【完結】女神さまの妹に生まれたので、誰にも愛されないと思ったら、ついでに愛してくれる伯爵に溺愛されていて、なんだか複雑です

朝日みらい

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「ええ……でも、お姉さまと一緒に参加したかったわ」

「ごめんなさいね。来賓のお客様の接待で忙しかったのよ」

アネリスは苦笑した後、真剣な表情になった。

「今日のあなたはとても素敵よ!」

「ありがとう……でも、それはマルクルのエスコートのおかげよ」

 フェリネットが正直に答えると、アネリスは笑みを浮かべて言った。

「うふふ……そうね。あなたがしあわせそうでうれしいわ。あなたが幸せにならないと、私は幸せになれないの。殿下と結婚なんてできないし。明日、また会いたいわ」

 そうして、彼女は去って行ったのだった。

 その姿を見送ると、マルクルはフェリネットの手を握り締めてきた。

 そして耳元で囁いたのだ。

「今夜も君を抱かせてもらうよ」

(まぁ……マルクル様ったら)

 フェリネットは顔を真っ赤にしながら頷いたのだった。


 その夜、ふたりは再び寝室で抱き合っていた。

 マルクルは今夜も優しく丁寧に扱ってくれた。

 その優しさに、フェリネットは心が温かくなっていくのを感じた。

(ああ……この人と結婚できて本当によかった……)

 そんなことを考えていると、自然と涙が流れてきた。

 そんなフェリネットを見てマルクルは驚いた様子だったが、すぐにハンカチを取り出して涙を拭いてくれた。

「どうしたの?どこか痛む?」

 心配そうに見つめてくる彼にフェリネットは首を横に振って答えた。

「違うの……ただ、幸せだなぁって思っただけなの……」

 それを聞いたマルクルは安心したような表情を見せた後、そっと口づけをしてきた。

 そして二人はそのまま眠りについたのだった。


 次の日、目を覚ますと目の前にはマルクルの寝顔があった。

 フェリネットはしばらく見惚れていたが、やがて起き上がると着替えを始めた。

 するとマルクルも目を覚まし起き上がったので、朝食を食べに食堂へ下りていった。

「おはよう、フェリネット! マルクル様!」

 そこにはアネリスの姿があった。

「アネリスお姉さま?」

 不思議に思ったフェリネットが声をかけると、彼女は笑顔になった。

「あなたとマルクル様が幸せそうだったから、押しかけてきてしまったの。ごめんなさい」

すでにマルクルは緊張して、体をこわばらせて言った。

「も、もちろんです! 朝食をご一緒させてください!」

(まったく、マルクルったら……)

 フェリネットは内心呆れていたが、体裁を整えてすましていた。

 そして朝食を食べ終わると、アネリスはこう言った。

「ねぇ、今日は私とお出かけしない? もちろんマルクル様もご一緒で構いませんわ」

 その言葉にマルクルは嬉しそうな表情を浮かべたが、フェリネットは少し不安になった。

(やっぱり、マルクルはわたしのことなんて……)
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