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何か、緊張する……
手配していた美容院で着替えて、ヘアメイクもして貰ってから、また一度来た砂利道を歩いている。
ヒール高めの靴を選んでしまったせいで、歩きながらヨタヨタしてしまい、見かねた司が片手を支えて歩いているんだけど……。
正直言って、司の方を全然見れない。
ブラックスーツに身を包んだ司は、何というか格好よすぎて直視できない。
最近はラフな姿を見ることが多くて、すっかり気を抜いてたけど、スリーピースのスーツにグレーのネクタイで、髪を少し撫であげてるその姿は、やっぱり撮る側にはとても見えない程様になっている。
それが私の緊張感を一層高めていた。
足元を気にするフリして下を見ながら歩き、ようやく砂利のなくなった部分まで来ると立ち止まり、私は大きく肩で息をした。
「大丈夫か?」
そう尋ねられて司の顔を見上げると、さっきここに来た時とは打って変わって上機嫌になっている。
「大丈夫じゃないよ!もの凄く緊張してるんだからね!」
そう言うと、不思議そうに「なんで?」と首を傾げられた。
「だって、お姉さんも来るんでしょ?百合さんから聞いたよ?私、仕事の関係だって押し通すからね!」
そうなのだ。この服を取りに行った時に、個室で百合さんから
『まどかも行くって言ってたわよ。香緒の結婚式』
って言われて血の気が引いた。
いきなり身内に会うなんて、と思っていたら、『大丈夫よ。まどかはきっとあなたの事気にいるわ』と百合さんに励まされたけど……。
「別に取って食ったりしねーよ。それに、仕事の関係だって言ってもいいが、たぶん、すぐバレる」
「えっ!」
ちょっと待って、すぐバレるってどう言う事⁈って焦ってると、司は続けた。
「まあ……あれでも俺の姉だからな」
なんて、焦る私の様子を楽しんでいるようにクツクツと笑っていた。
「それに、もう来たぞ」
振り返ると、砂利道の先に男女2組がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「どっどうしよう!」
半ばパニック気味の私を他所に、涼しい顔して、「普通にしてろ」なんて司は言い出して。
「分かった!仕事だと思う事にする!」
と気合いを入れると、司は盛大に笑い出す。
「本当に面白いな。お前は」
「こっちは全く面白くありませんっ!!」
そうしているうちに、後ろまで迫った人の気配がして、1人が声を上げた。
「あら司。いたの」
うん。たぶんお姉さんだ。
「当たり前だろ」
呆れたように答える司を見ながら私は恐る恐る振り返り、司の横に並んだ。
そこには、美男美女が2組。
何かもう、美形だらけでゲシュタルト崩壊しそう……そう思いながら、私は作り笑顔でニッコリ微笑んだ。
「あら。こちらは?」
おそらく、と言うより間違いなく司のお姉さんだろうその人はそう司に尋ねる。
司と同じ、少し色素の薄い栗色の髪。百合さんと同じくらい髪は長いが、こちらは緩くウェーブがかかっている。
もちろん背は高くて、凛とした綺麗な人。やっぱりどこか司と醸し出す雰囲気は似ている気がする。
「はじめまして。長門さんのマネージャーをしております、長森瑤子と申します」
そう言いながら名刺を差し出した。
「姉のまどかです。司のマネージャーなんて大変ね。迷惑かけてないかしら?」
名刺を受け取りながら、まどかさんはそう言って司に鋭い視線を送る。
「とんでもない。いつも色々勉強させていただいてます」
「そう?まあ、全く可愛げのない弟だけど、よろしくお願いね」
さすが血縁。辛辣な言葉をサラッと吐き出して、まどかさんは微笑んでいた。
「俺は香緒を撮りに行く」
その場から逃げ出すように、バツの悪そうな顔をしたまま、さっさと司は教会の中に入って行ってしまう。
え……。この状態で置いてけぼり?
その場で唖然としながら立ち尽くす私を気にする様子もなく、まどかさんは私に話しかけてくる。
「良かったら紹介するわね。夫の尊斗」
そう紹介された人を見て、ようやくそこで気付く。
まどかさんって大江さんのお母さんか!
