叔父様と私

東城

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滞在

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叔父さまの家に滞在してから、私は課題の絵の作製に取り掛かった。
絵を描いて昼寝をして絵を描いてという自堕落的な毎日が続いた。
いつも通り昼から惰眠を私はむさぼっていた。
「さやか、夕ご飯ができましたよ」と肩を揺すられて起こされた頃にはすっかり暗くなっていた。
キッチンで黙って食事をする。

カントリー風のキッチンと大きな白いテーブルは家庭的なテイストだった。向かいに座っている叔父さまはきちんとナイフとフォークを使って食事をしている。

食事のマナーから品の良さが伺える。目の前にあるサラダをじっと私は見つめる。ニース風サラダ。オリーブの実を口に含む。甘い香りと苦いような酸っぱさが口いっぱいに広がる。
美味しくない。寝すぎではっきりしない頭でひたすら口にサラダを突っ込む。


叔父さまが話しだした。
「私がなぜ離婚したか聞きたくありませんか?」
「別に」
そう答えたのに関わらず叔父さまは一人で話を始めた。
離縁されたのは叔父さまのせいだということ。
「実は私、不妊症なんですよ」
私は思わず食べてるものを噴(ふ)き出しそうになった。

年上の妻との間に子供はできなかった。
病院で検査してもらった結果、原因は叔父さまだった。
手切れ金を積まれ、離婚届に判を押した。なんだか変な話だと思ったが、そういえば叔父さまは社長令嬢と結婚したんだけ。
叔父さまの結婚式の日、私は中1だったと思う。都内の一流ホテルでの結婚式だった。

和服の似合う叔父さまは輝いて見えた。それに比べ新婦は性格のきつそうな三十過ぎのおばさんだった。
叔父さまは離婚の原因は無精子症だと信じている。

が、私の思うところ、もっと別のことが問題がったような気がする。性格の不一致とか、趣味に興じて仕事をしなかったこととか、道徳心が欠けてることとか、ちょっと妙なとことか。

子供の授からないのも、きっと神様のはからいだ。
「さやかがきてくれて嬉しかった。独りで寂しかったから」
叔父さまは私の手を握ると自分の頬に持っていった。
恋人みたいじゃないか。やめて欲しいな。
でも可哀相な人だと思った。
寂しいんだろうな。
一方的に離縁されて、こんな人里離れたところに一人住んでいるなんて。
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