ブラックホールをふき飛ばせ

9

　それから三ヶ月後、パパは会社の帰りの交差点で、運送会社のトラックにひかれてしまった。

　お葬式では二人でいっぱい泣いたけど、あれからママはあまりパパのことをしゃべらなくなった。あたしもそうだ。話したら、きっとママもあたしもパパの思い出してつらくだろうし。いくら考えたって、何も変えられないんだから。

　そろそろ七時、ママが起きる時間だ。ママは朝があたしよりも弱い。

（あたしが、パパのかわりにしっかりしなきゃいけないんだ）

　あたしはぐっと息を吸いこんで、ふとんからはい出した。カーディガンを羽おって自分の部屋を飛び出すと、ママの部屋の電気をつけた。

「うーん。あと、十分ねかせて」
「だめだよ」

　ママは布団の中で、イモムシみたいに背をむけた。

「じゃあ、五分におまけします」
「ダーメ」

　あたしは、ちぢこまるママのふとんを思い切り引きはがした。そして、ママのセーターと靴下を置いて、洗面所に行った。

（もう、世話がやけるんだから）

　あたしは洗面で顔を洗うと、タオルを押し付けた。