【完結】それでも猫耳令嬢は生きていく。

(18)

フィーネの手がゆっくりとドアの鍵に伸び、静かに鍵を開けた。

ドアが開き、グスタフの温かな眼差しがフィーネを包み込んだ。

「グスタフさま…私は…」

フィーネの声が震えた。

彼女の目には涙が溢れていた。

「何も言わなくていい」

と、グスタフは言った。

「オリバーをこのままだったら、理性を無くした野獣になって領内の人間を殺戮したはずだ。そんな事態になったら、管理の管理ができていないと、この領地は国王軍に攻められて没収されていた」

「どうせ死ぬのに、私たちは生きている意味はあるの…？」

と、フィーネは言った。

彼女の声には絶望が滲んでいた。

「意味など分からない。少なくとも、オリバーは精一杯、人間として生きた。この土地と仲間を守ったんだ」

フィーネは泣いていた。

「そんな俺だって、そう長くは生きられない。獣になっている」

グスタフは服を脱ぎ捨てた。

彼の背中には、狼の羽毛が生えており、月光に照らされて輝いていた。

「獣になった時は、きみが俺を殺せ」

「殺すって…」

とフィーネは涙ながらに言った。

彼女の心は混乱していた。

「俺はずっと仲間の獣人を殺してきた」

とグスタフは答えた。

彼の声には決意が込められていた。

「だが、もう殺すのはうんざりだ」

「ごめんなさい、グスタフさま」

フィーネは涙を流しながら、グスタフに抱きしめられた。

「フィーネ、ほら、猫がいる」

グスタフが指差したその方向を見ると、そこには一匹の黒猫がいた。

フィーネは猫を見て微笑むと、話しかけた。

すると、茂みの中から猫が現れた。

猫はフィーネに向かって鳴き始めた。

フィーネは猫に近づき、優しく手を差し伸べた。

黒猫はフィーネの手に顔を擦りつけ、甘えるように鳴いた。

その姿に、フィーネは少しだけ心が和らいだ。

「この猫、オリバーが飼っていたミルティだわ」

と、フィーネは微笑んで言った。

「そうだな。ミルティも君を心配しているだろう」

と、グスタフは優しく答えた。

フィーネは黒猫を抱き上げ、その温かさを感じながら、少しずつ心の中の重荷が軽くなっていくのを感じた。

しかし、すぐに異変に気づいた。ミルティは弱々しく、苦しそうな息遣いをしている。

フィーネの心は一瞬で不安に包まれた。

「ミルティ、大丈夫？」

と、フィーネは心配そうに猫に話しかけた。

「急いで獣医のもとへ行こう」

と、彼はフィーネに言った。