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(ああ……わたしったらなんてはしたないのかしら?)と思いつつも彼に身を委ねてしまうフェリネットであった……。
翌朝、フェリネットは目を覚ました。
隣にはマルクルが眠っている。彼の寝顔を見つめているうちに昨夜の出来事を思い出してしまった。
(わたしったらあんな大胆なことを……)
恥ずかしくて顔から火が出そうだったが、同時に嬉しさもあった。
「ありがとう、わたしの天使」とマルクルは言ってくれたが、本当に天使なのは姉のアネリスだとフェリネットは思ってしまう。
フェリネットはそっとベッドから出ると身支度を整え始めた。
そして、部屋を出ていこうとした時、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにはマルクルの姿があった。
「マルクル……」
「おはよう。身体の具合は?」
「もう大丈夫よ」
「今日、どこか遊びに行こう」
(嬉しいけど……)
複雑な気持ちになりながらもフェリネットは彼に微笑みかける。
「……いいけど」
「よかった。なら、高原にピクニックにでも行こう」
「うん、わかったわ」
(ピクニックかぁ。いいわね)
そんなことを思っていると、突然マルクルはフェリネットを抱きしめてきたのである。
そして耳元で囁いたのだ。
「今夜、また君をこの腕に抱くよ」
その言葉にフェリネットの顔は真っ赤になった。
マルクルはさっそく使用人に指示してバスケットにサンドイッチや焼き菓子を詰めると、フェリネットと共に屋敷の外へ出た。
「ああ、風が気持ちいいわね」
「うん。気持ちいいね」
そんな会話をしながら歩いていると大きな川が見えてくる。
二人は川辺に着くと土手に敷物を敷きその上に腰を下ろした。
「フェリネット、はい、これ」
マルクルは飲み物の入ったカップを手渡してくれた。
お礼を言って受け取ると一口飲む。ハーブティーのようだが少し変わった味がすると思った。
マルクルは悪戯っぽい笑みを浮かべると言った。
「そのハーブティーにはね、リラックス効果があるんだよ」
「そうなの?確かに気持ちが落ち着くかも……」
「うん。だから、今だけは何も考えずに楽にしていてほしいな」
(それってどういう意味なのかしら?)とフェリネットは思ったが特に深く追求することはしなかった。
それよりも今は彼と一緒にいる時間を大切にしたかった。
翌朝、フェリネットは目を覚ました。
隣にはマルクルが眠っている。彼の寝顔を見つめているうちに昨夜の出来事を思い出してしまった。
(わたしったらあんな大胆なことを……)
恥ずかしくて顔から火が出そうだったが、同時に嬉しさもあった。
「ありがとう、わたしの天使」とマルクルは言ってくれたが、本当に天使なのは姉のアネリスだとフェリネットは思ってしまう。
フェリネットはそっとベッドから出ると身支度を整え始めた。
そして、部屋を出ていこうとした時、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにはマルクルの姿があった。
「マルクル……」
「おはよう。身体の具合は?」
「もう大丈夫よ」
「今日、どこか遊びに行こう」
(嬉しいけど……)
複雑な気持ちになりながらもフェリネットは彼に微笑みかける。
「……いいけど」
「よかった。なら、高原にピクニックにでも行こう」
「うん、わかったわ」
(ピクニックかぁ。いいわね)
そんなことを思っていると、突然マルクルはフェリネットを抱きしめてきたのである。
そして耳元で囁いたのだ。
「今夜、また君をこの腕に抱くよ」
その言葉にフェリネットの顔は真っ赤になった。
マルクルはさっそく使用人に指示してバスケットにサンドイッチや焼き菓子を詰めると、フェリネットと共に屋敷の外へ出た。
「ああ、風が気持ちいいわね」
「うん。気持ちいいね」
そんな会話をしながら歩いていると大きな川が見えてくる。
二人は川辺に着くと土手に敷物を敷きその上に腰を下ろした。
「フェリネット、はい、これ」
マルクルは飲み物の入ったカップを手渡してくれた。
お礼を言って受け取ると一口飲む。ハーブティーのようだが少し変わった味がすると思った。
マルクルは悪戯っぽい笑みを浮かべると言った。
「そのハーブティーにはね、リラックス効果があるんだよ」
「そうなの?確かに気持ちが落ち着くかも……」
「うん。だから、今だけは何も考えずに楽にしていてほしいな」
(それってどういう意味なのかしら?)とフェリネットは思ったが特に深く追求することはしなかった。
それよりも今は彼と一緒にいる時間を大切にしたかった。
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