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4.五月闇に、忍び寄る
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ライトブルーの爽やかなスーツをスラリと着こなしているその人は、スマホの画面と周りに視線を行き来させている。歩く人は少ない上に、相手が外国人ということもあり、誰もが遠巻きに見ているだけだった。
「何か、お探しですか?」
相手が日本語の理解ができるとは限らない。英語圏の人でなくとも、大抵英語なら通じるはずと、英語で話しかけた。
「ここへ行きたいんだけど」
話しかけた私に、彼は英語で返しながらスマホの画面を見せる。行きたいのは、総務課らしい。同じ総務部の中だが、フロアは反対側だ。
相手にそれを話し、簡単に行きかたを説明すると、その人はホッとしたように笑顔になった。
金髪の緩い巻き毛に、燻んだブルーの瞳。年齢は同じくらいだろうか。童話に登場する王子様って、こんな感じかと思うような整った顔だった。
「ありがとう。待ち合わせしてたんだけど、場所がわからなくて」
「どういたしまして。お役に立てて光栄です」
そう返していると、彼は何か考えているように、無言でこちらを見つめていた。
「…………。エマ?」
「え?」
社員証の名前を見たのかとIDカードを確認するが、彼から見える角度ではない。
なぜ? と驚いていると、彼は唐突に私の手を取って喜び始めた。
「やっぱりエマだよね? 僕だよ、覚えてない? リアムだよ!」
「リア……ム……? って、あの? 嘘でしょ?」
よくよく見ると、面影はあるような気がする。けれど最後に会ったのは、もう十五年以上も前だ。言われなければ、全く気づかなかった。
「信じられないや! 神様っているんだね。エマに会わせてくれるなんて!」
「大袈裟よ、リアム。でも、私も会えて嬉しい」
昔を思い出し、つい口調がお姉さんぶってしまう。
リアムは、一つ年下。出会ったのは自分が八才のときだった。毎年参加していたサマーキャンプ。そこで仲良くなったのが、リアムだった。
体が小さくて泣き虫だった男の子に懐かれ、一人っ子だった私は弟のように可愛がっていた。
「エマは、ここで働いてるんだよね?」
「うん。社内通訳をしているの。リアムはここへは?」
「僕は視察で来たんだ」
興奮気味のリアムと話していると、彼のスマホが震え出した。
「あ、早く来いって催促だ。ねえ、エマ。また会える? 僕、しばらく滞在予定なんだ」
「そうなんだ。じゃあ……」
バッグから名刺を出すと、裏に連絡先を書きリアムに差し出す。
「良かったら、ここに連絡して?」
「ありがとう。必ず連絡するから!」
嬉しそうに笑顔で手を振る彼に、私は手を振り返して見送った。
「何か、お探しですか?」
相手が日本語の理解ができるとは限らない。英語圏の人でなくとも、大抵英語なら通じるはずと、英語で話しかけた。
「ここへ行きたいんだけど」
話しかけた私に、彼は英語で返しながらスマホの画面を見せる。行きたいのは、総務課らしい。同じ総務部の中だが、フロアは反対側だ。
相手にそれを話し、簡単に行きかたを説明すると、その人はホッとしたように笑顔になった。
金髪の緩い巻き毛に、燻んだブルーの瞳。年齢は同じくらいだろうか。童話に登場する王子様って、こんな感じかと思うような整った顔だった。
「ありがとう。待ち合わせしてたんだけど、場所がわからなくて」
「どういたしまして。お役に立てて光栄です」
そう返していると、彼は何か考えているように、無言でこちらを見つめていた。
「…………。エマ?」
「え?」
社員証の名前を見たのかとIDカードを確認するが、彼から見える角度ではない。
なぜ? と驚いていると、彼は唐突に私の手を取って喜び始めた。
「やっぱりエマだよね? 僕だよ、覚えてない? リアムだよ!」
「リア……ム……? って、あの? 嘘でしょ?」
よくよく見ると、面影はあるような気がする。けれど最後に会ったのは、もう十五年以上も前だ。言われなければ、全く気づかなかった。
「信じられないや! 神様っているんだね。エマに会わせてくれるなんて!」
「大袈裟よ、リアム。でも、私も会えて嬉しい」
昔を思い出し、つい口調がお姉さんぶってしまう。
リアムは、一つ年下。出会ったのは自分が八才のときだった。毎年参加していたサマーキャンプ。そこで仲良くなったのが、リアムだった。
体が小さくて泣き虫だった男の子に懐かれ、一人っ子だった私は弟のように可愛がっていた。
「エマは、ここで働いてるんだよね?」
「うん。社内通訳をしているの。リアムはここへは?」
「僕は視察で来たんだ」
興奮気味のリアムと話していると、彼のスマホが震え出した。
「あ、早く来いって催促だ。ねえ、エマ。また会える? 僕、しばらく滞在予定なんだ」
「そうなんだ。じゃあ……」
バッグから名刺を出すと、裏に連絡先を書きリアムに差し出す。
「良かったら、ここに連絡して?」
「ありがとう。必ず連絡するから!」
嬉しそうに笑顔で手を振る彼に、私は手を振り返して見送った。
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(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
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