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「あ、あの……」

「だからこそ君は女神様に愛されているんだよ!女神さまに愛されている平凡な君を大切にしたいんだ!」

「え……っと」

(どう反応すればいいの!?というか、女神様に愛された平凡なわたしって何なの……)

頭が混乱してしまい上手く言葉が出てこない。その間にもマルクルはどんどんと話を進めていく。

「君のような素晴らしい女性と結婚できるなんて本当に嬉しいよ!! 君のためにぼくは色々と尽くしてきたんだ! お金だって沢山使ったし、君に相応しい男になるために勉強もした!全ては君が女神様に愛されているからだし!」

「あ……はい」

(もう意味分かんない)

マルクルは嬉しそうにニコニコと笑うが、フェリネットは何も言えずに呆然と立ち尽くした。

でも、誤解はあるにしても、マルクルは悪人でもないし、自分のことを大切にしようという熱意は感じられる。

それに、貴族で容姿だって財産だって申し分ない。それほど条件は悪くはないので、そこまで嫌悪感を抱くこともないはずなんだけれど。

(仕方ない……結婚はしないと困るし、まだ15歳だから、彼が子供を作ろうと迫る気もないはずよね)

「フェリネット、愛してるよ!」

マルクルはそう言うとギュッと抱きしめてきた。

フェリネットは抵抗せずに黙って抱きしめられていたが、内心では(気持ち悪い)と思っていた。


それからというもの、マルクルは毎日のようにフェリネットの元を訪れては愛の言葉を囁いていた。

だが、それでもまだ心のどこかでマルクルに対して嫌悪感を抱いている自分がいる事に気が付いたのだ。

(うう……なんでこんな男に悩んだりして、心を動かされないといけないの……!)

「はぁ……」

ため息を吐きながら今日もまたマルクルはフェリネットの部屋を訪れた。

「どうしたんだい?ため息なんてついて」

「いいえ、なんでもありませんわ」

(混乱させるあなたのせいだよ!)と叫びたくなる。

「今日は二人で出かけよう。近々、王様主催の夜会があるし、君だって親戚だから招待されるだそうしさ。正式にぼくの婚約者として紹介したいし」

「はぁ……」

またもため息をつくとマルクルは不思議そうな顔をする。

「どうしたんだい?何かあったのかい?」

「いいえ、何もありません!」

(あなたの複雑な恋愛観で憂鬱なんです! とは言えない……)
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