上 下
3 / 25

(3)

しおりを挟む
視線が痛いって思う事自体初めてなんだけど、アル様の視線の先が自分ってだけでなんでこんなにも緊張するのかしら!  と、とにかく何か別の話題をふらない……と。

「あ、あの!アル様!好きな花以外に好きな花はございますか?」

「そうだね。一番は君かな」

(ええええぇぇぇっ!?)

セレスティナは思わず笑顔のアル様を凝視した。

そんなセレスティナに彼は「冗談だよ」と小さく笑う。

(よ、よかった……冗談ね?)

───ビックリしたわ!! 心臓が止まるかと思ったもの!! 変な汗が背中を流れ落ちていく。

そんなセレスティナにアル様はクスリと笑う。

「ごめん、ごめん。セレスティナ嬢は表情がコロコロ変わるから可愛くて」

(……ん?)

今、なんて言われたのかしら? 

セレスティナはキョトンとした顔でアル様を見つめた。

アル様は楽しそうに笑うと優しく言った。

「君って素敵って事だよ」

(はい!?)

セレスティナは頬が熱くなってしまった。お風呂に入ってないのに、のぼせてしまう。

「ほら、顔が真っ赤だよ」

「もう…アル様ったら!」

もうっ! やられっぱなしだわ!! そんな私を見てアル様はクスクスと笑う。

「今日はこれくらいで勘弁してあげるよ。でも、次はちゃんと俺の事もアルで呼んでね? 様なしだよ?」

(……は?)

次!? 次ってどういう意味なの!?

 セレスティナは顔を赤くして「はい」と答えるしか出来なかったのだった。

そんなセレスティナに彼は優しい顔で言ったのだ。

「まだ先は長いんだし、焦らずゆっくり仲良くなっていこうよ」

「……はい」

(わぁぁっ!もう恥ずかしいっ!!)

この日から、セレスティナはアル様の事をアルと呼ぶ事になったのだった。



─────── ─────── そして、あっという間に婚約から1ヶ月が過ぎた。

相変わらずアル様との婚約生活は緊張の連続だが、今日はアル様がセレスティナの家に訪問すると連絡があった。

(まぁ! 大忙しだわ!)

急いで部屋を片付けたセレスティナはメイド達に指示を出すと、来客の準備をした。

「お嬢様。お客様が到着されました」

「ありがとう。応接室にご案内して」

セレスティナの予想通り、アル様は真っ直ぐ応接室にやって来た。

「こんにちは、セレスティナ嬢」

「いらっしゃいませ、アル様、いえ……ア、アル?」

(はうっ! 今日も眩しい笑顔ね!)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない

天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。 だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。

【完結】女神さまの妹に生まれたので、誰にも愛されないと思ったら、ついでに愛してくれる伯爵に溺愛されていて、なんだか複雑です

早稲 アカ
恋愛
子爵令嬢のフェリネットには、美しすぎる姉のアネリスがいた。あまりにも神々しいため、『女神様』と呼ばれてモテモテの姉に、しだいにフェリネットは自信を無くして、姉に対しても嫌悪感を抱いてしまう。そんな時、姉が第二王子に見初められて王家に嫁ぐことになり、さらにフェリネットにも婚約者が現れる。しかし、彼も実は姉を慕っていることが判明して……?

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?

宮永レン
恋愛
 没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。  ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。  仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

処理中です...