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メインストーリー

5.壊さないように

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 パーティーの皆さんに、魔物の倒し方を教えて約3日。
 勇者様と騎士さんの頭がショートしました。

「勇者になれたからって、勉強が免除されるわけじゃないんですよ」

 勇者になったからこそ、学ぶことは沢山ある。
 交渉術、武器の取り扱い、アイテムの用途、そしてモンスターの倒し方だ。

「魔法使いちゃんこそ、勉強できるの?」

「無論勇者様より年上ですからね」

「え? 年上」

 なんでこの人は、驚いているのだろうか。
 普通のことを言ったつもりだったのに、まさか魔物だということがばれたのか。

「私は28ですが」

「まさか魔法使いちゃんが武闘家さんとタメとは」

 なんだ、私の身長が低いから歳を間違えられただけか。
 いや、それはそれで凹むのですが。

「私ってそんな若く見えます」

「ガキだと思ったら、童顔のババアかよ」

「とうっ!」

 騎士さん飛ばし、記録更新百メートル。

「私って、そんなババアですか?」

 とりあえず、泣いてみた。
 泣き真似や、死んだふりは師匠から仕込まれたので多分バレないだろう。

「魔法使いちゃん泣いちゃったじゃん!騎士さん謝ってください」

 騎士さんは、気を失っているようで、あれ、手が変な方向を向いている。

 急いで騎士さんの方に走り、ヒールをかけた。
 私のヒールは、死にかけでも一瞬で治る。
 まあ、マクロを組んで、蘇生魔法と回復魔法と、活性化の補助魔法をかけたんだけどね。

 一般的な魔法使いの総MPは六百程度、私の魔力は一万二千五百程度です。
 因みにこの魔法の消費MPは1500だ。

「まあ、とりあえず勉強をしましょう」

 その後武闘家さんは、だいぶ色々なことを覚えてくれた。
 他の二人は、結構くたばっていた。

 結構順調に、皆さんは色々なことを覚えてくれた。
 ただ、私の身体も順調に魔族として成長していた。

 魔界に行かないと。
 身体は燃えるように熱い、このままこの誘惑に飲み込まれたい。
 でもそれじゃ、勇者様を殺してしまう。

「魔王…もしもの場合、あなたが止めて、もう私じゃこの力を抑えられない」

「ナノ様! 輸血パックを今すぐ持ってこい!」


 そのあとの記憶は、かなり欠落していた。
 まるで、城が襲われたあの時のようだった。
 目が覚めると、私はベットに寝かさせていた。

「また、この展開ですか」

「ナノ様! 目が覚めたのですか」

「うん、ありがとね魔王」

 私はヴァンパイアとエルフのハーフ。
 永遠を生き、永遠に血を欲する化け物だ。
 私は世界が嫌いだ、真実なんて誰にも言えない。
 暗い、暗い、何も見えない道を歩き続けてきた。

「吸血衝動が出たならもっと早く言ってください」

「てか魔王、その傷…まさか」

「いえ、違いますよ! 私の力が足りなかっただけです」

 また傷つけた、折角我慢してたのに。
 私とお父さんの思想の理解者を、こんな自分に価値なんてない。
 所詮、異種族と異種族のまがい物だ。

「私がやったんだね」

「そうです。しかしあなたは、今まで頑張った、勇者にも隠して、たまには人を頼ってみたらどうですか? まあ私しかいませんが」

 久しぶりの暖かい言葉だった。
 ずっと一人だった私に初めて理解してくれた。
 勇者様は、私に居場所をくれた。
 魔王は、私を理解してくれた。

 この二人が争う理由なんてないはずなのにな。

「魔王、いやカルロ。私は必ず世界を平和にして、あなたと勇者様が二人で笑ってる世界を作る! だから少し力を貸して」

「ナノ様、我が主人の仰せのままに」

 私はもう、独りじゃないんだ。
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