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第3話 シリーズものでどれが一番面白いかという話題は荒れやすい
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「なぁ、霞は仮面ライダーとかよく見てるのか?」
バイクに乗車中、俺は霞に話し掛けた。
霞の言動を見ていて、少なくとも仮面ライダーのファンであることは分かる。
「ああ。見てるぞ。私の一番好きな作品はオー〇だ。最終回が泣ける」
霞が泣くところとか、まるで想像付かないな。
しかし、オー〇の最終回が泣けるという評価は激しく同意である。
「良いよな、仮面ライダーオー〇。その前の年に放送されたダ〇ルも好きだけど」
「ああ、ダ〇ルもかなり面白かったな。この二つが私の中で平成ライダーの二大巨頭だ。あと、エ〇ゼ〇ドもかなり面白かったな」
仮面ライダー談義で盛り上がっているうちにアパートの前に到着した。
俺達はバイクから降り、自分達の部屋がある二階まで移動する。
「和人、君とは話が合いそうだ。良かったら、少し私の部屋に来ないか?」
「へ!? な、何でだよ……?」
「見せたいものがあるんだ。きっと気に入ってくれると思う」
最初、冗談を言っているのかと思ったが、どうやら本気で言っているらしい。
「じゃ、じゃあ……少しだけ」
霞はズボンのポケットから鍵を取り出し、202号室の鍵を開ける。
扉を開け、「入ってくれ」と俺を促す。
「お、お邪魔します……」
女性の部屋に入るのは何年ぶりだろうか。
霞はリビング内にある電気のスイッチを押し、部屋の明かりを点けた。
部屋の間取りは俺の部屋と同じであるが、部屋に置いてあるテーブルや机には大量の本が積んであった。
医療に関する本や特撮に関する本、中には大学の教科書まであって、積んでいる本のジャンルがてんでバラバラである。
「それで……霞、見せたいものっていうのは何なんだ?」
「こっちに来てくれ」
霞は部屋の奥にある押し入れの方へ移動し、引き戸を開けた。
「これだ、見てくれ」
俺は押し入れの中を覗き込む。
それは初代仮面ライダーのフィギアでディスプレイボックスの中に入っていた。
フィギアのサイズは目視1/6スケールほどで、かなり高級そうである。
しかし、ディスプレイボックスの方は大分埃が被っていた。
「すごいな……これ、かなり高かっただろう?」
「恐らくな。小さい頃、父が私に買ってくれたんだ」
女児にこんな大きいフィギアを買い与えるなんて、随分と変わった父親だな。
俺も親から戦隊や仮面ライダーの玩具を買ってもらった経験はあるが、せいぜい二、三千円ほどの廉価版である。
「そ、そうか……霞の父さんは近くに住んでいるのか?」
「いや、私が大学に進学するときにどこかに消えてしまった。今はどこで何をしているのか分からない」
かなり複雑な事情を霞は顔色一つ変えずに伝える。
これ以上、家庭のことを聞くのは野暮だろう。
「すまない、和人。昭和ライダーの方はあまり興味無かっただろうか」
「へ!? いや。そういう訳じゃ……」
「平成ライダーやスーパー戦隊のフィギアもあるから存分に鑑賞すると良い」
部屋の中にあるフィギアを見せてもらった後、霞は某仮面ライダーの映画を見るというので、一緒に鑑賞することにした。
俺の部屋にあるテレビよりかなりサイズが大きくて、羨ましいと思った。
波しぶきが舞い上がる例の崖が映るオープニングが流れ、物語が始まる。
本編の方は視ているが、映画の方は初めて見る。
「そういえば、和人も大学生なのか?」
映画の視聴中に霞が話し掛けてきた。
今更ながら気づいたのだが、霞に対して全く自己紹介をしていなかった。
「うん。俺は中王大学に通っているんだ。そういえば霞って、俺の名前と年齢を最初から知っていたよな?」
「ああ、実は手術をする前に運転免許証を見させてもらった。勝手なことをしてすみなかったな」
なるほどな、そういうことか。
運転免許証は去年、取得したのだが、取得してからは一度も車に乗っていない。
今ではもっぱら身分証明書として活用している。
「いや、別にそれは良いんだけど……ちなみに霞は今、何年生なんだ?」
「三年だ。授業やら病院の手伝いやらで忙しくてな。帰ってくるのが大体、夜遅くなんだ。大学で寝泊まりすることもよくある」
医大生は忙しいと聞いたことがあるが、どうやらそれは本当なようである。
