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☆番外編3☆
emotional 7
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当たり前のように、司は「よし。一緒に風呂入ろうぜ?」なんて機嫌良く言い出す。
このホテルはバストイレが別の、所謂セパレート式の作りになっていて、何度か一緒に入ったことはある。でも、最近は一緒にお風呂に入ることなどなく、と言うよりできず、久しぶりすぎてなんだか照れてしまう。
「ほらほら。行くぞ」
上機嫌な司は私の背中を押してバスルームに押し込む。
「何? 脱がせて欲しいわけ?」
私はバスローブから、さすがにまた着てきたワンピースに着替え直していた。目の前で自分のシャツを脱ぎ始めた司を前に戸惑っていると、そんなことを言われてしまった。
「じゃなくて! その……」
いい年して恥ずかしい、とは言えず口籠ると、司は息を漏らして笑っていた。
「なーに恥ずかしがってんだよ」
そう言って手を引かれ抱き寄せられると、すぐに背中に手が這う気配がした。
ワンピースのファスナーが下されると、そのまま司の指が私の肌を直接伝う。
「……ん……」
俯いたまま小さく息を漏らすと、司は私の耳元に唇を寄せる。
「そんなに焦らされたら、反動が凄いことになりそうなんだけど?」
小さく、けれど楽しそうにそんなことを言われて、私は「焦らしてなんか……ない」と言うのが精一杯だった。背中を、ゆっくりと肌の表面だけなぞるように蠢く指の感触に、焦らされているのは自分のほうだと思ってしまう。
「わかった、から……」
私が答えるのとほぼ同時くらいにストンとワンピースは滑り落ち、背中のホックも外される。
「こっち。向いて?」
緩んだ下着の隙間から指を滑り込ませて司は私に囁く。それに私はおずおずと従い、熱を持った顔を上げた。私を欲しがるその瞳と視線がぶつかると、ゆっくりとそれが近づく。啄むように何度か唇が触れ、そのうちだんだんとその深さが増していった。
「んっっ」
唇から、吐息といやらしい水音が聞こえ始めるころには、もう肩に掛かっていた下着も剥ぎ取られていた。左手で胸をやわやわと刺激されながら、右手で腰を引き寄せられ、私は必死で司の腕にしがみつきながら、舌を絡めあっていた。
「あ、はぁっ……。つ、かさ……。ふうっ、ん」
「……な、んだ……?」
お互い、息継ぎの合間に呼吸するように、そんなことを言う。酸素を求めるように唇を求め合い、苦しいくらいだ。ようやく唇を離すと、水から這い出た直後のように2人とも荒い呼吸をしていた。
「あの……ね?」
「ん?」
私は司の胸の中に収まったままその顔を見上げる。
「私……。本当は凄く寂しかったの。司がいないことは今までもあったのに、今回は一番……ダメだなって。笑顔で送り出せなくて、ごめんなさい……」
そんな私を見て、司は困ったような顔をして私に回した腕に力を込める。
「いや……。謝ることねぇよ。俺も本当はむちゃくちゃホームシックにかかってた。仕事に追われてなきゃ、ちょっとやばかった」
自嘲気味にそう言うと、より腕に力が入る。
「そうなの?」
「そうだよ。俺の中で、お前の存在が本当におっきいんだなって、嫌って言うほど思い知った」
そう言って司は明るく笑う。それに釣られるように私も表情を緩めて口を開いた。
「私たち、似たもの夫婦よね」
「ふっ。今更かも知れねぇけどな」
顔を見合わせて、笑いながら司はそう言う。
「だね」
そんな簡単な会話なのに、急に心が軽くなる。まだ、ちゃんと、お互いが唯一無二の存在だって、確かめられたから。
「じゃ、そろそろ風呂、入るぞ? 言っとくが、簡単には開放してやれねぇからな?」
