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「はぁ……」

 憂鬱な気持ちで窓の外を見つめる。

「でも、いいじゃない。お姉さまにはどうせ勝てないんだから」

そう思った矢先、ドアがノックされた。

「だれなの……」と呟くと同時に扉が開き、彼が入ってきた。

「やっぱりだめだ。一人にしておけない」

「え?あ、大丈夫よ」

「だめだよ……。確かにアネリス様には会いたい。けれど、一番大切なのは君なんだ」

そう言うとマルクルはベッドの端に腰掛けた。

 そしてそっと手を伸ばしてくる。

 フェリネットはそれを振り払うことも出来ずされるがままになっていた。

 彼は優しく頬に触れるとじっとこちらを見つめてくるのだ。

(だめ……わたし、こんな目で見られたら……)

 そんなことを考えていると彼はさらに距離を詰めてきた。

 フェリネットは、目を伏せた。

「いけないわ。今回の夜会を逃したら、次の夜会はきっとずいぶん後になるかもしれない……」

「それはそうだけど、君を放っておくわけにはいかないよ」

「私のことなら心配しないで。ちょっと疲れただけだもの」

 フェリネットはそう言いながらも不安げな表情を浮かべた。

(疲れたというのは嘘だわ……ただ、マルクルに抱かれて戸惑っているだけ……)

 自分でもどうしていいのか分からなかった。

 そんな彼の気持ちを察してかマルクルはフェリネットを抱きしめてきた。

 そしてそのまま唇を重ねてくる。最初は軽く触れるだけのものだったが、次第に深いものになっていった。

「んっ……」

 舌を絡め取られ吸われてしまうと力が抜けてしまいそうになる。

 そのままベッドに押し倒されてしまった。

(どうしよう……)

 フェリネットが戸惑っているとマルクルはもう一度唇を重ねてきたのだ。

 そして首筋に舌を這わせてくる。

 その感覚にビクッと身体を震わせると、今度は耳を甘噛みしてきた。

「ひゃうっ!?」

 突然の刺激に悲鳴を上げるとマルクルは嬉しそうに笑った。

 そして再びフェリネットの身体に触れ始めたのである。

 その手つきはとても優しかったが同時に情熱的でもあった。

「もうっ……だめだったら……」

 フェリネットは身を捩りながらもなんとか逃れようとするが、マルクルは逃してくれない。

 それどころかさらに強く抱きしめてきたのだ。

「お願いだよ。このまま一緒に寝てくれないか?」

 その言葉を聞いた瞬間、フェリネットの抵抗が弱まった。

 それを見たマルクルは笑みを浮かべ何度も口づけをしてくるのだった。
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