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「今日のあなたは清楚なご令嬢に見えました。しかしマリアン嬢は胸も露わなドレスで色香をふりまき、華やか並ぶ男たちを喜ばせて従えていますから。これだと少し物足りなく感じます」
(まさか義妹が社交の席で男たちを従えていたなんて想像もつかない。けれど、あの派手な妹ならやりかねない……)
とにかく普段から粗末な薄い布地のワンピース姿の地味なわたし。今から義妹のように傲慢に振る舞えないし、今の自分ではしっかり準備しないと、できる自信なんてありません。
「ごめんなさい。今日はそんなことをする気分ではなれないのです。バラに囲まれているせいかとても和やかな気持ちでおりますし……」
「なるほど。では先日マリアン嬢はさる侯爵家の嫡男に口づけを与えて、殿方を満足させていらっしゃいました。ならば、求婚者のわたしにも代行のあなたが満足させてくださいませ」
アサルト様は楽しそうに目を細めて顔を寄せてきます。
(まさか、これが色好みのアサルト様の本性……!)
わたしはなんとなく身の危険を感じて、慌ててアサルト様から距離を取りました。
「あの……今日はこれくらいに。し、失礼します」
わたしはとっさにドレスの裾を持ち上げて、薔薇の茂みに分け入り走り出しました。ですが、男性の彼に本気で追いかけられては逃げ切ることは到底できず、ツル薔薇で茂った花棚が置かれたところで、とうとう捕まえられてしまいました。
あっという間に東屋の円柱に背を押し付けられ、顎をきつくつかまれます。
「ふふふ。逃がさないですよ」
彼の吐息が唇にふきかけられます。
「乱暴は、お、おやめくださいませ!」
肉厚な彼の唇で押しつぶされるような気がして、恐怖で顔を逸らしきつく目をつむりました。
しかしそれでも押し付けられた彼の唇は、見た目よりずっと柔らかいものでした。
(抵抗しなければいけないのに!)
でも手足は震えるばかりでうまく力が入りません。何度もなく続けられるうちに1人で立っていることも難しくなってきました。
「だ、だめよっ……あんっ……」
声を漏らすものの、その隙をついた温かい舌をねじ込められてしまいます。自分以外のものを感覚に除外しようと抵抗しても、彼にきつく抱き寄せられました。胸から伝わるぬくもりに頭の芯が熱くなってきます。
「く、息が……息ができない……」
「鼻で息なさい」
彼は唇を重ねたまま囁きました。
「は、はい……」
深呼吸する間もなく再び激しく舌がねじ込まれてきます。熱くぬめる舌はわたしの口内を実在に駆け回り、わたしの身体はむんむんと熱くなって震え始め、気づいたときには彼の肩にしがみついていました。
(ダメ! 抱きつくなんていけないわ! 突き飛ばしてやらないと!)
唇どうしの口づけは特別なもの。こんな風に一方的に奪われていいはずがありません。なのにどうして少しも嫌ではないでしょう。彼の舌先が自身のと絡み合った途端にはねのけなければいけないのに、むしろ交わって!
逃げようとしても、すぐに足首を絡め取られてしまいます。もう何も考えられなくなり、足腰がヘナヘナと砕かれてしまったようになって、思い通りになりません。
そして攻防の末に彼の大きな手のひらが顎から離れて首筋を触ってわたしの胸の膨らみにたどり着いた時、わたしははっとしました。慌てて彼から手を押し返そうとしましたが、力はほとんど入りません。
(助けを求めなければ)
そのまま乳房を指先でやさしく撫でられると、火照ったわたしの体は少しも言うことを聞いてくれません。その場に何度も崩れ落ちそうになって、その度に彼の手にすがってしまいます。そんなわたしをずっと上目遣いで見ていたアサルト様は、あろうことか足元を覆っていたドレスのスカートをめくり上げてしまったのです。
ペチコートを下着として着ていた丈の長いスカートをまとめて持ち上げられたので、絹の靴下に包まれた細い足が陽光にさらされてしまいます。腰回りには靴下を止めるガーターベルトしか付けつけていません。女性として隠すべき秘密の花園はあらわにされてしまいました。
「やめて、お願いします。離してくださいませ……」
恥ずかしさのあまり、必死に裾を下ろそうとしましたが、努力虚しく、アサルト様は股の間を見上げて小さな笑みをこぼしました。
「なるほど。意外にもあなたの割れ目は誰にも手を付けられていないようですね」
「ええっ! 見ないで、いやあっ!」
それでも、わたしの股の間に彼は頭を押し付けて、うずくまりました。
「だめ、触れないで、お願いよ……」
「触れない? こんなにあなたの体は敏感に反応して触れられたがっていますよ、ほらね」
言いながら、指先はゆっくり股の間を円状になぞっていきます。その時、ピシャリという水音が響いたのです。
「これはすごい。口づけだけでこれほど感じている女性は見たことないですね。マリアン嬢の代理、いや、それ以上の素質がおありですよ。とても魅力的でみだらなお嬢さまです。ぼくが磨いて差し上げます」
「やめて、マリアン以上だなんて、まるで違うわ。経験不足だし……」
わたしは泣き出しそうに顔をゆがめました。
「泣かないで、シャーロッテ。やさしく丁寧に美しい庭園を案内してくれたから、今度は経験豊富なわたしがあなたに秘密の森の神秘を教えてあげますね。きっと虜になりますよ」
「いや、そっちのご教授結構です……!」
(まさか義妹が社交の席で男たちを従えていたなんて想像もつかない。けれど、あの派手な妹ならやりかねない……)
とにかく普段から粗末な薄い布地のワンピース姿の地味なわたし。今から義妹のように傲慢に振る舞えないし、今の自分ではしっかり準備しないと、できる自信なんてありません。
「ごめんなさい。今日はそんなことをする気分ではなれないのです。バラに囲まれているせいかとても和やかな気持ちでおりますし……」
「なるほど。では先日マリアン嬢はさる侯爵家の嫡男に口づけを与えて、殿方を満足させていらっしゃいました。ならば、求婚者のわたしにも代行のあなたが満足させてくださいませ」
アサルト様は楽しそうに目を細めて顔を寄せてきます。
(まさか、これが色好みのアサルト様の本性……!)
