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今更、日常に戻れる気がしない❷
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「お前、マジでソレ言ってんの?確かに俺は愛想もなくて誉められた兄じゃなかったかもだけど、居なくなって倒れてた妹の心配もしないやつだと思われてんの?」
一見冷たそうに見えるその容姿に珍しく怒気が差し込み、六人部屋の片隅で兄の銀縁眼鏡の縁辺りから黒いオーラがジワリと滲み出したのを感じた次女は、久し振りに《葉月地雷》を踏み抜いて慄きまくり、力の限りキョドっていた。
「いやいやいやいや、待って待てって!はづ兄ィ‼︎流石に私も兄にはそんな人でなし設定してないって!」
「『兄には』?」
あいたた、西田睦月やらかしました。
別に卯月をディスるつもりは無かったんだがなぁ…。
「あ、お父さんとお母さん戻って来たよ!ハイ、お兄は着替えるから出て出て」
学年に一人は居る秀才タイプのイケメン兄を次女はグイグイ追い出してとっととカーテンを閉めてしまった。
ヨっしゃ!何とかごまかせたー!
「────ムツ、後で話はきっちり聞かせてもらうからな」
……。ごまかせてなかったー。
「──────と、言うワケで、このゲートボールに最適な、だだっ広いだけがウリの緑地公園まではづ兄にご足労戴いた次第ですが」
徒歩5分のこの場所に私は兄をこっそりと誘った。
「俺はお前の空白の一日と卯月の事が聞きたかっただけなんだがな」
夕食後、日が暮れて設置された灯りでオレンジ色に四隅だけが辛うじて照らされた公園は人気も無く、閑散としていた。
そんな中に兄と妹が居る。
「うーん、色々考えたんだけどね?お兄ってばさー結構なリアリストじゃない」
「ああ」
「見せた方が早いと思って」
何を、と続けられる前に、右腕を横に突き出した。
「──────理を曲げよ、界渡り。【氷よ、在れ】」
ドォン‼︎
轟音が鳴り続け、キラキラとした蒼銀色の光の柱が天に向かって螺旋を描いて聳え立つ。
細かな氷の粒が暴風と共に霰の様に吹き付けてきて、葉月は思わず目を庇いながら『ムツ‼︎』と、叫んだ。
その途端、ソレは冷気だけを残して霧散する。
そこに───────アナ雪を代表するあの美しい氷の城が。今まさにメキメキと音を立てて成形されていたのだ。
本来なら月の光に仄かに照らされるだけであろう巨大な建築物はなんと自ら発光するかの如く、煌々と、だが優しい光を放っている。
「卯月の事はともかく、その一日にあった事はこういうのが絡んでくるからさー。嘘つく事も考えたけど、私も身内に一人くらい味方は欲しいし。でも、こんなんまともに話しても『ラノベで有りがちな設定』みたいでお兄に嘘かごまかしだと怒られて終了だよ。話だけじゃどう考えてもとても信じてもらえない。で、こうした次第」
呆気に取られる兄に苦笑して、睦月は城に続く階段に腰掛けた。
「─────尻、冷たくないのか?」
「え?今気にするとこ、そこ?」
兄は未だ立ち直っていない様だ。
「こんなの、誰かに見られたら…。もし、お前の仕業なら直ぐに消せ!」
「いや、流石に全方位隠匿掛けてるし」
因みに音も遮断してると言ったら、兄は額に手を当てて軽く天を仰いだ。
「お前、マジでソレ言ってんの?確かに俺は愛想もなくて誉められた兄じゃなかったかもだけど、居なくなって倒れてた妹の心配もしないやつだと思われてんの?」
一見冷たそうに見えるその容姿に珍しく怒気が差し込み、六人部屋の片隅で兄の銀縁眼鏡の縁辺りから黒いオーラがジワリと滲み出したのを感じた次女は、久し振りに《葉月地雷》を踏み抜いて慄きまくり、力の限りキョドっていた。
「いやいやいやいや、待って待てって!はづ兄ィ‼︎流石に私も兄にはそんな人でなし設定してないって!」
「『兄には』?」
あいたた、西田睦月やらかしました。
別に卯月をディスるつもりは無かったんだがなぁ…。
「あ、お父さんとお母さん戻って来たよ!ハイ、お兄は着替えるから出て出て」
学年に一人は居る秀才タイプのイケメン兄を次女はグイグイ追い出してとっととカーテンを閉めてしまった。
ヨっしゃ!何とかごまかせたー!
「────ムツ、後で話はきっちり聞かせてもらうからな」
……。ごまかせてなかったー。
「──────と、言うワケで、このゲートボールに最適な、だだっ広いだけがウリの緑地公園まではづ兄にご足労戴いた次第ですが」
徒歩5分のこの場所に私は兄をこっそりと誘った。
「俺はお前の空白の一日と卯月の事が聞きたかっただけなんだがな」
夕食後、日が暮れて設置された灯りでオレンジ色に四隅だけが辛うじて照らされた公園は人気も無く、閑散としていた。
そんな中に兄と妹が居る。
「うーん、色々考えたんだけどね?お兄ってばさー結構なリアリストじゃない」
「ああ」
「見せた方が早いと思って」
何を、と続けられる前に、右腕を横に突き出した。
「──────理を曲げよ、界渡り。【氷よ、在れ】」
ドォン‼︎
轟音が鳴り続け、キラキラとした蒼銀色の光の柱が天に向かって螺旋を描いて聳え立つ。
細かな氷の粒が暴風と共に霰の様に吹き付けてきて、葉月は思わず目を庇いながら『ムツ‼︎』と、叫んだ。
その途端、ソレは冷気だけを残して霧散する。
そこに───────アナ雪を代表するあの美しい氷の城が。今まさにメキメキと音を立てて成形されていたのだ。
本来なら月の光に仄かに照らされるだけであろう巨大な建築物はなんと自ら発光するかの如く、煌々と、だが優しい光を放っている。
「卯月の事はともかく、その一日にあった事はこういうのが絡んでくるからさー。嘘つく事も考えたけど、私も身内に一人くらい味方は欲しいし。でも、こんなんまともに話しても『ラノベで有りがちな設定』みたいでお兄に嘘かごまかしだと怒られて終了だよ。話だけじゃどう考えてもとても信じてもらえない。で、こうした次第」
呆気に取られる兄に苦笑して、睦月は城に続く階段に腰掛けた。
「─────尻、冷たくないのか?」
「え?今気にするとこ、そこ?」
兄は未だ立ち直っていない様だ。
「こんなの、誰かに見られたら…。もし、お前の仕業なら直ぐに消せ!」
「いや、流石に全方位隠匿掛けてるし」
因みに音も遮断してると言ったら、兄は額に手を当てて軽く天を仰いだ。
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