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2.吹き荒れるは、春疾風
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野菜やスパイスをあれこれと買いこみスーパーをあとにする。
左手にはレジ袋、右手に私の手を握る依澄さんは、今までで一番上機嫌かも知れない。横から見えるその口角は、ずっと上がりっぱなしだ。
「これで必要なものはほぼ揃った。あとは……デザートだな」
すぐ近くにスイーツショップがあり、彼はそこに視線を送っている。
「でも依澄さん、甘いものは食べないんじゃ……」
「今日は特別。それに、俺からの問題にしたいし」
何が特別なのかはわからないけれど、彼はそのままショーケースの前に私を促す。
「予想はできるだろうが、この中から一つ、お互いの食べたいものを選ぶ。これが問題だ」
見目麗しいスイーツはざっと二十種類ほどある。オーソドックスなイチゴのショートケーキやチョコケーキ、フルーツたっぷりのタルトに、シュークリームまで。目移りしてしまいそうだ。
けれど数が多いぶん、当てるのも至難の業に思える。
まさか依澄さんは、当てる気も当てさせる気もないのだろうか。このゲームのルールは、10ポイント取ったほうが勝ち。つまり、どちらかが10ポイント取るまで終わらないのだ。
(もしかして、引き伸ばしてる……?)
そんなことが頭をよぎるが、すぐに打ち消した。
彼の結婚したい理由は、"祖母に見せたい"だった。けれどその祖母に残された時間は少ないと言っていた。だから早く決着をつけるため、こんなゲームを始めたのだ。
「恵舞は決めた? 俺はもう決まったぞ」
「えっ! は、はい」
全く考えていなくて慌ててしまう。自分の食べたいものは正直なんでもいいが、彼の選びそうなものが思いつかない。
もう一度ちゃんとショーケースを眺めると、ふと目に止まったものがあった。
(これは……)
どうしてだろう。依澄さんはきっとこれを選ぶはず。妙に自信があった。
日本ではそうそうお目にかからないスイーツ。偶然にもここで出会えたのは運命なのかと思ってしまう。
「決めました。じゃあスマホに入れますね。答え合わせと……賞品はどうしますか?」
「答え合わせは夕食後にしよう。それぞれ自分の食べたいものをオーダーして、見えないように箱に入れてもらう。で、賞品はその箱を開ける前に言い合おう」
わかりました、と頷いて手を離す。お互いその場で答えをスマホのメモに入れる。それから彼は、店の人に事情を話してくると、先にオーダーしに行った。
(同じ……だったらいいな)
アメリカでは家庭でもよく作られるそのケーキを見つめながら、そう思っていた。
左手にはレジ袋、右手に私の手を握る依澄さんは、今までで一番上機嫌かも知れない。横から見えるその口角は、ずっと上がりっぱなしだ。
「これで必要なものはほぼ揃った。あとは……デザートだな」
すぐ近くにスイーツショップがあり、彼はそこに視線を送っている。
「でも依澄さん、甘いものは食べないんじゃ……」
「今日は特別。それに、俺からの問題にしたいし」
何が特別なのかはわからないけれど、彼はそのままショーケースの前に私を促す。
「予想はできるだろうが、この中から一つ、お互いの食べたいものを選ぶ。これが問題だ」
見目麗しいスイーツはざっと二十種類ほどある。オーソドックスなイチゴのショートケーキやチョコケーキ、フルーツたっぷりのタルトに、シュークリームまで。目移りしてしまいそうだ。
けれど数が多いぶん、当てるのも至難の業に思える。
まさか依澄さんは、当てる気も当てさせる気もないのだろうか。このゲームのルールは、10ポイント取ったほうが勝ち。つまり、どちらかが10ポイント取るまで終わらないのだ。
(もしかして、引き伸ばしてる……?)
そんなことが頭をよぎるが、すぐに打ち消した。
彼の結婚したい理由は、"祖母に見せたい"だった。けれどその祖母に残された時間は少ないと言っていた。だから早く決着をつけるため、こんなゲームを始めたのだ。
「恵舞は決めた? 俺はもう決まったぞ」
「えっ! は、はい」
全く考えていなくて慌ててしまう。自分の食べたいものは正直なんでもいいが、彼の選びそうなものが思いつかない。
もう一度ちゃんとショーケースを眺めると、ふと目に止まったものがあった。
(これは……)
どうしてだろう。依澄さんはきっとこれを選ぶはず。妙に自信があった。
日本ではそうそうお目にかからないスイーツ。偶然にもここで出会えたのは運命なのかと思ってしまう。
「決めました。じゃあスマホに入れますね。答え合わせと……賞品はどうしますか?」
「答え合わせは夕食後にしよう。それぞれ自分の食べたいものをオーダーして、見えないように箱に入れてもらう。で、賞品はその箱を開ける前に言い合おう」
わかりました、と頷いて手を離す。お互いその場で答えをスマホのメモに入れる。それから彼は、店の人に事情を話してくると、先にオーダーしに行った。
(同じ……だったらいいな)
アメリカでは家庭でもよく作られるそのケーキを見つめながら、そう思っていた。
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(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
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