一方、俺は文系の学部に通っており、バイトと大学の授業以外は比較自由な時間が多かった。
「そっか。同学年なんだな。霞はさ、病院の手伝いはいつからやってるんだ?」
「去年からだ。鈴鹿さんに誘われてな。手術のことを色々と教わったんだ。ラカサのことも鈴鹿さんから聞いた」
怪人化を引き起こすという未知のウィルス……それを学生である霞に教える辺り、鈴鹿さんはかなり霞のことを信頼しているようである。
「病院の人達はラカサのこと、知ってるのか?」
「一部の人間には伝えられている。だが、基本的にラカサは秘匿すべき存在だ。和人も他の人には話さないようにな」
「わ、分かった……」
映画は九十分ほどで終了した。
平成ライダー映画史上、最高傑作と言われているだけあって、めちゃくちゃ面白かった。
特に主人公の正体が発覚するシーンと最終フォームに変身するシーン、ここが物凄く胸に迫った。
「いやぁ、面白かったな。夜勤の疲れも吹き飛ぶレベルだった」
「そうだな。けど、夜勤明けなら無理しないでゆっくり休めば良かったのに」
「まぁな。だが、和人。君と一緒に映画を観ることが出来て光栄だ。私の周りに特撮好きの人間は鈴鹿さんや親友を除いて、誰もいないからな」
「鈴鹿さん……特撮好きなのか」
何だか意外である。
完全なイメージであるが、あの人はお酒を嗜みながら月9を視ているイメージがあった。
「ああ。鈴鹿さんの推しはブ〇ックサンとアマ〇ンズらしい」
「そ、そうか……」
確かどっちもネット配信サービスでやってる作品だよな。
気になりつつもまだ見たことが無かった。
「ところで和人。来週の月曜日は何か予定はあるだろうか?」
「いや、特には無いけど……」
「そうか。君に合わせたい人物がいる。変身ウォッチの開発に協力してくれた私の親友だ」
「え、変身ウォッチを?」
変身ウォッチはてっきり霞一人で開発したものと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ああ。変身ウォッチをアップデートするため、来週の月曜日にその親友のところに行く予定だ。和人も付いてきてもらえないだろうか」
この天才少女に協力したという人物がどんな人なのか、俺は物凄く気になった。
「分かった……会わせてもらうよ。その人に」
バイクに乗車中、俺は霞に話し掛けた。
霞の言動を見ていて、少なくとも仮面ライダーのファンであることは分かる。
「ああ。見てるぞ。私の一番好きな作品はオー〇だ。最終回が泣ける」
霞が泣くところとか、まるで想像付かないな。
しかし、オー〇の最終回が泣けるという評価は激しく同意である。
「良いよな、仮面ライダーオー〇。その前の年に放送されたダ〇ルも好きだけど」
「ああ、ダ〇ルもかなり面白かったな。この二つが私の中で平成ライダーの二大巨頭だ。あと、エ〇ゼ〇ドもかなり面白かったな」
仮面ライダー談義で盛り上がっているうちにアパートの前に到着した。
俺達はバイクから降り、自分達の部屋がある二階まで移動する。
「和人、君とは話が合いそうだ。良かったら、少し私の部屋に来ないか?」
「へ!? な、何でだよ……?」
「見せたいものがあるんだ。きっと気に入ってくれると思う」
最初、冗談を言っているのかと思ったが、どうやら本気で言っているらしい。
「じゃ、じゃあ……少しだけ」
霞はズボンのポケットから鍵を取り出し、202号室の鍵を開ける。
扉を開け、「入ってくれ」と俺を促す。
「お、お邪魔します……」
女性の部屋に入るのは何年ぶりだろうか。
霞はリビング内にある電気のスイッチを押し、部屋の明かりを点けた。
部屋の間取りは俺の部屋と同じであるが、部屋に置いてあるテーブルや机には大量の本が積んであった。
医療に関する本や特撮に関する本、中には大学の教科書まであって、積んでいる本のジャンルがてんでバラバラである。
「それで……霞、見せたいものっていうのは何なんだ?」
「こっちに来てくれ」
霞は部屋の奥にある押し入れの方へ移動し、引き戸を開けた。
「これだ、見てくれ」
俺は押し入れの中を覗き込む。
それは初代仮面ライダーのフィギアでディスプレイボックスの中に入っていた。
フィギアのサイズは目視1/6スケールほどで、かなり高級そうである。
しかし、ディスプレイボックスの方は大分埃が被っていた。
「すごいな……これ、かなり高かっただろう?」
