無いだろう」
ゴク、と喉を鳴らすグレン。気がつくと、辺りがシーンと静まり返っている。
当たり障りなく談笑しているようで客達の顔色は悪い。そしてシッカリと耳はこちらの音を拾おうとすましているのが分かる。
グレンは遮音の魔法を使って音を遮った。
「トレイル、聞くが…それはあくまで《合意の上》の事だったんだろうな?」
「まあ、そうだな。ちっとは暴れてたが」
「それは既に合意じゃねえッ‼︎」
「……処女じゃなくなったら帰れなくなるんじゃないか、って思ったんだよ」
グレンは顎が外れそうな位口を開けていた。
「お、おま…何て不敬な…」
「不敬でもなんでも惚れた女を手の届かない場所にやるなんて出来る男は居ないだろうが。たとえどんな手を使っても逃したくなかったんだよ」
「凱旋パレードにお出ましにならなかったのはひょっとして…」
「…処女相手にやり過ぎた。最初は真心込めて口説き落としたら思いっきり優しくして、一回で済まそうと思ってたんだ俺も。だが、あからさまに避けられて頭に血が上ってなぁ。気が付いたら…」
「…付いたら…(ゴクリ)」
「城下町の《戦士の憩い》亭に連れ込んで三日三晩ヤってた」
「魔王よりヒドイっ‼︎」
そうマッチョが叫んだ瞬間、《遮音》が消え、水鏡がテーブル毎剣圧で真っ二つに割れた。
「─────第二騎士団長か?」
「ほう、S級に覚えて戴けたとはな。光栄の至りだ。だが反して各国の、特に召喚の地であるこの国の陛下の宣である『あの方を追うてはならぬ』という命はとうに貴殿の頭の隅にも残っておらぬ様だ」
当初、彼女の教育にあたっていた第二騎士団長バルサロッサ・オル・グレスデンは伯爵家の三男で既に騎士爵を得ていた美丈夫であるが、性良く驕らず、市井にも気軽に足を運ぶと有名だった。
微笑んではいるが、術に携わる者には一目瞭然…瞳の中に沸々と煮え滾るマグマの様な怒りを湛えて今にも身体中から噴き出しそうなくらいにディグノに憎しみを覚えている。
「あの方からこれ以上何を奪おうというのだ、凶戦士め」
口から肉団子が転げるのにも構わずに【火蜥蜴】と呼ばれる炎熱の術剣士は呆然として尋ねた。
「…当たり前だ。こんな事を思ったり言ったりしたのは生まれて初めてだからな。嘘なんかつくか」
確かにグレンの前で熱心に水鏡を覗き込む端整な顔に嘘偽りは一切無さそうだった。
「だって、お前…あの仕業は恋する男のするこっちゃねえだろうが」
「確かに訓練にしては少々乱暴だった事は認める」
「いやいやイヤイヤ、《乱暴》ていうか結構な鬼畜だったぞ?お前。しーかーも、そんなでも奇跡的にあんなに慕ってくれてた御方の前でお前、平気で女とイチャイチャしてたよな?」
「イチャイチャ?ああ、あのB級の乳女?具合が良かったから偶に相手をしていたが」
「レイチェルだよ…。くそ、名前も覚えてやしねぇ。アイツ、気位が高くて滅多な男じゃ相手しねぇんだぞ⁉︎それを…ああムツキ様もお気の毒に、こんな品性ドクズに」
本気で悔しがるマッチョはダンダンとその場で地団駄を踏む。
「失礼だな、お前。レイチェルだかなんだか知らないが、ムツキはその百倍良かったぞ?」
「⁉︎──────お、畏れ多くも勇者様を、お前、襲ったのか⁉︎」
「?──────ちゃんと役目が終わった後だ。問題無いだろう」
ゴク、と喉を鳴らすグレン。気がつくと、辺りがシーンと静まり返っている。
当たり障りなく談笑しているようで客達の顔色は悪い。そしてシッカリと耳はこちらの音を拾おうとすましているのが分かる。
グレンは遮音の魔法を使って音を遮った。
「トレイル、聞くが…それはあくまで《合意の上》の事だったんだろうな?」
「まあ、そうだな。ちっとは暴れてたが」
「それは既に合意じゃねえッ‼︎」
「……処女じゃなくなったら帰れなくなるんじゃないか、って思ったんだよ」
グレンは顎が外れそうな位口を開けていた。
「お、おま…何て不敬な…」
「不敬でもなんでも惚れた女を手の届かない場所にやるなんて出来る男は居ないだろうが。たとえどんな手を使っても逃したくなかったんだよ」
「凱旋パレードにお出ましにならなかったのはひょっとして…」
「…処女相手にやり過ぎた。最初は真心込めて口説き落としたら思いっきり優しくして、一回で済まそうと思ってたんだ俺も。だが、あからさまに避けられて頭に血が上ってなぁ。気が付いたら…」
「…付いたら…(ゴクリ)」
「城下町の《戦士の憩い》亭に連れ込んで三日三晩ヤってた」
「魔王よりヒドイっ‼︎」
そうマッチョが叫んだ瞬間、《遮音》が消え、水鏡がテーブル毎剣圧で真っ二つに割れた。
「─────第二騎士団長か?」
「ほう、S級に覚えて戴けたとはな。光栄の至りだ。だが反して各国の、特に召喚の地であるこの国の陛下の宣である『あの方を追うてはならぬ』という命はとうに貴殿の頭の隅にも残っておらぬ様だ」
当初、彼女の教育にあたっていた第二騎士団長バルサロッサ・オル・グレスデンは伯爵家の三男で既に騎士爵を得ていた美丈夫であるが、性良く驕らず、市井にも気軽に足を運ぶと有名だった。
微笑んではいるが、術に携わる者には一目瞭然…瞳の中に沸々と煮え滾るマグマの様な怒りを湛えて今にも身体中から噴き出しそうなくらいにディグノに憎しみを覚えている。
「あの方からこれ以上何を奪おうというのだ、凶戦士め」
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