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聖女追放2
しおりを挟む国から出ていけ? ……そう仰るのならそういたしましょう。
王子に退場宣言をされた私は、注目を集める中、何も言わずスカートの端をつまみ、小さく一礼しました。
今は亡き前聖女のババ様に素質を見出され、ここまで育てくださった恩に報いるため、私は自分なりに聖女としての役目をまっとうしてきたつもりでした。
大きな役目は、離宮の地下室から膨大な魔力を地脈を通じて全国に送り、国境の守護結界を作動させることです。
これによって、魔獣や魔物の被害を防ぎ、外敵の侵入を阻んでいました。
他にも、全国を回り難病を治癒したり、合間を縫ってお薬を調合したり、と医療面での務めも存在します。
こういった務めは、この国では私にしかできないことなのだと使命感に駆られることもありました。
けど、ヴィンセント王子との婚約が決まってからは、やれ聖女らしくしろ、だの、婚約者らしく振る舞え、綺麗にしろ、だの。
『〇〇らしくしろ』ばかり。
もううんざりです。
ババ様ごめんなさい。シルヴィは、これより国を出ます。
……そして、二度と帰りません。
聖女も婚約者も、結構ブラックな務めですから、これからその任に就かれるであろうマリアン様には、頑張っていただきたいところです。
けど……王子との結婚って何がそんなにいいんです? 王族として、妻として、王妃として、また『らしくしろ』と言われるんです、きっと。
王子との婚約は、国民のみんなを思えばこそのものだった。
聖女と時期国王となる第一王子との婚約……。
明るい話題に、国民のみんなが喜んでくれるだろうと。
でも、それもここまで。
こんな窮屈な世界、こっちからごめんです。
私は扉の前で会場を振り返り、マリアンのうすら笑いに飛びっきりの笑顔を返しました。
「お世話になりました。みなさんお元気で」
婚約者も、聖女も、正直しんどかったんです。休みなんてものはないですし。
これからは朝はずっと眠っててもいいんです、誰も起こしに来ないのですから。
夜更かしだって、食べ物だって、自由です。
私は踵を返し、ヴィンセント王子とべったりのマリアンに背を向けて晩餐会場をあとにしました。
突然ですが、この国では、戦いなどで実用的な魔法を実戦魔法と呼び、前者より弱く生活する上で必要な魔法を生活魔法と呼んでいます。
聖女が魔力を送って守護結界を作動させた際に、どうやら副次効果として、実戦魔法の才能がない方もそれを使えるようになるそうです。
それを公表してしまうと混乱が生じるため、聖女と一部の人間以外にその情報は伏されていると聞きます。
ですが、真の聖女様がいますから何も問題はないでしょう。
ババ様曰く、後任を見つけるのも務めのひとつらしいので、私からすれば、マリアンは一石三鳥の方だったのです。友達になりたい人だとは思いませんけどね。
では、晴れて自由になったということで、外国へ向かいましょう!
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