司と大江さんがあまりに似てなくて、あまり意識してなかったし、まどかさんと大江さんも似てないから認識できてなかったけど……。
大江さんそっくりの顔をした人を紹介されてようやく繋がった。
「あ。大江さん……。希海さんの……」
そこまで言うと、尊斗さんは岡田さん並みに人懐っこい笑顔で口を開く。
「希海のことも知ってるんだ。父です。よろしくね!」
未来の大江さん、みたいな顔なのに、全く違う雰囲気に戸惑っていると、横でまどかさんが笑い出す。
「先に希海を知ってると、みんなそんな顔するのよね。私にとっちゃ可愛い息子だけど、まあ、あっちも可愛いげはないものね」
「そんなことは……」
そう言いかけると、まどかさんは「いいのいいの」と笑っていた。
「楽しそうね」
今度は、少し後ろで会話していた男女の女性の方がこちらにやって来た。
この人は……見ればすぐに親子と分かる。それくらいに似ている。
「はじめまして。香緒の母の祥子です。今日はあの子達のために列席いただいてありがとうございます」
そう言ってフワリと笑顔を見せる。
橋本さんの事は直接知らないけど、きっと本人もこんな感じの人なんだろうなぁ……って思った。
それからお父さんの修志さん。こちらも穏やかな素敵な人だ。
そうやって和やかに紹介を終え、私たちは教会の中に入った。
手配していた美容院で着替えて、ヘアメイクもして貰ってから、また一度来た砂利道を歩いている。
ヒール高めの靴を選んでしまったせいで、歩きながらヨタヨタしてしまい、見かねた司が片手を支えて歩いているんだけど……。
正直言って、司の方を全然見れない。
ブラックスーツに身を包んだ司は、何というか格好よすぎて直視できない。
最近はラフな姿を見ることが多くて、すっかり気を抜いてたけど、スリーピースのスーツにグレーのネクタイで、髪を少し撫であげてるその姿は、やっぱり撮る側にはとても見えない程様になっている。
それが私の緊張感を一層高めていた。
足元を気にするフリして下を見ながら歩き、ようやく砂利のなくなった部分まで来ると立ち止まり、私は大きく肩で息をした。
「大丈夫か?」
そう尋ねられて司の顔を見上げると、さっきここに来た時とは打って変わって上機嫌になっている。
「大丈夫じゃないよ!もの凄く緊張してるんだからね!」
そう言うと、不思議そうに「なんで?」と首を傾げられた。
「だって、お姉さんも来るんでしょ?百合さんから聞いたよ?私、仕事の関係だって押し通すからね!」
そうなのだ。この服を取りに行った時に、個室で百合さんから
『まどかも行くって言ってたわよ。香緒の結婚式』
って言われて血の気が引いた。
いきなり身内に会うなんて、と思っていたら、『大丈夫よ。まどかはきっとあなたの事気にいるわ』と百合さんに励まされたけど……。
「別に取って食ったりしねーよ。それに、仕事の関係だって言ってもいいが、たぶん、すぐバレる」
「えっ!」
ちょっと待って、すぐバレるってどう言う事⁈って焦ってると、司は続けた。
「まあ……あれでも俺の姉だからな」
なんて、焦る私の様子を楽しんでいるようにクツクツと笑っていた。
「それに、もう来たぞ」
振り返ると、砂利道の先に男女2組がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「どっどうしよう!」
半ばパニック気味の私を他所に、涼しい顔して、「普通にしてろ」なんて司は言い出して。
「分かった!仕事だと思う事にする!」
と気合いを入れると、司は盛大に笑い出す。
「本当に面白いな。お前は」
「こっちは全く面白くありませんっ!!」
そうしているうちに、後ろまで迫った人の気配がして、1人が声を上げた。
「あら司。いたの」
うん。たぶんお姉さんだ。
「当たり前だろ」
呆れたように答える司を見ながら私は恐る恐る振り返り、司の横に並んだ。
そこには、美男美女が2組。
何かもう、美形だらけでゲシュタルト崩壊しそう……そう思いながら、私は作り笑顔でニッコリ微笑んだ。
「あら。こちらは?」
おそらく、と言うより間違いなく司のお姉さんだろうその人はそう司に尋ねる。
司と同じ、少し色素の薄い栗色の髪。百合さんと同じくらい髪は長いが、こちらは緩くウェーブがかかっている。
もちろん背は高くて、凛とした綺麗な人。やっぱりどこか司と醸し出す雰囲気は似ている気がする。
「はじめまして。長門さんのマネージャーをしております、長森瑤子と申します」
そう言いながら名刺を差し出した。
「姉のまどかです。司のマネージャーなんて大変ね。迷惑かけてないかしら?」
名刺を受け取りながら、まどかさんはそう言って司に鋭い視線を送る。
「とんでもない。いつも色々勉強させていただいてます」
「そう?まあ、全く可愛げのない弟だけど、よろしくお願いね」
さすが血縁。辛辣な言葉をサラッと吐き出して、まどかさんは微笑んでいた。
「俺は香緒を撮りに行く」
その場から逃げ出すように、バツの悪そうな顔をしたまま、さっさと司は教会の中に入って行ってしまう。
え……。この状態で置いてけぼり?
その場で唖然としながら立ち尽くす私を気にする様子もなく、まどかさんは私に話しかけてくる。
「良かったら紹介するわね。夫の尊斗」
そう紹介された人を見て、ようやくそこで気付く。
まどかさんって大江さんのお母さんか!
司と大江さんがあまりに似てなくて、あまり意識してなかったし、まどかさんと大江さんも似てないから認識できてなかったけど……。
大江さんそっくりの顔をした人を紹介されてようやく繋がった。
「あ。大江さん……。希海さんの……」
そこまで言うと、尊斗さんは岡田さん並みに人懐っこい笑顔で口を開く。
「希海のことも知ってるんだ。父です。よろしくね!」
未来の大江さん、みたいな顔なのに、全く違う雰囲気に戸惑っていると、横でまどかさんが笑い出す。
「先に希海を知ってると、みんなそんな顔するのよね。私にとっちゃ可愛い息子だけど、まあ、あっちも可愛いげはないものね」
「そんなことは……」
そう言いかけると、まどかさんは「いいのいいの」と笑っていた。
「楽しそうね」
今度は、少し後ろで会話していた男女の女性の方がこちらにやって来た。
この人は……見ればすぐに親子と分かる。それくらいに似ている。
「はじめまして。香緒の母の祥子です。今日はあの子達のために列席いただいてありがとうございます」
そう言ってフワリと笑顔を見せる。
橋本さんの事は直接知らないけど、きっと本人もこんな感じの人なんだろうなぁ……って思った。
それからお父さんの修志さん。こちらも穏やかな素敵な人だ。
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