【完結】聖騎士は、悪と噂される魔術師と敵対しているのに、癒されているのはおかしい。

(8)

　魔獣は容赦なく襲いかかってくる。

　アテナはその攻撃を必死に避けながら、反撃の機会をうかがった。

　だが、魔獣の力は圧倒的だった。

　アテナの剣技も通じず、逆に彼女の方が窮地に追い込まれていった。

（このままではまずいわ……！）

「あぐっ！」

　鋭い魔獣の一角がアテナの肩を貫いた。

　さらには容赦なくアテナを突き飛ばした。

「うぐっ！」

　アテナの腹部に激痛が走った。

　彼女はよろめきながらも剣を構え直したが、もはや戦う力は残っていなかった。

（私はここで死ぬの……？）

　アテナは負けてなるものかと、最後の力を振り絞って、

「うおおおおおおお！」

と雄叫びを上げ、剣を振り下ろした。

　その一撃は魔獣の胴体に命中した。

　しかし、魔獣はまだ倒れない。

　アテナは絶望を感じつつも、再び剣を構えたが遅かった。

　突進した魔獣の角が、今度は彼女の胸に突き刺さったのだ！

「ぐはっ……！」

（もうダメ……）

と彼女は思った瞬間だった。

　差し違えるかたちで、聖剣が魔獣の心臓を貫いていた。
 
「ギャアアア！」

と断末魔の叫びを上げながら倒れた。

　アテナは、魔獣が倒れるのを見届けると、その場に崩れ落ちた。

「やったの……？」

と彼女は呟いた。

（良かった。これで村は守られた……）

　彼女の胸からは血が流れ、その痛みと戦いながら、意識が遠のいていった。

「私はまだ死にたくない……オルティス……」

とアテナは呟くが、その思いも空しく彼女の視界は次第に暗くなっていった。

　ついに、アテナは森の中で倒れた。

　彼女の胸からは血が流れ、その痛みと戦いながら、意識が遠のいていった。

　彼女はオルティスによって押された首筋の刻印に手を伸ばし、弱々しい声で願いを込めた。

「助けて...」

と彼女は囁いた。

　その言葉は風に乗り、森の奥深くへと消えていった。

　刻印は微かに輝きを放ち始め、アテナの願いが届いたかのように、静かな森に変化が訪れた。


　一方、アテナの胸からは血が流れ出ており、生命の火が弱々しく揺らいでいた。