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第2章 回収の救世主、あらわる? 

第9話

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「はい。あの、わたし、南北区立小学校の花田キヨミっていいます。あの、ふしぎなカラスさんから掃除してほしいってたのまれて」

「あの、わたし、ヤマイチです。あの、よかったら入って。ちらかってるけど」

 キヨミは入ってすぐに鼻をつまみました。

 ちらかってる、レベルじゃありません。
 すごい臭いにおいがしました。
 スーパーのビニール袋でつまれた袋が山のようにフローリングの床にもられています。

 そのゴミの山の、道なのか通路なのか、まったくわからないところを、ちょこちょことヤマイチさんは歩いていきます。

 ヤマイチさんは、寝ぶくろのはしにあぐらをかくと、
「まあ、どうぞ、すわってください」
と言いました。

 座る場所がないので、キヨミは立ったままでした。

「燃えるゴミ専用袋はどこですか?」

「せんようぶくろ?」

「燃えるゴミは、お金がかかるんですけど」

 ヤマイチさんは、キョロキョロとあたりを手でまさぐりはじめました。

「緑色だったか、黄色だったか、どっちだっけな」

「黄色です。だけど、ちゃんと買ってるんですよね?」

「う、うん。買ってるよ。あっ、あった、あった」

 ヤマイチさんの手には、ロール巻きされたビニール袋がにぎられていました。

「これで、なんとかなるかな」

「うーん。この袋は、小中大のサイズの中の中サイズで、十枚つづりなんですけど……」

 キヨミは、あたりを見わたしました。

「これだけじゃ、ぜんぜん足りないと思います」

「へへへ。だめだったかあ」

 ヤマイチさんは、頭をこりこりかくと、こしをあげました。

「じゃあ、しかたない。やれるところまで、やるとしようか」

 キヨミは、ランドセルから使い捨てのマスクとゴム手袋を2つづつ取り出して、片方をヤマイチさんにわたしました。

「サンキュ。これで手がよごれなくてすむわね」

 手袋をはめがわら、ヤマイチさんがふふふと笑いました。

 キヨミは、十枚つづりのゴミ袋を一枚づつに分けながら、

「分別してないんですよね。燃えるゴミと燃えないゴミを」

「ええ、まあね」

「それじゃ、プラスチックゴミはそのまま、スーパーの袋にいれてまとめておいてください。明日の火曜日が回収日ですから。燃えないゴミは、緑の袋に入れてくださいね」

「………」

 ヤマイチさんは、ゴミ袋をもったまま、じっとキヨミを見ています。

「あの、なんですか?」
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