ハムスター父さん

走れハムスター

バムは人間だったころの話はしてくれなかったが、毎日動画を撮らせてくれた。
月々、動画の広告収入が入るようになり１年が過ぎ、中学生３年の夏休みになっていた。

僕はハーゲンダッツをパクパク食べながら、タブレットでアニメを見てクーラーの効いた部屋で涼んでいる。
「受験勉強しなくていいのかよ」バムは巣穴からひょっこり顔出して言う。

「こう暑くちゃ、集中できないよ」

「クーラー入ってるじゃねーかよ」
「だるい」
だらけきって勉強する気が起きない。

広告収入で悠々と生活できるからなんて甘いことを考えてた。


「俺だって芸の練習したり動画案練ったりして金稼いでるんだから、お前はしっかり勉強しろよ」
「バムが働いてくれるから、この先も安泰だね」
「あのな、知ってるか？　ハムスターの寿命は２年ちょっとなんだぜ。つーことは、あと１年ぐらいしか生きられないんだよ。俺が死んだら、お前、どうすんの？」
うーん。でもバムは普通のハムスターじゃないから、ずっとずっと生きるような気がする。
現実を受け止められない僕がいた。

「俺が死んだら、動画もアップできないし、お前がしっかりして母さん助けないとやばいんじゃないか？」
バムは偉そうに説教を始めた。
前歯が突き出た口を必死に動かしながら、キーキーうるさい。

ハムスターのくせして生意気だ。
カッときた僕はエアコンを切って、友達の家に遊びに行くことにした。

「友達の家に遊びに行くから、じゃあね」