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14.ネッドさんの護衛
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早朝に門前に行くと、荷馬車を引いたネッドさんがいた。
「ネッドさん!おはようございます。今回は指名依頼ありがとうございます。必ずお護りしますので、しばらくの間よろしくお願いします」
「おはよう!いやぁ、急な依頼ですまなかったね。ちょっと知り合いが早急に頼みたいと言ってきたものだから急な依頼になっちまったけど、依頼受けてくれて助かったよ。ありがとな。俺の方こそ、よろしく頼むよ。それじゃ、早速出発するか」
「そうですね。よろしくお願いします」
お互いに挨拶はそこそこに済ませて、ネッドさんが座っている御者席の隣に座る。俺が座ったのを確認すると、ネッドさんは馬の手網を引いて荷馬車を発車させた。
門を出たところで、ネッドさんに断りを入れてから荷馬車全体に魔法で結界を張る。見た目は何も変わっていないように見えるが、目には見えない透明な膜の様なものがネッドさんや荷馬車を覆っている。これがあれば大抵の攻撃は防ぐことができる。
ネッドさんにも同じく結界について説明する。
「そんな魔法があるとは……さすがだな。最初に会った時には分からなかったがまさか君が噂の"ユヅル"だと知った時は驚いた。指名依頼してくれって言ってたからそれなりにランクは高いんだろうなと思ったけど、Sだとはな。こうして縁を結べたんだから、あの時車輪が落ちてよかったよ!」
そう言って、ネッドさんは豪快に笑った。
確かにあの時は簡単に自己紹介しただけで、冒険者ランクとか詳しいことは何も話していなかった。驚かせてしまったのは申し訳ない。
それにしても噂か……。久しぶりに会う人皆に言われるけど、一体どんな噂をされているのか。変なものでないことを祈るばかりだ。
隣街とはいえ、それなりに距離があるため荷馬車で行くとなると約3日程はかかる。荷馬車を引く馬のために休憩はしつつもあまり同じ場所に長居はしないよう日中のほとんどは荷馬車の上にいた。
魔物が出ることもだが、1番は賊を警戒しているためだ。
常に警戒しているとはいえ、休憩中はどうしても気が抜けそうになってしまう。賊はそんな油断している時を狙ってくるのが多い。
だから、ネッドさんと相談して、休憩はこまめにとる分時間は短くし、あまり長居はせずになるべく荷馬車上で過ごすことにした。結界を張ってるとはいえ、用心するに越したことはない。
警戒しているとはいえ、魔物は出てくるので魔法を使って倒すことは何度かあった。それ以外は特に何もなく、ネッドさんと他愛のない話をしながら移動していた。
ただ、どんなに警戒していても睡眠をとらずに3日を過ごすとなると流石に俺でもきつい。
夜はネッドさんには通常通りに休んで貰い、俺は野営場所の範囲を昼間よりも強い結界で覆い魔物避けの香を炊いて、もし自分達以外の何者かが近づいて来た時にはすぐ分かるよう特殊な魔法を自身にかけて夜を過ごした。もちろん、短時間ではあるけど俺も睡眠はきちんととった。
そうして過ごしている内に街を出て3日目を迎えた。今日まで賊に遭遇することは1度もなかった。
今日中にはリエゾンに着く予定だ。それでもまだ油断はできない。
朝、休憩地点を出発し1時間ほど経ったところで、道の前方に何か影のようなものが見えた。まだ遠くてはっきりとは見えないが、確かに何かがある。
索敵魔法を使ってみるが、どうやら敵などではないようだ。
「ネッドさん。まだ遠いですが前方に何かあります」
「何?敵か?」
「いえ、魔物や賊とかではなさそうです」
前に進むしかないため、2人で周囲を警戒しつつ慎重に近づいた。
ある程度近づくと影の正体が分かった。
「これは⋯⋯」
遠くから見えた影の正体は、馬車だった。どうやら、何者かに襲われたのか大きめの馬車が壊れた状態で置いてあった。
片方の車輪が外れて斜めに倒れている。馬車の中を見てみるが何もなく、あったのは荒らされたような跡と壁や床等の広範囲に赤黒い血痕のようなもの。
馬車は一見荷馬車のようにも見えるが、何か違和感を覚える。荷馬車にしては周りの装飾が豪華に見えるし、人が何人も入りそうな大きさだ。
不審に思っていると、ネッドさんが呟いた。
「奴隷商人の馬車だな」
それを聞いて納得がいった。奴隷商人ならば馬車が豪華で大きいのも理解できる。
「きっと賊に襲われたんだろうな」
「そうですね⋯でも、血痕はありましたが誰もいないってことは賊に襲われた後、俺達が来る前にも誰かが見つけて回収していったのでしょうね」
「そうだな。多分冒険者ギルドか衛兵だと思うが⋯」
ただ、誰かが俺達の前に見つけて回収したとはいえ、血痕等を見てまだそう時間は経っていないようにみえる。
