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 ラファエルに触れられていると、自然と安心してくるのは何故だろう? 

 アナリスは思わず彼に寄りかかりたくなった。

「さあ、行こうか」

 ラファエルはそう言うと、アナリスの手を引いて歩き始めた。

(ああ……)

 アナリスは、ぼんやりとした頭で思った。

 彼は、ここまで優しくしてくれる。なら、わたしは彼に何をしてあげられるんだろう……。


☆☆☆


 ラファエルはアナリスを気遣いながら、広間に通した。

 その玉座に座っているのは、父君である国王陛下と王妃殿下だ。

「おお、よく来たな」

 国王陛下は立ち上がって、出迎えてくれた。

 彼は優しい眼差しを、アナリスに向けている。

(うっ……)

 アナリスは、思わず緊張してしまった。

 相手は、王国の最高権力者である。

「メイリーン・アダムス公爵令嬢。宰相のアル・デイラーン公爵から話は聞いている。ご両親がなくなり、修道院で暮らしておられたそうだな」

「はい……」

 アナリスはなんとか返事をした。

 緊張で喉がカラカラになってしまったようだ。声がうまく出ない。

 だが、国王陛下は優しく微笑んでくれた。

「そう、かしこまることはない」

 彼はそう言うと、自分のすぐ隣にある席を勧めてくれた。

 アナリスがおそるおそる腰を下ろすと、王妃殿下も微笑んでいることに気づいた。

「あなたがメイリーン嬢?  ラファエルからの手紙によくあなたのことばかり書かれていましたよ。あなたは読書が大好きで、文章もお書きになられるとか? 私も物語を読むのが好きで、特に恋愛小説には目がないのですよ」

「は……はい……」

(ええぇぇ?!)

 アナリスはびっくりしてしまった。

 まさか王妃殿下にそんなことを言われるとは、思っていなかったからだ。

 ラファエルだけでなく、王妃殿下も恋愛小説をお好きなの!? 

 王妃様はそのことについて、熱っぽく語り続けている。

 その様子を見ると、どうやら本気でお好きなようだ。

「でも、不思議ですね。『メイリーン嬢の花咲く夕べ』のヒロイン、アイリーンと同姓同名だなんて、なんていう偶然なんでしょう!」

(うっ……)

 アナリスは、思わずのけぞりそうになった。
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