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 アナリスは納得した。

 確かに、これほどまでの力があるならば、王家に相応しい人物かどうかくらいわかるだろう。

 むしろ、これくらいでなければ、王族に嫁ぐには相応しくないのかもしれない。

(でも……わたしはなぜ選ばれたんだろう?)

「お気に召さなかったかな?」

 ラファエルが、心配そうに尋ねてきた。

「いえ……」

 アナリスは、慌てて首を振った。

(とんでもない!)

 むしろその逆だ。

 この指輪を見た瞬間に、不思議なことが起こったのだから。

 まるで自分の体の中に、別の何者かが入り込んできたかのようで……。

「いいえ……とても光栄と思います……」

 アナリスは、辛うじて返事をした。

 だが、頭の中では別のことを考えていた。

(これはとんでもない指輪よ……)

 さすがは、王家の宝玉だと感心してしまう。

 だが、それと同時に、この指輪の真の恐ろしさも感じた。

 この指輪を身につけている限り、選ばれた自分はラファエル王太子殿下の婚約者として振る舞わなければならないのだ──と。



✴✴✴



(ああ、もう!)

 アナリスは、思わず心の中で叫んだ。

(一体どうすればいいのよ?)

 アナリスは、頭を抱えていた。

 結局、指輪を受け取ってしまったからだ。

 だが、よくよく考えてみると、それほど難しいことはないのかもしれない。

 ようするに、アルの言うとおり、今まで通りでいいのだ。

 自分はメイリーン・アダムス公爵令嬢として振る舞いつつ、ドラゴンの指輪の力を使ってラファエル王太子殿下と結ばれハッピーエンド……偽装結婚なのだから、失敗してもかまうもんか。そんな吹っ切れたシナリオが頭に浮かんでしまった。

「さあ、両親の国王陛下と王妃殿下にも挨拶に会いに行こう。平気かい?」

 不意に声をかけられて、アナリスは顔を上げた。

 いつの間にか、ラファエルが側に来ていた。

「何でもありません…」

 アナリスは、慌てて首を振った。

 ドラゴンの魔力が宿った指輪を、授かったなんて!

 彼はじっとこちらを心配そうに見つめてくるので、少し居心地が悪い。

 そっと、ラファエルがアナリスの肩を優しく抱いてきた。

「心配はいらないよ。ぼくがそばにいるからね」

 彼は耳元で囁く。

(殿下、たまらないっ……!)
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