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「はー、すっきりした。さあ、ハクちゃんの番」
あたしは肩をすぼめながら、踏み台に立って、「えいっ」と投げた。皿は真っ直ぐ火山に命中した。
「ナイスだねー!」
「お見事っ」
二人は、にこやかに拍手した。だけど、あたしはうつむいたままだった。
「あたし、ぜんぜんダメだよ。気持ちが入らない」
「最初はそんな感じだって」
パロパロちゃんが、あたしの肩にうでをまわした。
「そうだよー。自分を自分でホメてあげなきゃ、苦しいよー」
あたしは、はっと息をのんでグネグネちゃんを見た。
「自分をほめる?」
「そうだよ。他の人がほめてくれるなんて、ほとんどないじゃんかー。でも、ダメでも自分だけは最高だってほめてあげないとさー」
グネグネちゃんは、ヘラヘラしたまゆを、急にキリッとまっすぐに結んだ。それは、さっきまでのグネグネちゃんではなく、まったく違う顔だった。
「うちのかあちゃんはね、気むずかしい人なんだよー。いちいち作法から何から何まで、うちがカンベキじゃないと、気がすまないんだー。お前はダメ、ダメ、ダメ。毎日言われてつらいんだ」
あたしは、だまってうなづいた。
「わかってる。母ちゃんが悪い人じゃないとはね。だけど、あまり自分の理想ばかり押し付けられて、苦しいんだー。だから、うち、ここだけは本当の自分でいられるんだー」
「わたしはさ」
パロパロちゃんは、肩を落としながら、踏み台にすわった。
「前の学校で、一年生の時、すごいいじめにあったんだよ。教科書盗まれたり、体操着にいたずら書きされたり。先生は注意してたけど、裏でしつこくやられてね。いられなくなって、他の学校に転校した。でも、今も学校がこわくてさ。うまく友だちがつくれないんだよ」
パロパロちゃんは、肩を丸めながら目頭をおさえた。
「今でも夢で、あの体操着を思い出すよ。高笑いする、いじめたやつの顔も、グルグル笑って出て来るよ。こわくてつらくて、目が覚めるよ」
「なら、もう一回、なげちゃえよー」
あたしは肩をすぼめながら、踏み台に立って、「えいっ」と投げた。皿は真っ直ぐ火山に命中した。
「ナイスだねー!」
「お見事っ」
二人は、にこやかに拍手した。だけど、あたしはうつむいたままだった。
「あたし、ぜんぜんダメだよ。気持ちが入らない」
「最初はそんな感じだって」
パロパロちゃんが、あたしの肩にうでをまわした。
「そうだよー。自分を自分でホメてあげなきゃ、苦しいよー」
あたしは、はっと息をのんでグネグネちゃんを見た。
「自分をほめる?」
「そうだよ。他の人がほめてくれるなんて、ほとんどないじゃんかー。でも、ダメでも自分だけは最高だってほめてあげないとさー」
グネグネちゃんは、ヘラヘラしたまゆを、急にキリッとまっすぐに結んだ。それは、さっきまでのグネグネちゃんではなく、まったく違う顔だった。
「うちのかあちゃんはね、気むずかしい人なんだよー。いちいち作法から何から何まで、うちがカンベキじゃないと、気がすまないんだー。お前はダメ、ダメ、ダメ。毎日言われてつらいんだ」
あたしは、だまってうなづいた。
「わかってる。母ちゃんが悪い人じゃないとはね。だけど、あまり自分の理想ばかり押し付けられて、苦しいんだー。だから、うち、ここだけは本当の自分でいられるんだー」
「わたしはさ」
パロパロちゃんは、肩を落としながら、踏み台にすわった。
「前の学校で、一年生の時、すごいいじめにあったんだよ。教科書盗まれたり、体操着にいたずら書きされたり。先生は注意してたけど、裏でしつこくやられてね。いられなくなって、他の学校に転校した。でも、今も学校がこわくてさ。うまく友だちがつくれないんだよ」
パロパロちゃんは、肩を丸めながら目頭をおさえた。
「今でも夢で、あの体操着を思い出すよ。高笑いする、いじめたやつの顔も、グルグル笑って出て来るよ。こわくてつらくて、目が覚めるよ」
「なら、もう一回、なげちゃえよー」
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