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ミウ?対アルバート②

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「フッフッフッ、この程度の氷で動きを封じ込めたつまりですかぁ? 簡単に抜けでますぅ~。」

ミウが足についた氷をものともせずに、足で氷を破壊して、ジャンプした。

そのまま回転しながらアルバートに突っ込む。

腹部に命中して彼が吹っ飛ぶ。ミウが回転しながら綺麗に着地する。

ふっ、楽しそうにミウが余裕のある笑みを浮かべる。

「ぐっ、さすがだな。しかし俺の氷は再生する。一度触れたら、体の全てを凍らせるまで何をしようが、永遠に氷が現れるぞ。」

アルバートが地面に這いつくばりながら、口から血を流しながら言った。


まるで呪いだな。ミウの体から無限に氷が生えてくるのか。


「ええっ? なんですかそれ! なんでそんなこと出来るんですか? 人間キノコじゃないですか私。」


「ハハハ、人間には理解できまい。氷とは、水が固体になるときに形成されるものだが、一気圧のもとでは摂氏0度以下でしか固まらない。それを、俺の魔法とスキルで完全に制御し、自在に生み出すのだ!


「そして、人間の身体は60%が水でできている。つまり、お前の体内の水分が氷となり、外部から押し寄せる。逃れることは決してできないのだ!」

力に手を入れて、アルバートが長々と説明をしていた。

「それだと、そのうち水がなくなって脱水症状で死にますぅ~。」

口を尖らせてミウが手を上下に動かす。
 
「フッフッ…そうなる前に氷漬けになるさ。」

彼が口を人差し指で隠しながら言う。

「嘘つきましたね! 永遠に氷が生えてくる訳じゃないですん。」

人差し指をアルバートに指して、指摘しつつ非難した。

「細かい奴だな。揚げ足取りやがって、早く死ね。」

吐き捨てるように彼は言う。

「死ぬのはあなたですぅ!」

負けずとミウが言い返す。


「アキラ~暇だー構えぇ~。」

レイナが俺の頬に人差し指を押し付ける。

「なんだよレイナ、今ミウが戦闘中だぞ?」

「どうせミウが勝つでしょ。ただの魔法使いなら、問題なし。暇! なんもやることない。」

「戦い見とけ。」

「あの魔族、かなりイケメンよね?」

「まぁな…顔かよ! しかも敵褒めてるし!」

俺は呆れながら、軽く息を吐く。

「ふふ、アキラの真似。さっきのセレーネって人見てたでしょ? 中々の美人よね。」

しつこくレイナが先程の件を持ち出す。

「見てねーって。」

確かに美人ではあったが、戦闘中だ。そんなにジロジロは見ない。

「ねー私とどっちが美人だと思う?」

誰か助けてくれ。なんて事聞くんだよ、天然かこの子。


「戦闘中にイチャつく。これぞ異世界の醍醐味よね?」

「イチャついてるのか? これ?」

レイナに聞き返しつつ、戦闘を見ることに立ち返った。


ミウの体が凍ってきた。まずいと俺は思ったがらそれは杞憂だった。

ミウは自分の体にできた氷をアルバートに向かって投げつけた。

「当たるものか!」
アルバートはヒョロリと身をかわす。
だが、それはミウの策略だった。

初めからミウは、アルバートに当てるつもりで投げたのではなかった。

地面に生えている水に、濡れた草を凍らせるためであった。

アルバートの周りが氷で埋め尽くされる。

「フッ、だろうな…俺を凍らせるつもりだったろうが残念だが、俺は凍らない!」

強気にミウを嘲笑ったが、ミウの氷を避けるうち、その地面の氷に彼は足を取られた。


彼はすぐ様立ち上がり、ミウの氷を避けようと身構えた。

だがその時、ミウが今ですぅ! と叫んだ。

アルバートが最早氷を避けるのは不可能と判断して、顔に腕を守るようにクロスした。

しかし、ミウは氷を投げなかった。


「10倍ブーストのフレイムバースト!」

カノンが遠距離から魔法を放ったのだ。

アルバートの体が火の槍にも似た魔法で刺し貫かれた。


「ばっ…ばかな。」

「やったですぅ~。」

ミウが駆け寄りトドメを刺さそうと近寄って行った。

「き…汚い真似を! お前と俺の一騎打ちの戦いだったはず…だ。」

「そんなのあなたが勝手に決めたことですぅ。殺し合いに汚いもクソも無いですん。魔族の幹部が人間相手に一騎打ちする方が汚いですん。」

「ふざけるなぁ! 人間めぇー!」

「さぁ死ぬですぅ! 来世は、人間の狡賢さをもっと勉強して下さいですぅ。」


俺はサッと手を出し、ミウを止めて、少しアルバートと話をしたいと伝えた。

私が氷になると言われて、俺はレイナに治してもらえと言った。

「どうして村民の人達に、ゴブリンを使って苦しめてたんだ?」

「ふっ、それを聞いてどうする?」
アルバートは目を伏せて、俺に視線を合わせた。

俺が言葉を発する前に彼は続けて言った。

「…まぁいい死ぬ前にお喋りするのも悪く無いか、人間相手ってのは癪だが…俺と同じ苦しみを味合わせてやりたいと…思ったのさ。」

同じ苦しみを与える? 彼の言葉を繰り返して言う。

「ああ、俺の目の前で家族が殺された。村の奴らがやったんだ。魔族に襲われてるから、来てくれと…だがそれは罠だった。」

頼りにされていたのか? だが、呼び付けたのは罠だと彼は言う。

「家に閉じ込めて、魔法で火炙りさ。俺だけ氷の魔法を使えて運良く生きていたって話さ。」

俺は彼の境遇に目にが熱くなるのを感じた。
俯き加減に瞼を閉じたり、開けたりした。

「分かった。なら俺がアルバートを苦しめてたやつに説教してやる。だが、他の関係ない村民は許してやってくれないか?