「恐らくな。小さい頃、父が私に買ってくれたんだ」
女児にこんな大きいフィギアを買い与えるなんて、随分と変わった父親だな。
俺も親から戦隊や仮面ライダーの玩具を買ってもらった経験はあるが、せいぜい二、三千円ほどの廉価版である。
「そ、そうか……霞の父さんは近くに住んでいるのか?」
「いや、私が大学に進学するときにどこかに消えてしまった。今はどこで何をしているのか分からない」
かなり複雑な事情を霞は顔色一つ変えずに伝える。
これ以上、家庭のことを聞くのは野暮だろう。
「すまない、和人。昭和ライダーの方はあまり興味無かっただろうか」
「へ!? いや。そういう訳じゃ……」
「平成ライダーやスーパー戦隊のフィギアもあるから存分に鑑賞すると良い」
部屋の中にあるフィギアを見せてもらった後、霞は某仮面ライダーの映画を見るというので、一緒に鑑賞することにした。
俺の部屋にあるテレビよりかなりサイズが大きくて、羨ましいと思った。
波しぶきが舞い上がる例の崖が映るオープニングが流れ、物語が始まる。
本編の方は視ているが、映画の方は初めて見る。
「そういえば、和人も大学生なのか?」
映画の視聴中に霞が話し掛けてきた。
今更ながら気づいたのだが、霞に対して全く自己紹介をしていなかった。
「うん。俺は中王大学に通っているんだ。そういえば霞って、俺の名前と年齢を最初から知っていたよな?」
「ああ、実は手術をする前に運転免許証を見させてもらった。勝手なことをしてすみなかったな」
なるほどな、そういうことか。
運転免許証は去年、取得したのだが、取得してからは一度も車に乗っていない。
今ではもっぱら身分証明書として活用している。
「いや、別にそれは良いんだけど……ちなみに霞は今、何年生なんだ?」
「三年だ。授業やら病院の手伝いやらで忙しくてな。帰ってくるのが大体、夜遅くなんだ。大学で寝泊まりすることもよくある」
医大生は忙しいと聞いたことがあるが、どうやらそれは本当なようである。
一方、俺は文系の学部に通っており、バイトと大学の授業以外は比較自由な時間が多かった。
「そっか。同学年なんだな。霞はさ、病院の手伝いはいつからやってるんだ?」
「去年からだ。鈴鹿さんに誘われてな。手術のことを色々と教わったんだ。ラカサのことも鈴鹿さんから聞いた」
怪人化を引き起こすという未知のウィルス……それを学生である霞に教える辺り、鈴鹿さんはかなり霞のことを信頼しているようである。
「病院の人達はラカサのこと、知ってるのか?」
「一部の人間には伝えられている。だが、基本的にラカサは秘匿すべき存在だ。和人も他の人には話さないようにな」
「わ、分かった……」
映画は九十分ほどで終了した。
平成ライダー映画史上、最高傑作と言われているだけあって、めちゃくちゃ面白かった。
特に主人公の正体が発覚するシーンと最終フォームに変身するシーン、ここが物凄く胸に迫った。
「いやぁ、面白かったな。夜勤の疲れも吹き飛ぶレベルだった」
「そうだな。けど、夜勤明けなら無理しないでゆっくり休めば良かったのに」
「まぁな。だが、和人。君と一緒に映画を観ることが出来て光栄だ。私の周りに特撮好きの人間は鈴鹿さんや親友を除いて、誰もいないからな」
「鈴鹿さん……特撮好きなのか」
何だか意外である。
完全なイメージであるが、あの人はお酒を嗜みながら月9を視ているイメージがあった。
「ああ。鈴鹿さんの推しはブ〇ックサンとアマ〇ンズらしい」
「そ、そうか……」
確かどっちもネット配信サービスでやってる作品だよな。
気になりつつもまだ見たことが無かった。
「ところで和人。来週の月曜日は何か予定はあるだろうか?」
「いや、特には無いけど……」
「そうか。君に合わせたい人物がいる。変身ウォッチの開発に協力してくれた私の親友だ」
「え、変身ウォッチを?」
変身ウォッチはてっきり霞一人で開発したものと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ああ。変身ウォッチをアップデートするため、来週の月曜日にその親友のところに行く予定だ。和人も付いてきてもらえないだろうか」
この天才少女に協力したという人物がどんな人なのか、俺は物凄く気になった。
「分かった……会わせてもらうよ。その人に」
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