おトイレにまつわる短編集

東城

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水洗伝

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香港のトイレの入り口にはババアがいた。
横の椅子には小銭が入っている籐籠が鎮座している。
70年代のカンフー映画に出てきそうな黒いチャイナ服着た小さな老婆で、営業スマイルが怖かった。

警備やトイレ掃除や、ティッシュペーパーを客に渡したりするのが主な仕事らしい。

入り口で老婆にチップを払わないとトイレに入れないのである。

なにせ自分は観光客なのでチップの相場がわからない。
ボラれるのもやだし、払うチップが少なくてケチくさい、ケツの穴が小さい奴だとババアに思われるのもシャクにさわる。
いくら払ったのかもう記憶してない。
人がきちんと管理しているだけあって、清潔に保たれて使い心地はよかった思い出がある。

パリの公衆トイレはコインを投入しないと入れない所がほとんどだった。
料金を払わないとバーや扉が開かないのである。
金払っているのに、正直掃除が行き届いているとは思えず、残念なトイレが多かった。

アメリカのトイレは、とにかく便器の位置が高い。
それにトイレの個室のドアの下のスキマが10cmぐらいあって気分的に落ち着かない。

ドイツのトイレは便座に便座ふき装置が取り付けられていて、腰を上げるとスーッと起動され便座ふきシートがUの字に回って便座を拭いてくれるのだ。
さすがベンツの国だと軽く感動を覚えた。

日本人なら「日本のトイレが一番」と誇りに思っているだろう。

しかし、我が国が誇るトイレにも不満がある。

トイレ守りがいないので不審者が入ってくる。
たまに便座がびっくりするほど熱いことがある。
掃除の人手が足りないのかトイレットペーパーがキレているときがある。

あら探しを始めると長くなりそうなので、ここらで止めておこう。

国ごとのホスピタリティーや文化を感じられるのがトイレなのである。

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