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「お邪魔しまーす」
夕実ちゃんの家のマンション。
玄関先で夕実ちゃんと、そしてもうすぐ5歳になる娘の紗絵ちゃんが出迎えてくれた。
「いらっしゃ~い!」
「瑤子ちゃん!!いらっしゃい!」
笑顔の2人に癒されながら中に入り、リビングへ向かう。
ソファの前には紗絵ちゃんが遊んでいたのか、人形のセットと家が置いてあった。
「あ、これお土産。みんなで食べよ?」
「サンキュ~!」
夕実ちゃんは私の持って来たケーキの箱を受け取りながらそう言う。
そして、私はもう一つ持っていた紙袋を紗絵ちゃんに渡す。
「はい、これは紗絵ちゃんに」
紗絵ちゃんはそれを受け取り、中身を確認すると、目を輝かせて私を見上げた。
「ありがとう瑤子ちゃん!大好き~」
と飛びついて来て、可愛いなぁと抱きしめる。
「も~瑤子、気を使わなくていいのに」
お茶を運んで来た夕実ちゃんにそう言われるが、私は
「いいのいいの。紗絵ちゃんは私にとって姪っ子みたいなものだしね」
と返した。
「ねーねー瑤子ちゃん。後で一緒に遊ぼうね。貰ったお洋服着せていい?」
ショートケーキのクリームを口につけたまま、満面の笑顔で紗絵ちゃんは私に言う。
「もちろん。今日は紗絵ちゃんと遊ぶの楽しみにしてたんだぁ」
私もレアチーズケーキを口に運びながらそう答えた。
いいなぁ。子供は。無邪気で癒される。
私も、もしも元彼と上手く行ってたら、今頃こんな風に自分の子供と過ごしてたのかなぁ……なんて想像をする。
まあ、向こうの性格から言って、何処かで破綻してたかもな、とも思うけど。
今となっては別れて正解だった。お陰で色々なことを学べた。
でも、人生で一番辛かった時期を乗り越えられたのは、夕実ちゃんが支えてくれたからだ。今でも感謝しても仕切れない。
「瑤子?どうかした?」
目の前で、夕実ちゃんがぼんやりしていた私に声をかける。
「ん?夕実ちゃんのご飯楽しみだなぁって考えてた」
「任せて!紗絵見てくれるから、思う存分料理できる!」
そう言って夕実ちゃんは、ずっと変わらない笑顔を私に向けてくれた。
夕実ちゃんはキッチンへ向かい、私たちはリビングに残る。
昔からある懐かしい人形を取り出すと、紗絵ちゃんは早速私がさっき渡したドレスを取り出して着替えてさせている。
花柄のそのドレスを人形に着せると、嬉しそうに私に見せてくれて、「瑤子ちゃんはこっち」と男の子の人形を渡された。
「今から家族ごっこだよ」
紗絵ちゃんはそう言うと、人形の家を私の前に置いた。
「はい。瑤子ちゃん、ただいまって言って」
「た、ただいま~」
男の子の人形を持って私がそう言うと、紗絵ちゃんは「おかえりなさい~」と女の子の人形を動かす。
「今日もお疲れ様。チュッ」
そう言いながら、男の子にキスをするマネをする。
「ふふっ」
これは夕実ちゃんちの日常?なんて思うとつい笑みが溢れた。
「あのね。今日はたくさんご飯作ったからね」
何て、紗絵ちゃんは続けている。
何か、幸せそうだなぁ。ちょっと羨ましい。
今の自分には無い世界。そして、想像すらした事のない、そんな日常。
ただそれを、何処か他人事のように眺める。
私には、きっとこんな未来は来ないだろうな……そう思いながら。
リビングにもいい匂いが漂い始めた頃、玄関から「ただいま~」と声が聞こえた。
「あっ!パパだ!」
紗絵ちゃんはそう言って立ち上がると、一目散に玄関へ駆け出していく。
その後を私も続いた。
すでに紗絵ちゃんは抱えられていて、大好きなパパにおかえりのチューをしていた。
さっきのはこれだったのか。
と思わず笑ってしまう。
そんな私を見て、夕実ちゃんの旦那さんで紗絵ちゃんのパパである人が不思議そうな顔でこっちを見る。
「どうした?瑤子ちゃん」
「何でもないよ~。おかえりなさい。なっちゃん!」
「ただいま~」
なっちゃん……夏希君は、背は高くて、体格は細さをマッチョと言うべきだろうか。黒髪の短髪で、精悍な顔つきのイケメンだ。
警察官をしている彼は、同級生だけど私の事を妹のように可愛がってくれて、私も兄のように慕う存在だった。
