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あの時、確かに父親から、
『娘だけは助けてやってくれ』
という声が聞こえてきたことを思い出したのだ。
「お父様の家系は、代々ドラゴンの雫を守ってきた、由緒ある家柄だったのよ。そして、国境付近の魔法石鉱山を守ってきた。けれど、盗賊一味が権益を奪おうと付け狙うようになって……それで、お父様は命がけで守ろうとなさったの」
べリーチェは、昔を懐かしむように語った。
アナリスは、黙って聞いている。
「そして、事件が起きた……。盗賊一味の仕業だったわ。彼らは私たちを崖から突き落として殺してしまった……でも、お父様は娘だけは助けたいと必死で願っていたわ。それが届いたのか、あなたは助かったの。そこでわたしは修道院に行き、あなたは……メイリーンという名前をアナリスに変えたのよ」
べリーチェは、そう言って話を締めくくった。
アナリスは静かに頷く。
──自分は助かったものの、両親は命を落としてしまった。
その事実を受け入れるまで、かなりの時間を要したことを思い出す。
それから、母方の祖父母のキャンベル家を頼って、隣国のエスカルゴ王国へ渡ったことも。
でも、そんな経緯も、自分がメイリーンという名前だったことは初耳だった。
だが、意識せずに小説の中でヒロインの名前に、自分の本名に重ねていたのだ。
「でも、それならどうして今まで黙っていたんですか? わたしの本当の名前がメイリーン・アダムスだっていうこと……」
アナリスは、素朴な疑問を口にした。
すると、べリーチェは困ったような表情を浮かべる。
「それはね……盗賊の一味にあなたが狙われるのを防ぐためよ。それに辛い思いをさせたくなかったからなのよ」
べリーチェは悲しげに首を振ると、静かに語り始める。
「あなたは、アダムス公爵家の当主として、『ドラゴンの雫』の守護としての役割を負っているのよ」
べリーチェの言葉に、アナリスはハッとした表情を浮かべた。
確かに、指輪がアナリスを選んだ理由も、予知夢を見ることも納得がいく。
『娘だけは助けてやってくれ』
という声が聞こえてきたことを思い出したのだ。
「お父様の家系は、代々ドラゴンの雫を守ってきた、由緒ある家柄だったのよ。そして、国境付近の魔法石鉱山を守ってきた。けれど、盗賊一味が権益を奪おうと付け狙うようになって……それで、お父様は命がけで守ろうとなさったの」
べリーチェは、昔を懐かしむように語った。
アナリスは、黙って聞いている。
「そして、事件が起きた……。盗賊一味の仕業だったわ。彼らは私たちを崖から突き落として殺してしまった……でも、お父様は娘だけは助けたいと必死で願っていたわ。それが届いたのか、あなたは助かったの。そこでわたしは修道院に行き、あなたは……メイリーンという名前をアナリスに変えたのよ」
べリーチェは、そう言って話を締めくくった。
アナリスは静かに頷く。
──自分は助かったものの、両親は命を落としてしまった。
その事実を受け入れるまで、かなりの時間を要したことを思い出す。
それから、母方の祖父母のキャンベル家を頼って、隣国のエスカルゴ王国へ渡ったことも。
でも、そんな経緯も、自分がメイリーンという名前だったことは初耳だった。
だが、意識せずに小説の中でヒロインの名前に、自分の本名に重ねていたのだ。
「でも、それならどうして今まで黙っていたんですか? わたしの本当の名前がメイリーン・アダムスだっていうこと……」
アナリスは、素朴な疑問を口にした。
すると、べリーチェは困ったような表情を浮かべる。
「それはね……盗賊の一味にあなたが狙われるのを防ぐためよ。それに辛い思いをさせたくなかったからなのよ」
べリーチェは悲しげに首を振ると、静かに語り始める。
「あなたは、アダムス公爵家の当主として、『ドラゴンの雫』の守護としての役割を負っているのよ」
べリーチェの言葉に、アナリスはハッとした表情を浮かべた。
確かに、指輪がアナリスを選んだ理由も、予知夢を見ることも納得がいく。
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