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「アナリス、どうしたんだ?」
ラファエルが、アナリスを心配そうにのぞき込んでいる。
「指輪の予知夢です。盗賊一味が、その採掘現場を襲うという予知夢を見たの……宰相のアル様にはお伝えしたのですけど……もっとはっきりと」
ラファエルは、
「アルから報告は聞いている」
と言った。
「ラフィー様、すでにその鉱石は採掘現場から持ち出されています」
「アナリス、それは一体どういうこと?」
ラファエルは尋ねると、アナリスは予知夢を思い出して、言葉を選びながらこたえる。
「……信用できる業者に委託して採掘させて、倉庫に保管させているのです。業者はハント商会よ」
「……ハント商会ですと?」
アロンソは、驚いて顔を上げた。
「ええ」
──そうよ、婚約を破棄したアラン・ベルナール公爵に寄り添って、わたしを蔑むように微笑んでいた、アランの婚約者のソフィア・ハント嬢の会社よ。
ハント家は銀行業で財を成した家門だし、その他の事業にも幅広く手を広げている。
アナリスは考え込んだ。
自分が見た予知夢がまさか、こんな形でつながるなんて。
──なんとかしないと大変なことになるに違いない……。
「その鉱石は、どこに隠されているか、わかるか?」
ラファエルが尋ねると、アナリスははっきりと答えた。
「その鉱石の保管場所は、このアダムス家の城の地下なのです」
アナリスの答えを聞いて、ラファエルはアロンソに向き直った。
「今すぐ地下室に案内しろ」
ラファエルは、険しい表情で命じた。
アロンソは迷ったように俯いていたが、やがて決心したように顔を上げた。
「分かりました……」
彼はそう言うと、従者に保管場所へ案内するよう伝えた。
──アナリスはゴクリと唾を飲むと、従者の後について歩き出す。
☆☆☆
「こちらです……」
従者は、薄暗い地下通路を進んでいく。
アナリスはその後ろを歩きながら、周囲を見回した。
石造りの壁や天井──かなり古い建物なのだろうと思った。
空気もひんやりとしているし、なんだか不気味だ……。
「大丈夫だ、私が付いているから」
隣でラファエルが、安心させるように言った。
「ありがとうございます」
アナリスは小さな声で答えると、彼と一緒に歩いていく。
ラファエルが、アナリスを心配そうにのぞき込んでいる。
「指輪の予知夢です。盗賊一味が、その採掘現場を襲うという予知夢を見たの……宰相のアル様にはお伝えしたのですけど……もっとはっきりと」
ラファエルは、
「アルから報告は聞いている」
と言った。
「ラフィー様、すでにその鉱石は採掘現場から持ち出されています」
「アナリス、それは一体どういうこと?」
ラファエルは尋ねると、アナリスは予知夢を思い出して、言葉を選びながらこたえる。
「……信用できる業者に委託して採掘させて、倉庫に保管させているのです。業者はハント商会よ」
「……ハント商会ですと?」
アロンソは、驚いて顔を上げた。
「ええ」
──そうよ、婚約を破棄したアラン・ベルナール公爵に寄り添って、わたしを蔑むように微笑んでいた、アランの婚約者のソフィア・ハント嬢の会社よ。
ハント家は銀行業で財を成した家門だし、その他の事業にも幅広く手を広げている。
アナリスは考え込んだ。
自分が見た予知夢がまさか、こんな形でつながるなんて。
──なんとかしないと大変なことになるに違いない……。
「その鉱石は、どこに隠されているか、わかるか?」
ラファエルが尋ねると、アナリスははっきりと答えた。
「その鉱石の保管場所は、このアダムス家の城の地下なのです」
アナリスの答えを聞いて、ラファエルはアロンソに向き直った。
「今すぐ地下室に案内しろ」
ラファエルは、険しい表情で命じた。
アロンソは迷ったように俯いていたが、やがて決心したように顔を上げた。
「分かりました……」
彼はそう言うと、従者に保管場所へ案内するよう伝えた。
──アナリスはゴクリと唾を飲むと、従者の後について歩き出す。
☆☆☆
「こちらです……」
従者は、薄暗い地下通路を進んでいく。
アナリスはその後ろを歩きながら、周囲を見回した。
石造りの壁や天井──かなり古い建物なのだろうと思った。
空気もひんやりとしているし、なんだか不気味だ……。
「大丈夫だ、私が付いているから」
隣でラファエルが、安心させるように言った。
「ありがとうございます」
アナリスは小さな声で答えると、彼と一緒に歩いていく。
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