夕実ちゃんの家のマンション。
玄関先で夕実ちゃんと、そしてもうすぐ5歳になる娘の紗絵ちゃんが出迎えてくれた。
「いらっしゃ~い!」
「瑤子ちゃん!!いらっしゃい!」
笑顔の2人に癒されながら中に入り、リビングへ向かう。
ソファの前には紗絵ちゃんが遊んでいたのか、人形のセットと家が置いてあった。
「あ、これお土産。みんなで食べよ?」
「サンキュ~!」
夕実ちゃんは私の持って来たケーキの箱を受け取りながらそう言う。
そして、私はもう一つ持っていた紙袋を紗絵ちゃんに渡す。
「はい、これは紗絵ちゃんに」
紗絵ちゃんはそれを受け取り、中身を確認すると、目を輝かせて私を見上げた。
「ありがとう瑤子ちゃん!大好き~」
と飛びついて来て、可愛いなぁと抱きしめる。
「も~瑤子、気を使わなくていいのに」
お茶を運んで来た夕実ちゃんにそう言われるが、私は
「いいのいいの。紗絵ちゃんは私にとって姪っ子みたいなものだしね」
と返した。
「ねーねー瑤子ちゃん。後で一緒に遊ぼうね。貰ったお洋服着せていい?」
ショートケーキのクリームを口につけたまま、満面の笑顔で紗絵ちゃんは私に言う。
「もちろん。今日は紗絵ちゃんと遊ぶの楽しみにしてたんだぁ」
私もレアチーズケーキを口に運びながらそう答えた。
いいなぁ。子供は。無邪気で癒される。
私も、もしも元彼と上手く行ってたら、今頃こんな風に自分の子供と過ごしてたのかなぁ……なんて想像をする。
まあ、向こうの性格から言って、何処かで破綻してたかもな、とも思うけど。
今となっては別れて正解だった。お陰で色々なことを学べた。
でも、人生で一番辛かった時期を乗り越えられたのは、夕実ちゃんが支えてくれたからだ。今でも感謝しても仕切れない。
「瑤子?どうかした?」
目の前で、夕実ちゃんがぼんやりしていた私に声をかける。
「ん?夕実ちゃんのご飯楽しみだなぁって考えてた」
「任せて!紗絵見てくれるから、思う存分料理できる!」
そう言って夕実ちゃんは、ずっと変わらない笑顔を私に向けてくれた。
夕実ちゃんはキッチンへ向かい、私たちはリビングに残る。
昔からある懐かしい人形を取り出すと、紗絵ちゃんは早速私がさっき渡したドレスを取り出して着替えてさせている。
花柄のそのドレスを人形に着せると、嬉しそうに私に見せてくれて、「瑤子ちゃんはこっち」と男の子の人形を渡された。
「今から家族ごっこだよ」
紗絵ちゃんはそう言うと、人形の家を私の前に置いた。
「はい。瑤子ちゃん、ただいまって言って」
「た、ただいま~」
男の子の人形を持って私がそう言うと、紗絵ちゃんは「おかえりなさい~」と女の子の人形を動かす。
「今日もお疲れ様。チュッ」
そう言いながら、男の子にキスをするマネをする。
「ふふっ」
これは夕実ちゃんちの日常?なんて思うとつい笑みが溢れた。
「あのね。今日はたくさんご飯作ったからね」
何て、紗絵ちゃんは続けている。
何か、幸せそうだなぁ。ちょっと羨ましい。
今の自分には無い世界。そして、想像すらした事のない、そんな日常。
ただそれを、何処か他人事のように眺める。
私には、きっとこんな未来は来ないだろうな……そう思いながら。
リビングにもいい匂いが漂い始めた頃、玄関から「ただいま~」と声が聞こえた。
「あっ!パパだ!」
紗絵ちゃんはそう言って立ち上がると、一目散に玄関へ駆け出していく。
その後を私も続いた。
すでに紗絵ちゃんは抱えられていて、大好きなパパにおかえりのチューをしていた。
さっきのはこれだったのか。
と思わず笑ってしまう。
そんな私を見て、夕実ちゃんの旦那さんで紗絵ちゃんのパパである人が不思議そうな顔でこっちを見る。
「どうした?瑤子ちゃん」
「何でもないよ~。おかえりなさい。なっちゃん!」
「ただいま~」
なっちゃん……夏希君は、背は高くて、体格は細さをマッチョと言うべきだろうか。黒髪の短髪で、精悍な顔つきのイケメンだ。
警察官をしている彼は、同級生だけど私の事を妹のように可愛がってくれて、私も兄のように慕う存在だった。
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