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8月になった。
世間は夏真っ盛りで、うちの職場でも早めの休暇に入るものが出始めた。
これからはしばらく休みを取る人のフォローもあるから忙しくなるなぁ……と自席でパソコンの画面を眺めながらぼんやり思う。
司のセフレになる事を承諾して約半月。
元々スケジュールは全て把握しているのだから、その忙しさは何となく想像がつく。だから相当ストレスが溜まっているのか、私は週末毎に呼び出された。
だいたい、私以外にも相手ならいるでしょ……
そう思いながらも、私はその呼び出しに応じた。
様子がおかしかったのは、つい数日前の日曜日。
もちろん私は翌日仕事だし、「家に帰る」と言う私に色々策を講じて引き延ばされ、しまいに司は「ここから仕事行けば?」と言い出す始末。
最終的に半分切れ気味に「私はあなたと違って朝から仕事なの!いい加減にしないと、もう2度と……」まで言ったところで、司は大きく溜息を吐いてお手上げとばかりに両手を上げると「分かった。送る」と仕方ないと言った様子で言った。
何で……こんなに執着されてるんだろう?
その理由に心当たりはない。けれど、きっと私が、今まで周りにいないタイプで、きっと新鮮なんだろう。
どちらにせよ今日ニューヨークに立つはずだから、これから一月は会う事もないだろう……たぶん。
そう思いながら、仕事を片付ける。
司は仕事の時間に連絡をよこすことはない。仕事用のメールには仕事の事しか送って来ないし、個人的な連絡先は電話だけ。日曜日、それに触れる事なく私達はいつものコンビニ前で別れた。
少し……、ほんの少しだけ期待しながら1日過ごして、何もないまま終業時間が来た。私はいつものように時間通りに仕事を終えると、事務所を出た。
事務所のあるビルの、奥まった自動扉を出ると、そこから真っ直ぐに面した道路が見える。
そこに止まる、見覚えのある車種の色違いの車。そして、その横に、太陽に背を向けるように佇む背の高い男。
顔の表情までは見えないけど、お互いに誰かなのかは認識できる距離。例え向こうに別の用事があったとしても、ここで無視して過ぎ去るほど、私の性格は悪くない。
私はそんなことを思いながら、真っ直ぐにその男の元に向かった。
世間は夏真っ盛りで、うちの職場でも早めの休暇に入るものが出始めた。
これからはしばらく休みを取る人のフォローもあるから忙しくなるなぁ……と自席でパソコンの画面を眺めながらぼんやり思う。
司のセフレになる事を承諾して約半月。
元々スケジュールは全て把握しているのだから、その忙しさは何となく想像がつく。だから相当ストレスが溜まっているのか、私は週末毎に呼び出された。
だいたい、私以外にも相手ならいるでしょ……
そう思いながらも、私はその呼び出しに応じた。
様子がおかしかったのは、つい数日前の日曜日。
もちろん私は翌日仕事だし、「家に帰る」と言う私に色々策を講じて引き延ばされ、しまいに司は「ここから仕事行けば?」と言い出す始末。
最終的に半分切れ気味に「私はあなたと違って朝から仕事なの!いい加減にしないと、もう2度と……」まで言ったところで、司は大きく溜息を吐いてお手上げとばかりに両手を上げると「分かった。送る」と仕方ないと言った様子で言った。
何で……こんなに執着されてるんだろう?
その理由に心当たりはない。けれど、きっと私が、今まで周りにいないタイプで、きっと新鮮なんだろう。
どちらにせよ今日ニューヨークに立つはずだから、これから一月は会う事もないだろう……たぶん。
そう思いながら、仕事を片付ける。
司は仕事の時間に連絡をよこすことはない。仕事用のメールには仕事の事しか送って来ないし、個人的な連絡先は電話だけ。日曜日、それに触れる事なく私達はいつものコンビニ前で別れた。
少し……、ほんの少しだけ期待しながら1日過ごして、何もないまま終業時間が来た。私はいつものように時間通りに仕事を終えると、事務所を出た。
事務所のあるビルの、奥まった自動扉を出ると、そこから真っ直ぐに面した道路が見える。
そこに止まる、見覚えのある車種の色違いの車。そして、その横に、太陽に背を向けるように佇む背の高い男。
顔の表情までは見えないけど、お互いに誰かなのかは認識できる距離。例え向こうに別の用事があったとしても、ここで無視して過ぎ去るほど、私の性格は悪くない。
私はそんなことを思いながら、真っ直ぐにその男の元に向かった。
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