上 下
47 / 66

(47)

しおりを挟む
 すると、ラファエルがくすくすと笑う。

「僕のダンスのどこが気に入ったのかな?」

「えっ……?  どこって、その……」

 アナリスは、口籠もってしまう。

 正直に告白するなんてできないと思ったからだ。

「僕が魅力的に見えて、仕方がないとか?」

 ラファエルは、冗談めかした口調で言う。

(ええ……そうなんです)

 アナリスは心の中で答えたが、口には出せずに、目を反らした。

「ふふ……正直だね」

 ラファエルはそう言って微笑んだ。

「あ、あのっ……ラフィー様。実はお願いがあるんです」

 アナリスは、思いきって切り出した。

「何かな?」

 ラファエルは首を傾げた。

 アナリスの心臓が、どきどきと音を立てる。

──だが、勇気を出して言葉を絞り出す。

「いっしょにドレスを選んでいただけませんか?」

「もちろんだ」

 ラファエルはアナリスの手を取ると、女官長を呼び、衣裳部屋に案内させる。

 その部屋には色とりどりのパーティドレスが飾られていた。

「これはどうでしょう?」

 女官長はゆっくりとアナリスに近づくと、深い青を基調としたドレスを勧めた。

 アナリスは試着してみると、鏡に映った自分の姿に驚いた。

──それはまるで夜空に浮かぶ月のような美しさだった。

「とてもお綺麗です……」

 女官長は感嘆した様子で言った。

「素敵だね」

 ラファエルも満足げに頷いた。

「ええ……わたしもそう思います」

 アナリスは恥ずかしくなって俯いた。

「メイリーン嬢、髪に飾るリボンの色はどうする?」

 ラファエルがアナリスの顔を覗き込みながら尋ねる。

「わたしは……ラフィー様に選んでいただきたいです」

 アナリスは思い切って言った。

「わかった」

 ラファエルは頷くと、青を基調としたドレスに純白のリボンを選んでくれる。  

──そのドレスを着てみると、まるで自分がお姫様になったような気がした。

「メイリーン嬢、あらためて僕と踊っていただけませんか?」

 ラファエルは、手を差し出してきた。

 アナリスは胸が高鳴るのを感じながら、そっとその手を取る。

「喜んで……」

 アナリスは、顔を赤らめながら答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

第一夫人が何もしないので、第二夫人候補の私は逃げ出したい

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のリドリー・アップルは、ソドム・ゴーリキー公爵と婚約することになった。彼との結婚が成立すれば、第二夫人という立場になる。 しかし、第一夫人であるミリアーヌは子作りもしなければ、夫人としての仕事はメイド達に押し付けていた。あまりにも何もせず、我が儘だけは通し、リドリーにも被害が及んでしまう。 ソドムもミリアーヌを叱責することはしなかった為に、リドリーは婚約破棄をしてほしいと申し出る。だが、そんなことは許されるはずもなく……リドリーの婚約破棄に向けた活動は続いていく。 そんな時、リドリーの前には救世主とも呼べる相手が現れることになり……。

裏ありイケメン侯爵様と私(曰く付き伯爵令嬢)がお飾り結婚しました!

麻竹
恋愛
伯爵令嬢のカレンの元に、ある日侯爵から縁談が持ち掛けられた。 今回もすぐに破談になると思っていたカレンだったが、しかし侯爵から思わぬ提案をされて驚くことに。 「単刀直入に言います、私のお飾りの妻になって頂けないでしょうか?」 これは、曰く付きで行き遅れの伯爵令嬢と何やら裏がアリそうな侯爵との、ちょっと変わった結婚バナシです。 ※不定期更新、のんびり投稿になります。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

雇われ寵姫は仮初め夫の一途な愛に気がつかない

新高
恋愛
リサは3カ国語を操り、罵詈雑言ならば7カ国語は話すことができる才女として有名な伯爵令嬢だ。そして、元は捨て子であることから「雑草令嬢」としても名を知られている。 そんな知性と雑草魂をかわれ、まさかの国王の寵姫として召し上げられた。 隣国から嫁いでくる、わずか十一歳の王女を精神面で支える為の存在として。さらには、王妃となる彼女の存在を脅かすものではないと知らしめるために、偽装結婚までするハメに!相手は国王の護衛の青年騎士。美貌を持ちながらも常に眉間に皺のある顰めっ面に、リサは彼がこの結婚が不本意なのだと知る。 「私は決して、絶対、まかり間違っても貴方を愛することはありませんから! ご安心ください!!」 余計に凍り付いた夫の顔におののきつつ、でもこの関係は五年の契約。ならばそれまでの我慢と思っていたが、まさかの契約不履行。夫は離婚に応じないと言い出した。 国王夫婦を支えつつ、自分たちは思春期全開な仮初め夫婦のラブコメです。 ※他サイト様でも投稿しています

処理中です...