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 翌日、ヴィクトールはいつものように伯爵邸の前で待っていました。彼はエリーナが現れることを期待していました。しかし、時間が経ってもエリーナは姿を見せませんでした。彼は不安になりました。

(どうしたんだろう……彼女は来ないのだろうか……)

 そう思っていると、彼はエリーナの家から出てきたメイドを見つけました。ザネリでした。

「すみません、あなたはエリーナさまのメイドですよね?」

「ええ、そうですが」

「エリーナさまはどこにいらっしゃるんですか?」

「ええと……実は……」

 ザネリは少し困った様子で言いました。

「実はエリーナさまは今日、体調が悪くてお部屋で休んでいます」

「そうですか……」

 ヴィクトールはがっかりしました。彼はメイドにお礼を言って帰ろうとしましたが、その時、メイドが小声で言いました。

「実を言うと……それは嘘です」

「嘘?」

「ええ……実はエリーナさまはお元気です。でも、会うのを拒んでいるのです」

「拒んでいる?なぜだ?」

「それは……エリーナさまはヴィクトール様に恐れを持っているのです。彼女は自分が愛される価値がないと思っているのです」

「そんな……」

 ヴィクトールは驚きました。エリーナに愛されることに恐れを持っているとは思いませんでした。

「ヴィクトール様、どうか諦めないでください。エリーナさまは本当はあなたのことが好きなのです。でも、自分の気持ちに素直になれないのです」

「ありがとう、あなたは優しい人だね。頼みがある。これをわたしてもらえないだろうか」

 ヴィクトールはそう言って、手紙を手渡しました。

『エリーナ…

私はあなたに会いたくてたまりません。美しい瞳に見つめられると、幸せな気持ちになります。優しい声に聞き入ると、私は心が落ち着く。あなたの柔らかい唇に触れると、胸が熱くなる…。

あなたを愛しています。あなたも私を愛してくれると信じています。だから、家の前で待っています。どうか私の願いをきいてください。

あなたを心から愛するヴィクトールより』

 エリーナは手紙を読んで、はげしく動揺しました。
 
 わたしは愛人の子。本当に自分を愛してくれるのかしら? 彼女は自分が幸せになってもいいのだろうかと迷っていたのです。

「ザネリ、ヴィクトール様はまだ、いらっしゃる?」

「あの方はあなたをずっと待っています」

「お通しして、ザネリ」

 エリーナは意を決して、立ち上がりました。
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