わたしはなんとなく身の危険を感じて、慌ててアサルト様から距離を取りました。
「あの……今日はこれくらいに。し、失礼します」
わたしはとっさにドレスの裾を持ち上げて、薔薇の茂みに分け入り走り出しました。ですが、男性の彼に本気で追いかけられては逃げ切ることは到底できず、ツル薔薇で茂った花棚が置かれたところで、とうとう捕まえられてしまいました。
あっという間に東屋の円柱に背を押し付けられ、顎をきつくつかまれます。
「ふふふ。逃がさないですよ」
彼の吐息が唇にふきかけられます。
「乱暴は、お、おやめくださいませ!」
肉厚な彼の唇で押しつぶされるような気がして、恐怖で顔を逸らしきつく目をつむりました。
しかしそれでも押し付けられた彼の唇は、見た目よりずっと柔らかいものでした。
(抵抗しなければいけないのに!)
でも手足は震えるばかりでうまく力が入りません。何度もなく続けられるうちに1人で立っていることも難しくなってきました。
「だ、だめよっ……あんっ……」
声を漏らすものの、その隙をついた温かい舌をねじ込められてしまいます。自分以外のものを感覚に除外しようと抵抗しても、彼にきつく抱き寄せられました。胸から伝わるぬくもりに頭の芯が熱くなってきます。
「く、息が……息ができない……」
「鼻で息なさい」
彼は唇を重ねたまま囁きました。
「は、はい……」
深呼吸する間もなく再び激しく舌がねじ込まれてきます。熱くぬめる舌はわたしの口内を実在に駆け回り、わたしの身体はむんむんと熱くなって震え始め、気づいたときには彼の肩にしがみついていました。
(ダメ! 抱きつくなんていけないわ! 突き飛ばしてやらないと!)
唇どうしの口づけは特別なもの。こんな風に一方的に奪われていいはずがありません。なのにどうして少しも嫌ではないでしょう。彼の舌先が自身のと絡み合った途端にはねのけなければいけないのに、むしろ交わって!
逃げようとしても、すぐに足首を絡め取られてしまいます。もう何も考えられなくなり、足腰がヘナヘナと砕かれてしまったようになって、思い通りになりません。
そして攻防の末に彼の大きな手のひらが顎から離れて首筋を触ってわたしの胸の膨らみにたどり着いた時、わたしははっとしました。慌てて彼から手を押し返そうとしましたが、力はほとんど入りません。
(助けを求めなければ)
そのまま乳房を指先でやさしく撫でられると、火照ったわたしの体は少しも言うことを聞いてくれません。その場に何度も崩れ落ちそうになって、その度に彼の手にすがってしまいます。そんなわたしをずっと上目遣いで見ていたアサルト様は、あろうことか足元を覆っていたドレスのスカートをめくり上げてしまったのです。
ペチコートを下着として着ていた丈の長いスカートをまとめて持ち上げられたので、絹の靴下に包まれた細い足が陽光にさらされてしまいます。腰回りには靴下を止めるガーターベルトしか付けつけていません。女性として隠すべき秘密の花園はあらわにされてしまいました。
「やめて、お願いします。離してくださいませ……」
恥ずかしさのあまり、必死に裾を下ろそうとしましたが、努力虚しく、アサルト様は股の間を見上げて小さな笑みをこぼしました。
「なるほど。意外にもあなたの割れ目は誰にも手を付けられていないようですね」
「ええっ! 見ないで、いやあっ!」
それでも、わたしの股の間に彼は頭を押し付けて、うずくまりました。
「だめ、触れないで、お願いよ……」
「触れない? こんなにあなたの体は敏感に反応して触れられたがっていますよ、ほらね」
言いながら、指先はゆっくり股の間を円状になぞっていきます。その時、ピシャリという水音が響いたのです。
「これはすごい。口づけだけでこれほど感じている女性は見たことないですね。マリアン嬢の代理、いや、それ以上の素質がおありですよ。とても魅力的でみだらなお嬢さまです。ぼくが磨いて差し上げます」
「やめて、マリアン以上だなんて、まるで違うわ。経験不足だし……」
わたしは泣き出しそうに顔をゆがめました。
「泣かないで、シャーロッテ。やさしく丁寧に美しい庭園を案内してくれたから、今度は経験豊富なわたしがあなたに秘密の森の神秘を教えてあげますね。きっと虜になりますよ」
「いや、そっちのご教授結構です……!」
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