馬車の周囲を確認してみたが、これといったものは何もなかったので、詳しいことはリエゾンに着いたら分かるだろうと考え、ネッドさんと共にその場を後にした。
「ネッドさん!おはようございます。今回は指名依頼ありがとうございます。必ずお護りしますので、しばらくの間よろしくお願いします」
「おはよう!いやぁ、急な依頼ですまなかったね。ちょっと知り合いが早急に頼みたいと言ってきたものだから急な依頼になっちまったけど、依頼受けてくれて助かったよ。ありがとな。俺の方こそ、よろしく頼むよ。それじゃ、早速出発するか」
「そうですね。よろしくお願いします」
お互いに挨拶はそこそこに済ませて、ネッドさんが座っている御者席の隣に座る。俺が座ったのを確認すると、ネッドさんは馬の手網を引いて荷馬車を発車させた。
門を出たところで、ネッドさんに断りを入れてから荷馬車全体に魔法で結界を張る。見た目は何も変わっていないように見えるが、目には見えない透明な膜の様なものがネッドさんや荷馬車を覆っている。これがあれば大抵の攻撃は防ぐことができる。
ネッドさんにも同じく結界について説明する。
「そんな魔法があるとは……さすがだな。最初に会った時には分からなかったがまさか君が噂の"ユヅル"だと知った時は驚いた。指名依頼してくれって言ってたからそれなりにランクは高いんだろうなと思ったけど、Sだとはな。こうして縁を結べたんだから、あの時車輪が落ちてよかったよ!」
そう言って、ネッドさんは豪快に笑った。
確かにあの時は簡単に自己紹介しただけで、冒険者ランクとか詳しいことは何も話していなかった。驚かせてしまったのは申し訳ない。
それにしても噂か……。久しぶりに会う人皆に言われるけど、一体どんな噂をされているのか。変なものでないことを祈るばかりだ。
隣街とはいえ、それなりに距離があるため荷馬車で行くとなると約3日程はかかる。荷馬車を引く馬のために休憩はしつつもあまり同じ場所に長居はしないよう日中のほとんどは荷馬車の上にいた。
魔物が出ることもだが、1番は賊を警戒しているためだ。
常に警戒しているとはいえ、休憩中はどうしても気が抜けそうになってしまう。賊はそんな油断している時を狙ってくるのが多い。
だから、ネッドさんと相談して、休憩はこまめにとる分時間は短くし、あまり長居はせずになるべく荷馬車上で過ごすことにした。結界を張ってるとはいえ、用心するに越したことはない。
警戒しているとはいえ、魔物は出てくるので魔法を使って倒すことは何度かあった。それ以外は特に何もなく、ネッドさんと他愛のない話をしながら移動していた。
ただ、どんなに警戒していても睡眠をとらずに3日を過ごすとなると流石に俺でもきつい。
夜はネッドさんには通常通りに休んで貰い、俺は野営場所の範囲を昼間よりも強い結界で覆い魔物避けの香を炊いて、もし自分達以外の何者かが近づいて来た時にはすぐ分かるよう特殊な魔法を自身にかけて夜を過ごした。もちろん、短時間ではあるけど俺も睡眠はきちんととった。
そうして過ごしている内に街を出て3日目を迎えた。今日まで賊に遭遇することは1度もなかった。
今日中にはリエゾンに着く予定だ。それでもまだ油断はできない。
朝、休憩地点を出発し1時間ほど経ったところで、道の前方に何か影のようなものが見えた。まだ遠くてはっきりとは見えないが、確かに何かがある。
索敵魔法を使ってみるが、どうやら敵などではないようだ。
「ネッドさん。まだ遠いですが前方に何かあります」
「何?敵か?」
「いえ、魔物や賊とかではなさそうです」
前に進むしかないため、2人で周囲を警戒しつつ慎重に近づいた。
ある程度近づくと影の正体が分かった。
「これは⋯⋯」
遠くから見えた影の正体は、馬車だった。どうやら、何者かに襲われたのか大きめの馬車が壊れた状態で置いてあった。
片方の車輪が外れて斜めに倒れている。馬車の中を見てみるが何もなく、あったのは荒らされたような跡と壁や床等の広範囲に赤黒い血痕のようなもの。
馬車は一見荷馬車のようにも見えるが、何か違和感を覚える。荷馬車にしては周りの装飾が豪華に見えるし、人が何人も入りそうな大きさだ。
不審に思っていると、ネッドさんが呟いた。
「奴隷商人の馬車だな」
それを聞いて納得がいった。奴隷商人ならば馬車が豪華で大きいのも理解できる。
「きっと賊に襲われたんだろうな」
「そうですね⋯でも、血痕はありましたが誰もいないってことは賊に襲われた後、俺達が来る前にも誰かが見つけて回収していったのでしょうね」
「そうだな。多分冒険者ギルドか衛兵だと思うが⋯」
ただ、誰かが俺達の前に見つけて回収したとはいえ、血痕等を見てまだそう時間は経っていないようにみえる。
馬車の周囲を確認してみたが、これといったものは何もなかったので、詳しいことはリエゾンに着いたら分かるだろうと考え、ネッドさんと共にその場を後にした。
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