司はそう言って不敵に笑う。
そして私は、「えっと……。お手柔らかに」なんて、引き攣った顔で答えていた。
このホテルはバストイレが別の、所謂セパレート式の作りになっていて、何度か一緒に入ったことはある。でも、最近は一緒にお風呂に入ることなどなく、と言うよりできず、久しぶりすぎてなんだか照れてしまう。
「ほらほら。行くぞ」
上機嫌な司は私の背中を押してバスルームに押し込む。
「何? 脱がせて欲しいわけ?」
私はバスローブから、さすがにまた着てきたワンピースに着替え直していた。目の前で自分のシャツを脱ぎ始めた司を前に戸惑っていると、そんなことを言われてしまった。
「じゃなくて! その……」
いい年して恥ずかしい、とは言えず口籠ると、司は息を漏らして笑っていた。
「なーに恥ずかしがってんだよ」
そう言って手を引かれ抱き寄せられると、すぐに背中に手が這う気配がした。
ワンピースのファスナーが下されると、そのまま司の指が私の肌を直接伝う。
「……ん……」
俯いたまま小さく息を漏らすと、司は私の耳元に唇を寄せる。
「そんなに焦らされたら、反動が凄いことになりそうなんだけど?」
小さく、けれど楽しそうにそんなことを言われて、私は「焦らしてなんか……ない」と言うのが精一杯だった。背中を、ゆっくりと肌の表面だけなぞるように蠢く指の感触に、焦らされているのは自分のほうだと思ってしまう。
「わかった、から……」
私が答えるのとほぼ同時くらいにストンとワンピースは滑り落ち、背中のホックも外される。
「こっち。向いて?」
緩んだ下着の隙間から指を滑り込ませて司は私に囁く。それに私はおずおずと従い、熱を持った顔を上げた。私を欲しがるその瞳と視線がぶつかると、ゆっくりとそれが近づく。啄むように何度か唇が触れ、そのうちだんだんとその深さが増していった。
「んっっ」
唇から、吐息といやらしい水音が聞こえ始めるころには、もう肩に掛かっていた下着も剥ぎ取られていた。左手で胸をやわやわと刺激されながら、右手で腰を引き寄せられ、私は必死で司の腕にしがみつきながら、舌を絡めあっていた。
「あ、はぁっ……。つ、かさ……。ふうっ、ん」
「……な、んだ……?」
お互い、息継ぎの合間に呼吸するように、そんなことを言う。酸素を求めるように唇を求め合い、苦しいくらいだ。ようやく唇を離すと、水から這い出た直後のように2人とも荒い呼吸をしていた。
「あの……ね?」
「ん?」
私は司の胸の中に収まったままその顔を見上げる。
「私……。本当は凄く寂しかったの。司がいないことは今までもあったのに、今回は一番……ダメだなって。笑顔で送り出せなくて、ごめんなさい……」
そんな私を見て、司は困ったような顔をして私に回した腕に力を込める。
「いや……。謝ることねぇよ。俺も本当はむちゃくちゃホームシックにかかってた。仕事に追われてなきゃ、ちょっとやばかった」
自嘲気味にそう言うと、より腕に力が入る。
「そうなの?」
「そうだよ。俺の中で、お前の存在が本当におっきいんだなって、嫌って言うほど思い知った」
そう言って司は明るく笑う。それに釣られるように私も表情を緩めて口を開いた。
「私たち、似たもの夫婦よね」
「ふっ。今更かも知れねぇけどな」
顔を見合わせて、笑いながら司はそう言う。
「だね」
そんな簡単な会話なのに、急に心が軽くなる。まだ、ちゃんと、お互いが唯一無二の存在だって、確かめられたから。
「じゃ、そろそろ風呂、入るぞ? 言っとくが、簡単には開放してやれねぇからな?」
司はそう言って不敵に笑う。
そして私は、「えっと……。お手柔らかに」なんて、引き攣った顔で答えていた。
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