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翼のメール
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桐野がスマホで明日の天気のサイトを見ているとあるメールが届いた。翼からだった。
【栄さん、大ニュースです。朝日の彼女騒動で我が部は大混乱。話したいので連絡ください】
病院の廊下で周囲には誰もいない。あわててラインで連絡を入れた。
「桐野です。メール読んだよ」
「あっ、栄さん。ちーっす」
「朝日には彼女はいないはずだけど」
朝日は女に興味を持たないようにしっかり躾けてある。彼女じゃなくてただの友達じゃないのか?
「朝日の彼女が会いに来たってサッカー部の大ニュースになったんですよ。んで、部長がその人と連絡取ったんですよ。中二の時の同級生で彼女でもなんでもなかったです」翼はいささか興奮気味だった。
彼女でもなんでもないなら連絡してくるなよ。こっちは九時まで残業なんだよ。
「名前は?」
「高橋」
朝日の中学の時の同級生だ。
「その子なら知ってるよ。感じの悪い変わった子だよね」
「俺、女子はよくわからないので、変わってるか普通かは判断できないです。でも顔は可愛いかったです」
顔は整っていたけど、暗くて異常に勘が鋭い子であまり関わりたくなかった。
「たぶん暇だから来たんじゃないかな?」高橋はそういう子だ、気まぐれで行動している。
「なんかそんなこと言ってました。鹿児島市内に用事があるついでとか」
「で、新しい動画は撮った?」
「はい、じゃあ送りますねー」
動画の値段を釣り上げたいために興味を引くタイトルでメールを送ってきたんだろう。高校生のくせに侮れない人物だ。
メールで朝日の動画を送ってくれた。ホテルの和室で、またムスっとした顔をして、いじけてるのか怒ってるのか。可愛いんだから笑って欲しい。
「なんでいつも不機嫌な顔した動画を送ってくるの? 合宿っぽい動画が欲しい」
「すみません。んーと、他の人が映ってるのでもいいですか?」
「別にかまわないよ」
「じゃあ、これなんかどうですか?」
新しいメールに添付されていた動画ファイルを再生する前になんだか嫌な予感がした。
海をバックに他の男子生徒と朝日が並んで手を引っ付け合ってハートマーク作っている。
背の高いほうの生徒は、頭がよさそうなイケメン。二人ともニコニコしている。
「隣の人誰?」
「サッカー部の部長」
「イケメンだね」
「写真うつりがいいだけで、実物はそんなにイケメンじゃないですよ」
「この人、マークしてくれないか」
「長山のポジションはゴールキーパーだから、マークしてもしかたないですよ」
長山って名前なのか。憶えた。
「サッカーの話じゃなくて。朝日にちょっかい出さないか見張ってって意味だよ」
「長山は真面目だから大丈夫ですよ。部長だし」
「とにかくマークだよ。マーク」
「了解」
背後で、ナースが桐野先生と呼んでいる。あー、もうめんどくさいな。何、注射? 指示? クレーム? 誰かパニック起こしてるの? もう少し翼と話したいのに。
「仕事中だから、じゃあね」
「あのー、合宿終わったら一度会って話しませんか? お世話になってるからお礼にお土産渡したいんで。それまでに朝日の動画たくさん撮ります」
「いいよ。じゃあ鎌倉に戻ったらまた連絡してね」
「はい」
【栄さん、大ニュースです。朝日の彼女騒動で我が部は大混乱。話したいので連絡ください】
病院の廊下で周囲には誰もいない。あわててラインで連絡を入れた。
「桐野です。メール読んだよ」
「あっ、栄さん。ちーっす」
「朝日には彼女はいないはずだけど」
朝日は女に興味を持たないようにしっかり躾けてある。彼女じゃなくてただの友達じゃないのか?
「朝日の彼女が会いに来たってサッカー部の大ニュースになったんですよ。んで、部長がその人と連絡取ったんですよ。中二の時の同級生で彼女でもなんでもなかったです」翼はいささか興奮気味だった。
彼女でもなんでもないなら連絡してくるなよ。こっちは九時まで残業なんだよ。
「名前は?」
「高橋」
朝日の中学の時の同級生だ。
「その子なら知ってるよ。感じの悪い変わった子だよね」
「俺、女子はよくわからないので、変わってるか普通かは判断できないです。でも顔は可愛いかったです」
顔は整っていたけど、暗くて異常に勘が鋭い子であまり関わりたくなかった。
「たぶん暇だから来たんじゃないかな?」高橋はそういう子だ、気まぐれで行動している。
「なんかそんなこと言ってました。鹿児島市内に用事があるついでとか」
「で、新しい動画は撮った?」
「はい、じゃあ送りますねー」
動画の値段を釣り上げたいために興味を引くタイトルでメールを送ってきたんだろう。高校生のくせに侮れない人物だ。
メールで朝日の動画を送ってくれた。ホテルの和室で、またムスっとした顔をして、いじけてるのか怒ってるのか。可愛いんだから笑って欲しい。
「なんでいつも不機嫌な顔した動画を送ってくるの? 合宿っぽい動画が欲しい」
「すみません。んーと、他の人が映ってるのでもいいですか?」
「別にかまわないよ」
「じゃあ、これなんかどうですか?」
新しいメールに添付されていた動画ファイルを再生する前になんだか嫌な予感がした。
海をバックに他の男子生徒と朝日が並んで手を引っ付け合ってハートマーク作っている。
背の高いほうの生徒は、頭がよさそうなイケメン。二人ともニコニコしている。
「隣の人誰?」
「サッカー部の部長」
「イケメンだね」
「写真うつりがいいだけで、実物はそんなにイケメンじゃないですよ」
「この人、マークしてくれないか」
「長山のポジションはゴールキーパーだから、マークしてもしかたないですよ」
長山って名前なのか。憶えた。
「サッカーの話じゃなくて。朝日にちょっかい出さないか見張ってって意味だよ」
「長山は真面目だから大丈夫ですよ。部長だし」
「とにかくマークだよ。マーク」
「了解」
背後で、ナースが桐野先生と呼んでいる。あー、もうめんどくさいな。何、注射? 指示? クレーム? 誰かパニック起こしてるの? もう少し翼と話したいのに。
「仕事中だから、じゃあね」
「あのー、合宿終わったら一度会って話しませんか? お世話になってるからお礼にお土産渡したいんで。それまでに朝日の動画たくさん撮ります」
「いいよ。じゃあ鎌倉に戻ったらまた連絡してね」
「はい」
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