「ふ…そいつらはもう既に俺が葬ったさ。他の村民も同罪とは思わないさ。そう思っていたら、村ごとなくしていた。」

「なら何故今も苦しめてるんだ?」

「そうしなければ俺のこの憎しみはどこへやれば良い?」

「知らないですぅ! どんな理由があろうと、私たちを殺そうとした罪は死罪ですん。」

「ミウ! ちょっと冷酷過ぎないか? 確かにそれは許せない事だけど、でも簡単に知らないと切り捨てるのはどうかと。」


「むむ、それは…私が親嫌いだからかもですん。アキラに冷酷って言われると私もちょっと傷つきますぅ。」

俺はミウにごめんと言って頭をポンと叩いて、レイナにアルバートの回復を頼んだ。

ミウに謝ったのは、俺たち仲間の危険を考えてのこともあるだろうと思ったからだ。

そしてアルバートを回復するなんてとミウに言われそうだが、それでも彼をこのまま死なせるのは、胸が痛む。

「アキラの行動は信じられないですぅー! 敵を回復するなんて、私があいつに殺されたら化けて出ますん。」

「いや、お化けにはなれないよ。死んだら人間終わり。脳みそないもん。」

「寄生虫に転生された人たちがいるこの異世界で、お化けになる…それはあり得ますん。」

「うるさいな、仲間の金盗んだやつにあーだこーだ言われたくないな。」


「そんな昔の話をいつまでもしつこいですぅ~!」


「あのな~、異世界だから許したけど、現実世界なら警察に突き出してるぞ?」

「アキラはそんなことしないですん。現実世界なら、一緒に謝ってくれる男ですん。」

チッ、上手いこと言うなコイツは。
俺は思わず舌打ちをした。

「ふぅ、せっかく倒したのにね…ミウが怒るのも分かるわ。レイナもアキラの言いなりになりすぎよ?」


「私はアキラの言うことに従うけど、言いなりじゃないからね。
彼の気持ちを察してるのと、イケメン魔族を救うのは当然。」


「やれやれだわ。はぁ~」


「カノンだけはまともですぅ。遊び人は戦闘中遊ぶに飽き足らず、敵を回復もしますん。足を引っ張るのが得意ですぅ~。」


「くっそ~言いたい放題言いやがって!」

俺はセレーネを倒したと、ミウに強く反論した。

それは分かってるけれど、回復したのはまた別の話だと言われた。

回復が終わり、アルバートが立ち上がり、すぐに俺たちと距離を取って、恩に感じない、俺を回復するなど馬鹿なことだと言われた。

今度は俺とタイマンしよう。それで決着をつける。それまで人を殺めるなよ。釘を刺した。

彼の表情が一瞬緩んだのを俺は見逃さないかった。立ち去った、アルバート

「どうして彼を信じるんですぅ?」

「彼の澄んだ目を見たろう? 嘘をついてる目には見えなかった。

見てないですぅ~! 死んだ魚の目にしか見えないですん。

おい、人が真剣に言ってるの! 何魚の目って。信じられない。


むむぅ。あの目が澄んだように見えたのは…

見えたのはなんだよ!

幻術魔法を使ったのかも!

…はぁ、そんなわけあるかぁ! 君の目は腐っている。

腐ってたら目が見えないですぅ。
頭が腐ってるからそんなこと言うんですん。


腐ってて悪かったな。性格が腐り切ったミウよりマシだと思うがね。

「腹たちますぅ~。腐ってないですん。性格が清い川のように綺麗なのですん。」

「ふっ、笑せんなよ、ドブ川だろ?」

「キイっ!」

「なんだよ? ショッカーかよ?」

「古っ! やっぱり腐ってますね。」

そんな古くねーよと思いつつ、実際の叫び声はイィーだったかなと、首を捻った。

「2人とも~村に帰るよ~。」

カノンが場を収めるように、リーダーシップを発揮した。

俺はカノンはやはり大人だなと感心した。お子様の相手してるのだなと、苦笑した。

「はいですぅ~そうしますん。子供の相手で疲れました。」

はっ…ミウも同じ事を考えていた…同レベルだという軽くショックを受けた。

俺もカノンに従い村に帰りながら、その後もミウとボソボソ言い合っていた。

「ちょっと、みんな! 私のこと忘れてませんか?」

レイナの寂しそうな声が聞こえて、思わずその場で爆笑してしまった。

カノンはレイナがしっかりしてるから、人数に入れなかったんだろう。けど、忘れられてるというギャップに俺は笑ってしまったのだ。


みんなの笑い声が響く中、セレーネがポケットに入ってたことを思い出し、本当に忘れていたのは…そのことになお爆笑し、俺たちは和やかな雰囲気で村への帰路についた。
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