ハムスター父さん

東城

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永遠なんてない

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久志君と遊んで帰ってくると夕飯時になっていた。
自分の部屋に入り、汗に濡れたTシャツを脱ぐ。
西日の差し込む部屋はムアァと蒸し暑く、速攻でエアコンを入れて冷風に当たって涼む。
ふとバムのケージを見ると、エアコンの風に吹かれて回し車がキイキイ揺らいでいた。
気になってケージに近づく。

給水器の近くでバムがだらしない格好でうつぶせで寝ていた。とけた雪見大福みたいにぺたーんとひろがっていた。

水の交換しないとな。
台所で水を変えて、ひんやり氷水を給水器に入れる。

「ほら、氷水だよ」
ケージにセットすると、バムを指でつついた。

反応なし。
「起きてよ」
嫌な汗がどばっと僕の背中を濡らした。さっきまで暑かったのに、頭から冷水を浴びたような寒気が襲ってくる。

背中をゆすっても起きない。
「どうしたんだよ」
部屋の気温は30度を超えていたから熱中症で、死んでしまったのかも。

バムをこんな暑い部屋に残して、のんきに遊びに行ってしまった僕はなんて無責任な飼い主なんだ。
自分の馬鹿さ加減が情けなかった。
バムは、僕とお母さんのために毎日必死に頑張って生活費を稼いでくれた。
つらいときには冗談で笑わせて家の雰囲気を明るくしてくれてた。
家族の大切な一員だった。
離婚して出てってしまった父さんよりも、ずっと家族思いのハムスターだった。
バムはハムスターだけど、我が家のお父さんだ。
ぶわぁと涙が溢れる。
取り返しのつかないことをしてしまった。
僕のせいだ。
「やだよう。バム、死なないで」崩れ落ちそうになった。

「ばあ!!」バムは急に起き上がって、舌を突き出した。

ああ、生きていたんだ。ほっとした僕はへたへたと床に座り込む。


***

洗面器の水の中をスイスイ泳ぎながらバムは言う。
「さすがの俺もこの暑さにはまいったぜ。ハムスター年齢では人間の50歳だから、そうそう無理はできないな」
「本当に死にそうだったの?」
「うへへへ。実は、死んだと思わせて、おどかしてやろうと思ってな」
「もー、焦ったよ」

「いい機会だから、俺が人間だったころの話聞いてくれよ。まあ、しょぼい人生だったがな」

僕は頷いた。




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